【第324話】かき氷
「うっ」
二階の仕事部屋というか趣味の部屋から出ると外の空気の暑さに声が漏れる。家の中だっていうのにこの暑さはたまらない。部屋はエアコンがきいていた分、この温度差に体がやられそうだ。一旦部屋に戻る。
「そんなに暑いの?」
短パン、Tシャツといった格好の遥さんが液タブから顔を上げて聞いてくる。ほとんど俺も同じような格好でいる。まだ今日は露出が少ない方だ。たまにキャミソールに下着姿でいるときもあるし・・・見慣れてるけど。
「出たくないぐらいには」
この部屋がエアコンがきいていて、快適なだけではあるんだが、ここまで温度差があるか・・・
「でも、お茶よろしくねー」
仕方ない。一階のリビングにお茶を取りに行くか・・・じゃんけんで負けたし。暑いのは分かっていたことだけど、思ったより温度差がつらい。
一階のリビングまで来たら少しは温度が落ち着いた、やっぱり二階は一階に比べたら暑いか。それでも今日のご飯食べるときはリビングもエアコン付けておかないとつらいかな。二階までもって上がるのは面倒だし。作るときも暑いからエアコン付けなきゃやってられない。流石にお茶を取りに行くだけだからエアコンは付けないけど・・・
上から持って降りてきたコップに冷蔵庫の自動製氷機の氷を入れて、冷蔵庫で冷やしていたお茶を入れる。ついでに氷を口に入れる。暑い中氷がおいしい。
そういや、あれがあったな。俺は棚の扉をあけて、奥に手を伸ばした。
*
「あれ? かき氷するの?」
二階の部屋まで箱をもって上がると遥さんが俺が持ってきた箱を見て聞いて来た。ちゃんと実際の目的だったお茶も往復して持ってきている。
「そそ。氷も一杯あったしやろうかなって」
仕事行ってる間も俺達が寝てる間も冷蔵庫が自動で氷を作ってくれるから、結構氷が溜まっていたから、かき氷しても大丈夫だろう。出来ればリビングの方でやりたかったけど、エアコンかかってないし、かけても部屋が冷えるまで時間がかかるから上に持ってきた。
「機械あったんだ」
「まぁな」
前実家に帰った時に、埃を被っていたかき氷機を持ってきた。どうせ実家じゃ使わないだろうし。
「手動?」
「まぁ古いしな」
電動は記憶上持ってなかったはず。これも小学生の時に使ったのが最後のような気がする。
一緒に持ってきていた氷をセットして下に器を入れてゴリゴリとする。
「私もやっていい?」
遥さんが興味深そうに見ている。やったことないんだろうか?
「はい。どうぞ」
遥さん用と思って作っていたかき氷を自分用にして遥さんにかき氷機を渡す。俺の方は一緒に持ってきていたカルピスの原液をかけて食べる。練乳は大学時代のがあったから一緒に持ってきた。この練乳も何に使ったんだっけ・・・? 大学時代に気が付いたらあった気がする。
「電動ならやったことあったんだけど、手動は初めてかな」
ゴリゴリと遥さんが話しながら回しているけど、あんまり氷が出ていない。
「もうちょっと下に押し付けながら回さないと出ない」
「あれ? そうなの?」
電動でも押し付けないといけなかったような気がするけど・・・遥さんが上から押さえつけるように力を入れながら回し始めると、ちゃんと下から氷が出てき始めた。
「結構力いるんだね」
「まぁな」
小学校のころに自分でやろうとして上から全体重かけながらやった記憶がある。
「よし。出来た!!」
遥さんが満足そうにかき氷の器を下から取り出す。少し粗めの氷が器に盛られている。
「シロップって何かけるの?」
「これ」
と、カルピスの原液を渡す。今日かき氷をするつもりはなかったからシロップなんてものはないし、ちょっと調べた感じだとカルピス原液でもいいらしいから持ってきた。
「あれ? これでいけるの?」
「結構うまい」
まぁ考えてみたら氷入りのカルピスだけどな。あと練乳も渡す。
「この練乳、登坂さんからもらったんだよね」
「なんでまた?」
登坂さんから練乳をもらうってシチュエーションが分からない・・・
「文化祭のあまりらしいんだけど、なんでかこっちに渡されたんだよね」
なんで渡されたか分からないけど、気が付いたら練乳が増えてた理由が分かった。
遥さんもカルピスをかけて練乳をかけてパクパクとかき氷を食べ始め、
「あーっ!! 来たっ!!」
遥さんが頭を押さえた。まぁ風物詩だよな。遥さんが頭を押さえているのを見ていると、俺にも頭の痛みを感じ始める。さっきまで感じなかったのに・・・
「お揃いだ」
と、遥さんが笑う。頭痛のタイミングがおそろいなのは嫌だなぁ。今はかき氷での頭痛だからいいけど、病気の時に一緒にかかりたくはないなぁ。看病できないし、共倒れはちょっとな。
かき氷食べたい。




