【第59話】2年目の文化祭
夏休みが終わり、生徒が浮ついた気分から抜け出した頃、今年もやってきた高校の文化祭。
夏休みには計画的に課題は終わらせていた俺と遥さんが余裕で最終日に遊びに行こうとすると、幽鬼のような近藤と柊さんに捕まって一日課題をしていた。
去年は女装したことで遥さんに身バレしたあの文化祭だ。結果的には彼女も出来て良い方向に落ち着いたからよかったものの、下手すると女装趣味の変態として知れ渡る可能性だってあった。
ただ、今年は・・・
「ごめん。クジで負けて演劇になった」
うちのクラスの出し物は演劇になったらしい。
一年と二年でそれぞれ一クラスが体育館で行われる演劇の担当になる。しかも演劇になるかは担任によるくじ引きになっている。流石に全校集会の壇上でくじ引きで押しつけ合いは出来ない。
ちなみに三年生は文化祭は自由参加だからか演劇のくじ引きは行われない。
「「「ぶー」」」
ハズレと言われている演劇を引き当てた華岡先生にブーイングが飛ぶ。俺も軽くブーイングしておく。
ハズレと言われるのは練習する必要があって結構時間を取られるのと、自分達で決めたものではなく、決められたものということもあってモチベーションが上がらないためだ。あとステージに立ちたくないというのもある。
「残念なことに伝統になっているのでどうしようもありません!!
題材を選びます!!」
もう先生も自棄だな。教師間でもハズレらしいからな演劇。
そういえばうちのクラスの演劇部の奴は・・・守山さんが確か演劇部だったはず。あぁ。やりたくなさそう。
そりゃね。押し付けられたものはやりたくないよな。
「俺、木の役やりますっ!!」
はやっ!?まだ題材も決まってないんだが!?
「じゃ主役は片山君で」
「そんなご無体な!!」
「木の役を主役にする演劇を考えましょう」
「先生!!そんな演劇ありません!!」
「願いを叶える木に・・・」
「なら俺木の役やりません!!」
「じゃぁ俺が木の役やります!!」
「いやいや、俺がやります!!」
「じゃあ、私がやります!!」
「・・・じゃぁ、俺がやりま「「「どうぞ、どうぞ!!」」」チクショー!!」
なんでコントが始まったんだろうか。もう演劇じゃなくて漫才かコントでよくね?もしくは新喜劇で。
あぁ、新喜劇でいいじゃん。
ところで題材はどういった候補があるんですかね?
*
「えーと、『YOUの名前は。』で決定だってさ」
俺達が屋上で弁当を食べていると少し遅れて合流した遥さんがどこからか仕入れてきた情報を教えてくれた。
多分、この前に職員室に用事があるといってたから職員室で仕入れてきた情報なんだろう。
候補として幾つかあがった中の一つで、男女が入れ替わる話しだ。
内容としてはハーフの女子高生と日本人の男子高生が時間軸を越えて入れ替わる話になる。映画公開と同時に爆発的に人気になって俺も声優仲間と一緒に見に行った。
「入れ替わりなんてどうやって演じれば良いんだ?」
近藤が疑問と聞いてきた。
アニメの場合は心の声だけ声優が入れ替わればいいが・・・演劇でやるとなるとどうやればいいんだろうか。
普通に女子側は女子で、男子側は男子?いや、でもあの胸を揉むシーンはどうする・・・?
「まずはそもそも誰がやるかだよね」
私パスーと柊さんはノーノーと腕を交差させている。
「あたしは音響で」
早乙女さんは音響側でいて下さい。
「私もいやだー」
「俺もいや」
俺と遥さんもステージに立つのは嫌だ。裏方で良い。
まぁ配役については今度のホームルームにやるんだろうな。
*
「ごめん。無理」
なぜか俺がハーフの女子高生役の配役で入れられそうになって拒否した。えっと、誰だ?俺にやらせようとしたの。
女子高生役を男子にするのかよ。確かにそれだったら男子っぽさは出せると思うが・・・ただ、入れ替わりモノだから見た目は女子である必要があると思うんだが。
声だけ入れ替えるというのも手だぞ。
「え、去年鈴木女装しても全然違和感なかったじゃねぇか」
「違和感ないのと演技が出来るのは別だぞ」
声だけなら演技は出来るが、仕草までは流石に・・・声を女子にしたら仕草も女子寄りになる俺じゃその役無理だから。
遥さんに早乙女さん、あとアカネ君はこっちを見るんじゃない。俺ならいけるだろという目で見るんじゃない!!
というか俺もう既に仕事決まってるんですけど。
今回背景をプロジェクションマッピングで投影するからその背景描きに遥さんと一緒になった。これでも俺達は美術の授業で風景画で描けることはクラスメイトに知られているからな。写真投影でもいいんだが、やはり所々に手を入れる必要はあるわけで。あとどうしても最後の風景と流星群は撮れないから描く必要がある。
だから、流石に2役は無理。
「あーそうか、背景担当だったな。んー誰か女装が似合いそうな奴は・・・」
女子高生役を男子にするのは確定なんだな。
「近藤やるか?」
「は?女装じゃなくて、声だけ入れ替えればいいだろ」
「ムリムリ、公衆の面前で女子に胸揉ませるの?サイテー」
女子の実行委員が言う。確かにそれはそうなんだがな。
「じゃー一回男子全員女装させて決めるか」
何だその決め方。
あと女子の方はどうすんだ。
「じゃあ女子の方も男装させて決めようか」
華岡先生の眼光が強くなったんですけど、あの人生徒で妄想してるんじゃないだろうか。




