【第33話】渋谷さん
「まぁたあんたはそんな恰好して!!」
「うげぇー」
――野生の渋谷さんが現れた。
さっとツバサちゃんはわたしの後ろに隠れる。えっと、どういう状況ですか?
「真奈は僕のこれをよく思っていなくて・・・毎回止めるように言ってくるんです」
へー、ツバサちゃん可愛いのにね。可愛いは正義でいいじゃん。うちなんか可愛くなれるから許されている感がある。
でないと服にコスメに買ってくれないだろう。最近はバイト代もあるから自分でも買えるけど、初めの頃は親が買ってくれてた。
あと最近じゃ両親の会社に娘さんと思われてる気がする。男の時はそんなに行ってなかったから特に・・・
「えっと、あなた方は・・・?」
今になってわたし達に気がついたのか、渋谷さんが聞いてきた。
むしろわたしはツバサちゃんの盾になってるから真っ先に気づいてほしかったのだけど。
「ツバサちゃんの友達」
「そそ」
「そうですか。二人は翼の事をどこまで知ってますか」
んー、どこまで言って良いのかな?ツバサちゃんに視線を向けてみる。
こくこく頷くだけじゃ伝わってこないんだけど・・・
「こいつが男ってことは?」
それ知らなかったらどうするつもりだったのかな?
「公言してるから知ってる」
一緒にお風呂まで入った仲ですとは言わない。そうなるとわたしの性別も男だと分かってしまう。
「なら!!男がこんな格好してるの変だと思いませんか!?」
んー・・・こんな格好しているのはわたしもだから何とも言えないんだけど。遥斗もわたしの方を見ながらくすくすと笑わないで。
「自由でいいんじゃないかな。ほら、可愛いは正義」
遥斗がサムズアップしながら渋谷さんに言った。そう可愛いは正義。
「味方がいない・・・」
聞く相手が悪かったんじゃないかな。少なくともわたしの周りは容認派が大多数を占めてるからね。
むしろわたしの周りに否定派がいない気がする。
*
「ツバサちゃんのこと好きなの?」
「っ!?」
いい反応するなぁ。人の多いところでする話じゃないということで、カラオケに入ってツバサちゃんと遥斗がドリンクを取りに行ったところで渋谷さんに聞いてみた。
この前のレクリエーションから渋谷さんがツバサちゃんを好きなんじゃないかとは少し思ってたけど、反応的に当たりかな?
好きな人が女装バンバンしてたら止めたい気持ちも分からなくもない。わたし達は特殊だからおいておく。
一応渋谷さんが男子だと思っている二人が部屋から出ていくタイミングで聞いてみた。遥斗はよろしくーといった感じで目線を向けてきていた。
ほら、今わたし女子だからいってごらん。
「そんなに分かりやすいですか?私」
「ん」
実際はレクリエーションのときの内容も踏まえて出した結果だけど。
ほらほら次々、二人帰ってきちゃうよ。なんでツバサちゃんのこと好きなの?
「・・・私達幼馴染なんです。
だから昔から私達一緒にいることが多くて、でも中学校で翼は男子校に行って一時期疎遠になったんです。
その時に物凄く物足りなく感じて・・・高校でまた一緒に通学できるようになって・・・私、翼の事好きだったんだなって・・・
でも、翼の奴、中学で腐ってるし!!私より可愛くなっちゃってるし!!堂々と男としていてほしかった!!」
うぅぅ・・・と渋谷さんは膝においた手を握りしめる。
というか腐ってるという言葉が出て来るあたり渋谷さんもオタ業界の事知ってますね。
「でも、好きなままなんでしょ?」
「はい。あんな格好していてもやっぱり翼は翼なんです」
「だったら受け入れてあげたら?」
「でも・・・私より可愛いし・・・」
ボソリと呟くようにいった言葉にわたししか苦笑を浮かべるしかない。そこがネックなんだ・・・
正直なことをいうと、渋谷さんはそんなに可愛いといえる容姿はしていない。可愛さで言えばツバサちゃんのほうが上だ。
少しつり目の目が主張しすぎてきついイメージが強い。髪はそれなりに長いが、ケアが雑なのか所々枝毛が見える。
もう少し年を取ったらスーツ来たらキャリアウーマンとしてぴったりの容姿だろう。
「なら、ツバサちゃんより可愛くなればいい」
男が可愛くなるよりはハードルは低いと思うけど。
「可愛くなりたいなら色々教える」
すすっと、わたしが参考にしているメイクのブログとサイトをスマホで表示する。
一応、今カバンの中にメイク道具はあるけど、男のわたしが使った化粧品でメイクはされたくないだろう。多分。
ツバサちゃんのメイク道具ならワンチャンあるかもしれないけど、ツバサちゃんって基本ノーメイクだから、あんまり持ってないかも。
今日は軽くリップ程度だったけど。
ひとまずはスキンケアとヘアケアの仕方ですかねぇー。
一応姉に教えて実践してもらったら効果があったのあるから、女性でも問題ないはず。
垂れ目メイクとかどうですか?




