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アナタの本当の姿は?  作者: kame
高校二年生
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【第46話】新人2

「リンちゃんその子は?」


 須藤君を連れてスタジオに入ると姉さんが既に居て声をかけられた。


「新人」

「おぉーよろしくねー」

「えっと、よろしくお願いします」


 他にも居た人たちからよろしくーと声がかかる。ペコペコと頭を下げている須藤君を連れて、スタジオの一角に座ってコンテを描いていた今回のアニメの監督の前に連れて行く。


「監督。新しい子」

「おぉっよろしく。監督の新垣(にいがき)です」

「は、はいっ!!お願いします!!」


 新垣監督は須藤君の姿を見て・・・


 ――ガタッ


 勢い良く席から立ち上がった。


「リアル男の娘きたぁぁぁぁぁぁ!!」


 ・・・そういや、この人男の娘好きでしたね。須藤君はビクッとして後ずさりしましたが。

 わたしも男と何回も言ってるんですが信じてくれないので、普通に女子扱いされてますけど。いやいいんですよ?リンで目指していたところはそこなので。


「ストップ」


 今にも襲いかかりそうな新垣監督を止める。


「リンちゃん!!この子!?」

「はい。ご認識の通り男の娘です。襲わないでください」


 わたしは須藤君を守るように監督との間に立つ。


「うぐっ」


 あなた前科あるんですから。男の娘喫茶で手を出して警察沙汰になったって聞きましたよ。その時は示談成立したらしいですけど。色んな人からわたしに要注意としてアナタのことは教えられているので。

 放っておくと男の娘作品になってしまうという欠点もあるんですけど、普通にいいシナリオ書くんですよね。わたしのデビュー作もこの人のシナリオでしたし。


「須藤君も気をつけて」

「は、はぃぃぃ」




「えっ男の娘なん!?すごーい!!」


 伊佐美さんが須藤君の後ろからハグした。

 あれ?今回のアニメには伊佐美さん出なかったと思うんですけど。


「今度のイベントの打ち合わせがあったんやー」


 で、これ差し入れーと渡されたのはドーナツの箱。

 わぁ。ありがとうございます!!



 *



『お嬢様。お嬢様ァァァ!!』


「んー・・・」


 新垣監督が顎を押さえながら須藤君の演技をチェックしている。


「もう少し女の子っぽく」


 今回須藤君に渡された役は城に務めるお転婆お姫様付きのメイド役。今のカットはお姫様が窓から逃げるカット。


『お嬢様っ。お嬢様ぁぁぁ!!』


「うーん・・・もう一つ本気で人を追いかける感じで」


 新垣監督は脇役の声にも妥協はしない。といっても須藤君の担当するキャラは脇役ではあるけど、よく主人公の近くで声を出すタイプの脇役だ。


『お嬢様っ!!お嬢様ァァァ!!』


「オッケー」


 初めてで3リテイクなら十分じゃないかな。わたしのときは・・・あれ?どうだったっけ?ほとんど一発だった気もする。


「じゃっ次リンちゃん。よろしく」

「ん」


 さて、街人AからGまでの声録りますよぉ。



 *



「リンさんって色んな声出せるんですね!!」


 須藤君が録り終えて伊佐美さんの差し入れてくれたドーナツを頬張るわたしに声をかけてきた。

 まぁこの中で一番年が近いのはわたしですからね。聞いてみたところわたしより一歳年下だった。高校生になったからうちの事務所の声優募集に応募して受かり声優を始めたとのこと。


「色々出せる」


 須藤君のハスキー声を真似て声をだす。流石に完コピは無理。だって癖とかあまり知らないし。


「すっごっ!!」

「リンって凄いでしょ!?」


 急に後ろから抱きつかないでもらっていいですか姉さん。あやうくドーナツに顔を突っ込むところでしたよ。


「はいっ!!まるで声優の悠里さんのようでした!!」


 ・・・あっ、そういや須藤君には教えてなかった。


「リンがその悠里よ」

「えっ」


 須藤君が驚いた目でこっちを見てくる。別に声優仲間には悠里の正体は隠していませんからね。


「ってことは女の子派大勝利!!」


 残念。リンは女の子じゃないんです。

 あぁ、姉さんはにやにやとして教える気はないんですね。わたしもありませんが。


「わたしが悠里だと絶対に誰にも言わないこと」


 設定男の娘で売ってるから性別分かったらおもしろくないでしょ?と釘は指しておく。



 *



「おつかれさまでしたー」

「おつかれさま」


 帰っていく須藤君をとりあえずビルの入口まで連れてきた。

 わたしは今日はお父さんの車に乗せてもらうから、まだ事務所に残っておく必要がある。スマホでゲームしてたらいいでしょ。


「あっ、姉さん!!」


 ん?須藤君のお迎えかな?

 わたしが須藤君が声をかけたほうを見ると、この前わたしに告白してきた須藤(すどう)未來(みく)さんがいた。


幸平(こうへい)。おつかれー、初仕事どうだった?」


 は?須藤さん!?え?


「どーも幸平がお世話になってます。幸平の姉です。双子なんです私達」

「えっと、どうも」


 親戚か何かかとは思ってたけど、まさかの双子の姉弟だったとは。


「こいつこんな格好で来てたようなんですけど、問題ありませんでしたか?」

「えぇっと、うちはそのあたりは問題ないです」


 そもそもわたしという存在を受け入れているから問題ない。

 あと、外の人と会う予定のない人は普通に私服勤務の事務所だし、実は性別適合手術を受けた人が各部署に一人は居るような事務所だ。今更異性装でどうこう言うような人はいない。


「使えそうですか?こいつ」

「ん。筋がいい」


 意外と演技の筋は良かったと監督も褒めてた。


「そうですか。よかったです」


 須藤さんは安心したように息を漏らした。意外と心配していたようだ。


「じゃ、お疲れ様」

「はい。おつかれさまです」


 気をつけて帰ってくださいね。

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