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アナタの本当の姿は?  作者: kame
高校一年生
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【第4話】さぁ冬の祭典へ

さてやってきました!!冬の祭典!!

ルート構成もしているし、あとは開場待ち!!


「うー寒っ」


ちょっと遥が漏れている遥斗にすっとカイロを渡す。

少し多めに持ってきておいたから渡してもわんさかとある。


「ありがと」


声優の伝手でサークルチケットを手配出来なくもないが、まぁこういうのも思い出だろう。


「ファビュラス見に行く?」


あーそういやいるんだっけ?


「行かない。悲しくなる」


すっと自分の胸元に目線を向ける。

まじで言ってる?と遥斗から視線がくる。

はい。ゴメンナサイ。本当は悲しくはありません。

今の大きさでいいです。


「それを言うなら私のほうが・・・」


ぽつりとわたしの耳元で地声に戻して呟いてくる。

うん・・・ゴメンナサイ。


周りがわっと沸く。

開場だ。


「では、健闘を祈る」

「ッサー」


といってもほとんど目的地一緒なんですけどね。





遥斗が遥さんで、遥斗にわた俺が告白されといったあのクリスマスからわたし達の関係は変わっていない。

断ったというわけではない。保留にしている。

何せ遥斗が遥さんで、わたし(リン)が俺(佑樹)というカミングアウトがあったのだ。

確かに告白というのも大きいイベントだった。でも心の整理を付けてからもう一度ということになったのだ。

ただ正直もう返事は決まっている。


「見てみて!!りょう先生の新作ゲーット!!」


ふおぉぉぉ!!あの壁サークルの!?

列に並んでいたらふらっと消えていた遥斗が帰ってきて本を見せてくる。

いつも長蛇の列のサークルの本!!


「ちょうど列が少なかったんだよね!!」


さいっこうと、遥斗は丁寧にカバンに片付ける。

わたしに見せつけるためにわざわざカバンに入れずに持ってきたのか。


「あとで貸してあげるから」

「ありがと」


もうちょっとでこの列も終わる。そしたら本が手に入る!!



===>



同人誌が手に入って目をキラキラとさせているリンを見て、俺は嬉しい気持ちになる。

胸のつっかえは消えた。つい告白までしてしまったが、保留で今はイベントを楽しむ。

結局俺たちはヲタ友なのだ。イベントがあればそっちを優先する。


あの日、俺は家に帰って悶えた。

ベッドの上で暴れて隣の部屋の梨花に怒られるぐらいに悶えた。

梨花にはいよいよお姉ちゃんにも春が・・・と言われたけど、今まで彼氏がいなかったわけじゃない。

でも、私から告白なんて事をしたのは初めてだった。

思い出してしまって、多分今顔が赤いだろう。


「ん?気分悪い?」


横を歩くリンが俺の顔を覗き込みながら聞いてきた。


「ちょっと人混みに当てられたかな」


流石にあの時のことを思い出して顔を赤くしていたなんて言えない。


そう。とリンは俺の腕を引っ張って人の流れから外れる。


「はい。あげる」


そういってリンが出してきたのはレモンティーだった。

未開封だ。


「えっと・・・いいの?」

「まだある」


そういってリンはカバンからさらに二本レモンティーを取り出した。

重くないの・・・?


と、レモンティーを二人で飲んでいると、リンの後ろに人影が現れ・・・


「リーンちゃーん!!」


がばっとリンに女性が抱きついた。

あっ!?



<===



「リーンちゃーん!!」


そんな声とともにわたしに抱きついてきた。

聞き覚えのある声だ。そして当たる柔らかい感触。


「抱きつくなら何してるのか確認してから抱きつく!!」


今は特にペットボトルでレモンティーを飲んでたから危険。

ペットボトルから溢れることはなかったけど。


「で、何?」


わざと押し付けているとしか思えない胸からするっと逃げて遥斗の横に立ち、抱きついてきた人物を見据える。

そこにいたのは姉だった。

しかもメイクばっちりの完全人前に出るときの声優仕様の。


「会えるとは思わなかったからつい!!」


まぁ姉は大学近くで一人暮らししているし、合うのは大体スタジオでプライベート合う機会はあまりない。

ちなみに姉は主人公をはれる声優で、わたしは脇役の声を同じアニメでも色々貰っている声優だ。

二人して学生ということも制作会社側が気にしてくれて収録時間は調整してくれている。

遅れ気味でも学業優先!!と声高々に制作会社の人たちが言って、調整は大人がするから学生は学校いけということも何度もあった。

いい人達だ。


「で、この子が言っていた子ね!!」


うひょーかわいい!!とテンションが上がっている姉。

確かに遥斗はかわいいといった部類だろう。

本当は女子だから肌の質もいいし体もスッとしている。顔をメイクで男子の可愛い部類にまで変えている。

わたしの隣で密かに震えていた遥斗ががっと姉に近づき口を開いた。


「声優の鈴木(すずき) 麻美(あさみ)さんですかっ!?」

「いぇすっ!!」


ブイっと、姉はVサイン。


「リンの姉ですっ」


似てないけどね!!と姉は言うけど、素顔は意外と似てるけど?

両方共メイクで化けまくってるから違っているような印象が強いだけで。

メイクのアプローチが全く違うから印象も全く違うわけです。


「なんでそんな美味しい事を言わないっ!?」


と遥斗はわたしの肩を掴んでぐわんぐわっ・・・うぶっ、やめて・・・


「こうっ、なっ、るって思ってっ、たかっ、らっ・・・」


喋る間ぐらい揺らすのやめて!!




===>



「落ち着いた?」

「落ち着いた」


はい。ごめんなさい。ついテンションマックスでリンを揺らしました。

でも、一緒に話していたアニメの主役の声がこの麻美さんだったんだよ!?

リンは声優にはそんなに興味ないって言ってたことがあったけど、俺は無茶苦茶興味あるって言ってたよね!?


「もう声優に幻想は抱けない」


近くで痴態を見すぎてとリンは遠い目になって麻美さんがあははと苦笑する。

うあっ身近に声優がいるとこうなるのか・・・


「ところでリン、他の声優の人たちとあっちの企業ブースにいるんだけど来ない?」


正直人が多すぎて捌ききれないんだわ。と麻美さんが企業ブースに誘ってきた。

そんな簡単に家族とはいえ一般人を誘っていいのか?

というか多いならここに麻美さんが出歩いているのも問題では?


「あっちなみに私がここにいるのは逃げたから!!」


いぇいっ!!って自慢にならない!!

学生と声優業を両立して主役級の声を担当してて真面目というイメージがあった麻美さんだけど、そんなイメージが崩れていく。


「大手サークル並の行列の先には理想郷(ヴァルハラ)があるのさー」


と麻美さんの視線はトイレの方へ・・・あぁ、あそこは大手ですもんね。

そういやリンは・・・いや、普通に女子トイレ入って行ってたな。俺も男子トイレの個室に入るけど。


「行き?帰り?」

「行き!!というわけでサラバダー」


誘った本人がスタスタと某大手に向かって行った。


「・・・賑やかな人だな」

「・・・ん」


ほんとに。とリンは顔を抑えていた。




<===




「あっリンちゃんいらっしゃい」


こっちこっちとわたしを見つけて引っ張っていく伊佐美さん。

わたしは咄嗟に遥斗の腕を掴んだ。


「手伝わない」

「なんでぇー?」


人がおおて大変なんやーと言いながらわたしが掴んだ遥斗を見て


「おぉっ!?その子がリンちゃんの彼氏かぁー」


ちょっ、それここで振る!?

遥斗がちょっと震えてるし。

ってあれっ、遥斗なんでわたしの肩を掴むんで?


「リン!!なんでいさみんと知り合いなんだぁぁぁ!!

なんでそんな美味しいことを言わないィィ!!」


あぁぁ、頭がぐわんぐわんす・・・ウィッグがぁ・・・


「ちょっ、ストップぅぅぅ」





「はい。ごめんなさい」

「ウィッグ外れたら面倒だから余計に止める」

「はい。ごめんなさい」


反省する遥斗を見つつ、外れかけたウィッグの留め具を止め直す。

ギリギリ外れる前にやめてくれた。

まったく・・・


「くくく。おもろいなぁ二人」


どこかツボに入ったらしい伊佐美さんが横で笑っている。


「えーと、伊佐美様とリンはどういったご関係ですか?」


そういや遥斗は伊佐美さん好きだったなぁ。

ライブとかも行ったことあるって言ってたし。


「声優仲間やね。仲がええほうの」


ギギギという音がするように遥斗がこっちを向いて、肩に手を


「させない」


置く前に腕を掴んで止める。

これでもわたしは男だ、女装し辛くなるから筋肉はあまり付けないけど、少しぐらい力はある。

グギギと二人で腕の押し合いをする。ちょっと遥さん力強すぎませんかねぇ!!

押し負けそうなんですがぁぁ


「なんでっそんな美味しいことを黙ってるかなぁ!!」

「普通言わない」


自分から自分声優ですなんて普通言わない!!


「ちなみになんて名前で?」

「『悠里(ゆうり)』やよ」


わたしが答える前に伊佐美さんが答えた。


---ガシッ


遥斗に腕を掴まれた。


「サインください!!」


はい?



===>



まさかリンがあの喉にマンションやら人間変声機とか言われている性別不明の声優がリンだったなんて!!

クレジットに『悠里』という名前がぞろぞろと流れて来るのは中々に圧巻で、雑踏『悠里』なんて纏め方をされていることもある。

今年にデビューして雑踏専門という声優だ。


言われてみれば、リンと鈴木君の声ですごく違っているし、この前の文化祭だって別の声を使っていた。

あと他の男子の声の真似をして代返していたりもしていた気がする。

その時は気が付かなくて、あとから代返のお礼を言われていたのを聞いただけだけど。


「サインはないからパスで」


そもそもバイトだから。とリンは興奮する俺をなだめてくる。

さっきからリンのことで興奮しっぱなしだ。


「とにかく、わたしは表舞台には立たないから伊佐美さん頑張って」


そもそも今回のイベントには呼ばれてないですし。とリンはわたしには関係ないと肩を竦めた。


「うぅ・・・社長が高校生組は呼ぶな、遊ばせてやれというから!!」

「呼ばれたとしても断りますよ」


裏方でいいです。とリンはもう一度肩を竦め、ガンバレーと棒読みでいって俺の手を掴んで伊佐美様から離れる。

私は伊佐美様からサインをぉぉ


「また空いてるときに合わせてあげる」


今はあれ。とブースを指差した。


「うぁっすごい人・・・」


一つの企業ブースにすごい列が出来ていた。


「わたしたちに構ってあっちがおざなりになるのはダメ」


確かになぁ・・・


「でも今度会わせてくれるのか!?」

「多分問題ない」


まじか!!くっそ楽しみ!!

色紙用意しなきゃ!!

リンにも書いて貰うから!!


「絶対に嫌!!」



<===



まったく・・・遥斗には声優だってこと言うつもり無かったのに。伊佐美さんめ・・・姉は察してくれたのか言わなかったし。

テンションが高いままの遥斗と一緒に電車に揺られて帰路につく。


よくあるような痴漢イベントは実はわたしはまだ遭遇したことはない。

そもそもカバンでガードしている上に壁側に寄ってリスクは減らしている。

最近は遥斗と乗ることも多くなって、遥斗を壁にしている。

まぁ遥斗が実は女なんですけとね!!

今日は隣に座ってますけどね。席が空いていたので。


「今度さ一緒に買ってない同人誌を貸してくれない?」

「おけ」


全く断る理由がない。と会話はそこまでだった。

遥斗がうつらうつらと船をこぎ始めたから会話がなくなった。

朝も早かったしテンションの高い一日だったから疲れたんだろう。

駅までは寝かせてあげよう。


---トンッ


わたしの肩に遥斗の顔がのってきた。くぅくぅと可愛らしい寝息が聞こえてくる。

・・・肩にじんわりと遥斗の体温を感じる。

寝てる?寝てるよね?



本当は面と向かって保留にしている返事をしたほうがいいのは分かっている。

でも、こんな女装男と飯島さんが付き合っていいのか未だに結論はでていない。

保留にしている間に他に流れるなら全然いい。だから飯島さんにはまだ返事は伝えていない。

別れた後にこのまま一緒に居て居心地の良いヲタ友を続けるには付き合っていない状況のままで居たほうがいい。

でも、、、


「これから恋人としてよろしくお願いします」


だからぽつりと地声で聞こえないように呟いたはずだった。


「ん。よろしくね」



実は作者はコミケに行ったことはありません。

地方民なので中々足を延ばせません・・・

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