【第65話】メイド喫茶
「メイド喫茶行きたい」
・・・遥さん急にどうした?
「漫画のネタの為にメイド喫茶行きたい」
そういえば、見せてもらったコンテだとメイド喫茶でアルバイトしてたな。
今回の新刊用のストーリは、メイド喫茶でアルバイトする茶髪ウィッグの女装ヒロインと客としてくる男装主人公のラブストーリーだ。
メイド喫茶と学校を舞台として進む物語でサンプルを何枚か書いて投稿サイトにあげたら結構反響があった作品だ。
店にやってくる主人公が女装ヒロインを何度も指名して仲良くなったところで、主人公がヒロインがメイド喫茶に入るところを見て、メイド喫茶に行くがヒロインはいない。なぜいないのかを考えている間に既に言わなくても指名となっている女装ヒロインが案内してくれる。オーダーを取ったところでウィッグの下から黒髪が見えているのに気が付いて・・・といった感じだ。
「どっちでいく?」
「知り合いと会った時面倒くさいからあっちで」
「了解」
大体イベントにアニメ映画、ライブにというのは、リンと遥斗という組み合わせだからメイド喫茶もそうなるのは考えなくてもそうか。
*
一度家に帰ってリンに着替えてから再集合して、メイド喫茶へ向かう。
遥さんから服なら全然貸すよ?とか言われたけどウィッグがないから一度は自宅に帰る必要があった。
とあるビルの二階に入っているメイド喫茶の前まで来ると、メイド喫茶の中からいい匂いが漂ってきた。パンケーキかな?この匂い。
ここに入っているメイド喫茶は所謂萌え系のメイド喫茶。正統派もまた別にあるけど、今回は漫画のロケハンだからこっち。
「おかえりなさいませ。ご主人様。お嬢様」
意外と落ち着いた雰囲気で来店の挨拶をされた。メイド喫茶はこれよりももっとテンション高いイメージがあるのはメディアがハイテンションのメイド喫茶ばかり取り上げるからだと思う。ただ萌え系ということもあってメイド服は可愛らしいフリフリとしたものだ。
あと本来の給仕という意味でのメイドがいる喫茶店もあることを伝えておきたい。今度ラジオに呼ばれた時に話すネタとして温めておこう。
「こちらへどうぞ」
空席へ案内してくれる。休日ということもあってか結構客入りはいいみたいだ。
案内してくれたメイドさんは裏にはけていった。
えーと、メニューはこれかな。
「何頼む?」
「んー鉄板のオムライスで」
「じゃ、わたしはハニートーストとラテ」
二人でメニューを見て決めていると、机に水の入ったコップが置かれた。
「お決まりになりましたでしょうか?」
そして持ってきたメイドさんが声をかけてきた。わたし達の会話が聞こえていたんだろうか。
「えーと、じゃぁ、オムライスとハニートーストとラテを・・・をぉぉぉ!?」
ん?遥斗どうかした?
わたしも顔をあげてメイドさんを見る。
んー・・・あれ?アカネちゃんなんでここにいるんですか。
「ども」
相変わらず仲が良いですね二人共。と言われた。
「なぜ、ここに?」
別にわたし達はやましい気持ちでメイド喫茶に来ているわけではないですからね。
「ここの経営者が元々うちの事務所の関係者でたまに手伝ってるんです」
バイト代も結構いいですよ。とアカネちゃん。
「では、オーダーを伝えてきますので少々お待ち下さい」
「はーい」「ん」
アカネちゃんはオーダーを裏の厨房だろうかに持っていく。
「ステージとはまた違った可愛さがあるな」
「近くで見られるのと遠くで見られるのとでメイクを変えてる」
わたしはほぼ今のメイクでどこにでも行くけど、アカネちゃんは色々メイクを使い分けているんだろう。
「あれ?二人共私を見てどうしました?」
「可愛いなーと思って」
「あはは。ありがとうございます」
可愛いって言われることに慣れたね。
*
――カランカラン
「あ、すみません。案内してきます」
他のメイドさんはオーダーをとったりチェキを撮ったりしていて手が離せないのをみたアカネちゃんが入り口の方へ向かっていく。
光の加減で入ってきた客の顔は見えない。
「ぐっ・・・申し訳ありません。現在満席となっておりまして」
「そっかーじゃぁ出直すわ」
早乙女さんの声だ・・・なんでこんなに知り合いの遭遇率が高いんですかね。
アカネちゃんがクラスメイトの早乙女さんだと気が付いて一瞬固まって、直ぐに戻ってきた。流石にここ一年ほど女装しているからから演技力は流石なものだ。
できれば一瞬も固まらないのがベストだけど。
「あれ?すずっちにはるさん?」
あっ、見つかった。おいでおいでと手を振っておく。
四人のテーブル席を二人で使ってるからね。一人増えても大丈夫。
「相席でも?」
「あ、はい。大丈夫です」
アカネちゃんが早乙女さんは二人のこと知ってるのとばりにこっちをチラチラと見てくるから頷いておく。
早乙女さん鋭いんで普通に知ってますよ。
早乙女さんをアカネちゃんが連れてきて、早乙女さんがスパゲッティをオーダーする。
「あれ岡崎?」
厨房に消えていったアカネちゃんを見ながら早乙女さんはわたし達に小声で聞いてきた。
早乙女さんなら気が付きますよねぇ・・・
「そだねー」




