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アナタの本当の姿は?  作者: kame
高校二年生
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【第61話】2年目の文化祭3

「鈴木君。このプロジェクターは・・・」


 俺が学園祭前日に持ち込んだプロジェクターを見て華岡先生が顔をひきつらせていた。まぁ完全業務用のプロジェクターだからな。


「使ってないらしいんで知り合いから借りてきました」


 事務所の社長からな。うちの会社でも流行りに乗ろうと言うことで、プロジェクションマッピングをしている部署がある。

 このプロジェクターは買い換えて倉庫の肥やしとなっていたのを貸してもらった。なんか屋外でするにはこれだとルーメンが足りないとかなんとか・・・屋内だったら十分だと思うよと、ポンと貸してくれた。


「なんてとこから!?」


 プロジェクターに付いていた事務所のラベルを見て先生が言ってくる。


「両親がそこに勤めてるんで伝手があるんです」

「まじで!?」


 先生が話す言葉じゃない。まぁ俺は散々イベント会場でそんな先生の姿は見てるし慣れてるけど。

 せめて学校にいる間くらい擬態してくだい。



 *



 リハーサルで俺達のプロジェクションマッピングの出来にクラスメイトが感嘆の声をあげているのを尻目に想定とずれていた場所を修正する。学校の備品で調整していたときとは違う修正点が見つかってこっちは忙しい。色々事務所の人にも教えてもらって準備はしていたもののやはり始めてだから粗が・・・


 大道具が作った素材に対して投影することで色々使い回しがきくように今回はプロジェクションマッピングを選択したけど大変だ・・・


「アリサ、私の名前はアリサ!!」


 俺が仕込んだ声で片山君が台詞の確認をしている。

 仕込む声は一種類だからまだ色々変えることの出来る声よりは仕込む時間は短い。途中からは近藤も混じって教えてけどな。俺は俺で背景を描く時間を取る必要があって忙しいかったからな。守山さんにも声は仕込んである。こっちは柊さんが担当していた。


「早乙女さん。ここの演出なんだけど」

「んーそうだなーここで少し照明を落として・・・」


 準備も大詰め、俺達の担当分は仕上げてしまおう。




 *



「うわっ、満席だ・・・」


 片山君がステージの端から観客席を覗いて顔を青くして戻ってきた。

 もう既に服装は入れ替わりの最初のシーンである薄ピンクのパジャマ姿だ。本当はベビードールなんだけど流石にステージ上で見せるものではないからパジャマに変更している。所々演技として不味いものは省いたり演劇部の守山さん監修の元、改変してある。


 さぁ開場だ。声優の仕事としてステージをする時とはまた違う緊張を感じる。


『あの日・・・』


 俺も俺で合わせて投影する内容を変えていかないとな。



 *



 ――ブッ


 丁度劇が山に差し掛かった時、体育館のすべての電源が落ちた。

 薄暗くした照明と、登場人物を照らすサーチライト、マイク、スピーカーの電源が落ちている。俺のノートパソコンはバッテリーだし、持ち込んだプロジェクターもバッテリー付きのモノだ。一応は光ったままだが、音を拾うためのマイク・スピーカーが死んでいる。


「は?停電!?」「かも、誰かブレーカー見てきて!!」「どこにある!?」「あっちの部屋!!」


 裏の灯りも消え、ほぼ見えない状態でも皆が携帯のライトでどうにか視界を確保する。

 なんで停電だ?昨日のリハで通してやったけど問題なかっただろ!?

 観客も一気に落ちた照明と音源に困惑している。慌てている俺達の動揺が伝わったのか、演出じゃないことも伝わっているようだ。


 どうする・・・マイクが無いと片山君と守山さんの声を拾えない!!体育館に響くような大声の女声と男声は二人には出せない。

 ステージ上の二人もどうすればいいのか分からず、ステージ裏を見ている。ここはプロジェクターも切るべきか・・・


「あーあーあー・・・」


 遥さんが俺の隣で声を調整している。なんで男声の調整しているのかわからないけど、段々と守山さんが使っている男声に近づく。女子同士だから意外と近付けやすかったんじゃないだろうか。

 そしてにっと笑うと、


「どうせなら成功させたいじゃん?」


 そうだな。

 俺もこほんと咳払いして声を整えた。



 *



「「二人もありがとう!!」」


 なんとか劇も終わり、片山君と守山さんに手を握られてぶんぶん振られる。

 結局劇の最後まで電気が戻ってくることはなかった。どうやら文化祭用の資材がブレーカー前に積み上がっていてブレーカーまでたどり着くのに時間がかかったとのこと。

 そもそもなぜ落ちたかは、劇が終わった後に判明した。科学部が公開実験といって体育館から電気をひっぱっていたんだが、そこでショートさせたためだ。


 それにしても、二人もよく俺達の急なアテレコに対応して演技を進められたと思う。


「鈴木だけじゃなくて飯島さんも声出せたんだ」

「まぁね」


 遥さんが誇らしげに胸をはる。今日は遥さんの機転のおかげで成功したようなもんだしな。


「それにしても二人とも、よくあんな一発で演技できるもんだな」


 俺は時間かかったんだが・・・と片山くんが半分落ち込みながら言ってきた。


「まぁ、一応声教えていたから」

「ふふっ、そういうことにしておいてあげる」


 守山さんその意味ありげな言葉は何ですかね・・・

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