【第330話】結婚式3
―――パチパチパチ
俺と遥さんは敷かれたレッドカーペットの上を二人で腕を組みながら進む。
両側から拍手の音と、カシャカシャと左右からカメラの音が聞こえてくる。ちらりとカメラやスマホを構えている人達を見ると、その中に俺の一眼レフのカメラを構えた杉本さんがいた。それ姉さんに頼んだはずなんですけどね。まぁ妊婦だからと、杉本さんが言って変わったんだと思うけど。
うちの親と遥さんの親はもちろんの事、祖父母も来ている。そのほか遥さんの従姉妹の京さん、俺の従兄妹の絵里奈もいる。
その他には、俺と遥さんの招待した人達が並んでいる。大体男女は半々ぐらいだろうか。伊佐美さんはもちろんの事、近藤、柊さん、木村君、守山さん、高崎さん。それに大崎さんに登坂さん、アカネちゃんにナギサさん達もいる。これだけ多くの人が時間を作って来てくれた。
「ふふっ」
隣で俺の腕をぎゅっと握りながら遥さんが軽く笑う。きっと俺の顔も緩んでいることだろう。
二人でレッドカーペットをまっすぐ進んで、皆の前に移動する。そして振り返る。皆の視線が俺達に向いている。俺は何度か悠里の姿でこういった見られるというのは慣れてるけど、遥さんは慣れていないから少し緊張しているのが組んでいる腕から感じて、組んでいる腕とは逆の手で組まれている腕を撫でる。少し遥さんの緊張が和らいだ感じがする。
「それでは、鈴木裕樹様、飯島遥様の結婚式を始めさせていただきます。お二人の希望により、本結婚式は人前式スタイルで執り行います」
と今回司会をしてくれるスタッフさんが宣言してくれる。そう今回は二人で腕組んで入ったことから分かるように人前式。まぁそもそも既に婚姻届けも出しているし、一人(京さん)は怪しいけど、ほぼ皆に既に知られていることだから、厳格なものにはしなかった。簡単な式と、遥さんがやってみたかったらしいブーケトスをしたら、宴会場に移動することになっている。
司会には友人をという話もあったが、友人はできる限り招待側に居てほしかったから、慣れているスタッフさんにお願いしている。
事前に打ち合わせして教えている俺達の情報をスタッフさんが読み上げてくれている。
それを聞きながら昔のことを思い出す。出会いは恰好の当たりはぼかしているけど、本を取るときに手が合って、さらに街中で偶然出会うという昔の少女漫画かというような奇跡があったんだよな。
まぁでも、実際は高校の同じクラスだったけど・・・それぞれ学校とは違う雰囲気で気が付かなかったということにしてある。制服と私服、あと髪型で全然雰囲気が違うというのはよくあることだし、打ち合わせの時のスタッフさんも確かに分からない人いますよねーといった感じだった。
それにしても、高崎さん(女)の方から漏れてたりしないだろうか。大学のころの話とか俺達が話してない演劇部への指導とかの話が入ってるんだが。
「それでは、次に新郎新婦より結婚の誓いの言葉を述べさせていただきます。祐樹様、遥様よろしくお願いいたします」
出番だ。二人で考えてきた文章を言う前に、遥さんと一度視線を合わせてから頷きあって、また前を向く。俺達の方へ、皆の視線が集まっている。
「本日、ご参列いただきましてありがとうございます」
俺が話し、二人で軽く頭を下げる。
「高校で出会い、同じ大学で同棲して、婚姻を行い、色々な場面を私達は共有し、理解し、皆様の力をお借りしつつ、この場を設けることができました」
遥さんが話す。さらっと付き合い初めてここまで来た。俺達の仲がどうにかなる問題はなかったけど、それなりに色々な事を二人でやってきたような気がする。遥さんが話し終わったら俺が話す番になる。
「これからの人生も、皆さまのお力添えお借りすることもあるかと思いますが、私達は夫婦として、今後とも変わらない、温かい家庭を作っていきたいと思います」
俺と遥さんは一旦顔を見合わせて頷いてから、二人で口を開いた。
「「これからも宜しくお願いします」」
軽く頭を下げると、皆から拍手の音が聞こえる。
俺は、その拍手に後押しされるように頭を上げると、遥さんと向き合って、ベールを静かに持ち上げる。遥さんは目を閉じて待っている。
そして遥さんの唇に口づけした。




