【第335話】結婚式Ⅱ
「それじゃ、リンさん、遥斗さん。真ん中歩いて行って奥まで進んだらいいから」
守山さんがわたし達に扉の前で説明してくれる。多分前やったときと同じですよね?
「そうそう。前みたいに動いてくれたらいいから」
説明楽でいいわぁーと守山さんが言いながら、うんうんと言う。ま、まぁわたし達逆の立場でしたけど、一回やってますからね。勝手は分からなくはないです。一回やってるって言ったらバツイチとか勘違いされそうですけどね。
「それよりも俺らに黙って準備してたことに何かないのか?」
なぁ? と遥斗が守山さんに聞く。
「だって二人にそれ言ったら、不要とかいいそうじゃん」
もう結婚式してるからしなくてもいい。って言いそうだし。と守山さん。確かにわたしたちはそう言いそうですね。わたし達こっちの姿で結婚式するつもりはなかったですからね。
でもまぁ、色々準備してくれたこと自体は嬉しいんですけど、教えてほしかったですね。わたしさっきまで守山さんの撮影だと思ってましたし、守山さんが着替えないことを結構不安に思ってたんですから。
「撮影もあるよ? 撮影の前に借りれるように社長が調整してたけど」
やっぱり社長もグルですか。でないとこんなホテルでどっきりなんて準備できませんよねぇ・・・
「ま、今はリンさんと遥斗さんの式だからね」
そういって守山さんはわたしと遥斗の背中を軽く押した。
*
『この後、新郎新婦が入場されますので、拍手でお迎えください!!』
扉の先からそんな声が聞こえてくる。
「リン、大丈夫?」
そういって、遥斗がわたしに手を差し出してくる。切り替え早いですね。わたしまだちょっと急な結婚式に心が追い付いてないんですけど。
「大丈夫、俺も流されてるだけだから」
それ胸張って言えることじゃないですよね。でも、わたしは遥斗が差し出してきた手を取る。流されたっていいですかね。タキシード姿の遥斗を見れるだなんて思ってなかったし、見れただけでも正直満足しちゃってる。
「リン、とても似合ってる」
ドレスも、メイクも。と遥斗が握った手を視線を向けてからわたしの全身を見て言ってくる。
「ありがと。遥斗もカッコいい」
わたしが着たタキシードは正直似合ってなかったですからね。二人でそれぞれの姿を見て小さく笑いあう。遥さんはともかく、わたしはこっちの姿の方が栄えるんですよねぇー悲しいことに。
『それでは、新郎、遥斗様、新婦、リン様の入場です!!』
部屋の中から俺達を呼ぶ声が聞こえてくる。
「準備は大丈夫でしょうか?」
扉の前で待機していたスタッフさんが、扉を開ける準備をして、わたし達に聞いて来た。ふたりで一度向かい合って、顔をお見合わせて・・・
「「大丈夫です。お願いします」」
*
事務所の人たちに、うちの親と飯島家の皆さんが左右に分かれて、わたし達が入ってくるのを待っていた。
梨花ちゃんがいるのも不思議なんですけど。今日平日ですよ? 学校は? とは思いますし、他の人たちは仕事は大丈夫なんでしょうか? いえ、野暮ですね。せっかく来てくれているんですし、そこは突っ込まないことにしますけど。
―――パチパチパチ
BGMと共に、皆が拍手をしてわたし達を出迎えてくれる。皆さんありがとうございます。わたし達はゆっくりとレッドカーペットの上を歩いていく。
既に待っている神父さんの前までわたし達は二人で腕を組んでレッドカーペットを歩く。わたし達が神父さんの前まで行くと、神父さんは小さく一礼してから小さな本を開く。BGMの音量が少し絞られ神父さんが口を開いた。
「新郎、遥斗さん。あなたはここにいる凛さんを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
遥斗のほうに向いて、神父さんが問いかける。
「はい。誓います」
遥斗はそう答える。声にも迷いがない。
「新婦、凛さん。あなたはここにいる遥斗さんを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
遥斗の言葉に頷いた後に、神父さんはわたしの方に向いて聞いてくる。
「はい。誓います」
わたしも迷わない。
「それでは、誓いのキスを」
わたし達は既に指輪は交換しているから、誓いのキスを行うことになっているのは守山さんから聞いていた。
わたしは、遥斗の方を向いて動かない。遥斗の手がわたしの被っているブーケを静かに持ち上げる。
「前とは逆だな」
と、遥斗がにやりと笑ってわたしと唇を合わせた。
これにて完結です。
最後の最後で、書くのに時間がかかりました・・・
おまけは書くつもりなので、まだ連載中としておきます。




