【第38話】黄金週間3
「私女、京も女、アンダースタン?」
遥さんが目の前にいる男に見える京さんに言う。
流石に本屋の前でするような話じゃないから階段の踊場に移動してきた。
「性別なんて関係ない!!」
いや、遥さんから聞いていた話だとアナタ遥斗に惚れてるんじゃないですかね?本体の遥さんにも惚れちゃいましたか?
「だから俺と!!」
「いやだ!!私彼氏いるし!!」
当の彼氏は目の前で女装してますけどね。
「嘘だっ!!
だったら彼氏連れてこいよ!!」
すでに目の前に居ますよ?遥さんと目が合う。
流石にここでわたしが正体を出したら、色々誤解されそうだ。
遥さんが同性愛者と思われそうだし、わたしも女装趣味の変態と・・・いえ、女装趣味ですけど変態じゃないです。
「えーと、そこまでにしませんか?遥さんに彼氏がいるのは本当のことですよ?」
と、この前二人で珍しく素の姿で撮ったツーショット写真を遥さんにスマホで表示してもらう。わたしのスマホから見せても不自然なわけで。
何枚かスクロールしてもらう。あとは学校の昼休みの屋上での写真が数十枚。
いつの間にか屋上昼食に参加するようになった早乙女さんがわたし達の写真を撮ってよく送ってくれるから保存している。
「うぐぐ」
流石に交互に弁当の中身を食べさせ合っている写真を見て京さんが現実を受け入れたのか唸っている。
というか思ったよりわたし達バカップルしてますね。少し学校では自重しましょうか。
「というわけで遥さんが付き合ってるのは間違いない」
だって、付き合っている本人が言うんですからね。
「俺には遥斗さんと赤い糸が・・・」
赤い糸とか少女漫画の読みすぎですよ?
*
「あー、京の奴面倒くさい」
今もこそこそとわたし達の後ろをついてくる京さんに遥さんはぽろっとこぼす。
まぁ放置してゲーセンにプリクラでも撮りに行って気分でも変えよ?
今この状態で撮ったら女友達でのプリクラですけどね。
「どれいくー?」
プリクラも種類があってどれがいいのか正直わからない。
「んー、デカ目は却下で」
前撮ったことあるし。
バランス良くメイクで調整しているっていうのに目を大きくされるとバランスが狂って違和感が凄かった。
まぁ二人で色々描き込んで楽しんだけど。
「じゃぁ色白いこー」
おーけー
*
「帰ろうか」
ゲーセンの中でプリクラとゲームを行ったり来たりしているうちに、京さんはいつの間にか振り切れた。
買いたい物はもう買い終わってるし帰ろうか。お母さんに連絡して車で落ち合う。
お母さんは服の袋と今日の夕飯になるだろう食材の袋を持っていた。
今日は久しぶりにわたしがご飯を作らなくて良い日になるようだ。
「ごめんね。わたしの面倒事持ち込んじゃって」
「いや、別にいい」
正直ライブとかイベントにいくとこっちの面倒事に巻き込んでるし。
結構な頻度で姉さんに出演者の楽屋に引っ張られていくし、最近ネットじゃライブ後の風物詩として有名になりつつある。
麻美さんに引っ張られていく子可愛い!!とか顔立ち似てるし妹さんかな?とニアミスしているような意見が多い。
偶に遥斗に向かっていい男とかいう呟きもあった。冗談だと信じたい。
「まだリンのはね。私も得してるから全然!!」
ほんのり声豚の私にはご褒美です。と遥さんはサムズアップした。
喜んでくれているならいいけどさ。
「リンは巻き込まれ体質だから気をつけたほうがいいよー」
お母さんまで・・・
*
「遥ちゃん。こんな息子だけど今度ともよろしくね」
「えっ、あ、はい。こちらこそお願いします」
遥さんの家まで春香さんを送ってくると、急に真面目に戻ったお母さんが車を降りようとした遥さんを呼び止めて言った。
なんで今?
「こんな趣味の佑樹だけどね、彼女がいるってわかって安心したの。
もうこの子は女装をやめるつもりはこれっぽっちもないだろうし、彼女はできないと思ってたの」
ありがとう。とお母さんは遥さんに言った。
いつもリンリンと絡んでくるお母さんが珍しく真剣な顔だ。
確かにわたしは普段の姿を格好良くするつもりもなかったから、あのままだと彼女は出来なかったことだろう。
でも、リンは似合わなくなったら止めますよ?
「だから・・・」
お母さんが言葉を止める。何を言おうとしているんだろうか。
「早く孫の顔見せてね!!」
「溜めて言うこと!?」
わたしは座っていた後部座席からお母さんの座る運転席を揺らす。
「あはは、頑張ります」
遥さんもなんでそんなに簡単に頑張りますなんて言えちゃうの!?




