【第314話】旅行2
たこ焼きを食べ終わって遥斗と一緒に適当にぶらつく。何回か客引きに声をかけられたが、無視する。ああいうのは無反応にしたほうがいい。というかもう食べ終わってるから行くことはないんだけど。
「流石に人が多いな・・・」
梅田の地下街。所謂梅田ダンジョンに入ったけど、まぁ迷う以前に人が多くて進む気力が削がれる。はぐれないようにわたしと遥斗は手を繋いだ。
「流石はゴールデンウィーク・・・」
「一部はスーツってことは仕事か。お疲れ様です」
わたしと遥斗は人の流れに流されながら、周りの様子を見る。早めに晩御飯を食べたから、時間帯的には丁度仕事の帰宅時間のラッシュの時間帯だからか結構多くのスーツ姿の人を見かける。わたし達が休んでいる間にも働いている人がいるからわたし達が休めるっていうのは忘れたらいけない。お仕事お疲れ様です。そういえば、うちの事務所のアニメ部門何人か出勤してるようなんだけど、何してるんだろう? 休み前の納期分は全員終わっているっぽかったんだけど。
「何か買うものある?」
「ん・・・お土産は最終日に」
「りょーかい」
俺もこの中見る気ないわ。と遥斗も苦笑しながら言った。下見も兼ねた梅田ダンジョン巡りだけど、この人の中で店の物を見る気力がない。どこか空いているお土産物屋さんとかないだろうか。
遥斗と手を繋いではぐれないようにしながら梅田ダンジョンから脱出する。まぁ入ってから直線にしか進んでないから無事生還した。
「無事脱出ってな」
「ほとんど直進しかしてない件」
「まぁな」
でも無事脱出。と遥斗がにやりとしながら言う。まぁ脱出で間違いはないんだけど。
と、遥斗と一緒に外の空気を吸っていると、わたし達に数人のグループが近づいてきた。カメラとか音声の機材的にテレビ的な奴ですかね。
「すみません。今お時間よろしいでしょうか?」
「はい。なんでしょうか?」
遥斗が返事する。
「僕たちこういったものなんですが、今晩23時からのニュース番組の為、取材させていただいてもよろしいでしょうか」
と、名刺を渡される。局的には守山さんのドラマの放送されている局ですね。
「えーと、どうする?」
「どっちでも」
まぁ何か問題あっても姿変えればいいだけですからね。
「大丈夫っぽいです」
「ありがとうございます。では、今日はどちらからいらしたんでしょうか?」
遥斗が答える。まぁ県名までなら特定されてもたどり着かれるはずがないし、そもそもわたし達、この姿としては一般人だから知られてもそこまで問題じゃない。
「何をしに大阪まで」
「明日イベントがあるのでそちらの参加をしに来たんです」
そのついでで観光ですね。と遥斗が当たり障りなく答えていく。イベント名までは言わない。
「ありがとうございます。すみませんが、放送で使わせていただいても良いでしょうか?」
遥斗がわたしの方を覗き込んでくるから頷いておく。
「オッケーみたいです」
「ありがとうございます!! では、また別の方へ取材しますの失礼します!!」
「お疲れ様です」
そして取材班はまた別の人に声をかけに行った。
「じゃぁ適当に見てホテル帰るか」
「ん」
ちょっと予想外の取材というのがあったが、わたし達は無事ホテルについて自分たちの部屋に入る。
「お茶飲む?」
「貰う」
机の中にあった電気ケトルを取り出して水を入れて沸かす。その横にティーバッグがあるのは確認している。
「ちょっとメイク落としてくるね」
「ん」
もうすでに地声の遥さんがユニットバスの鏡を見に行くのを見ながらわたしはテレビをつける。何か面白そうなのあるかな?
*
「そろそろ始まるんじゃない?」
それぞれ風呂に入って、部屋にあった浴衣を来て、二人でベッドで横になりながら、明日の予定を話したり、どこに観光に行こうかと話していると時計を見たのか遥さんが言ってきた。もう少しで今日俺達がインタビューされた番組の開始時間になるところだ。手を伸ばしてリモコンを手に取ってテレビをつける。ホテルの説明の画面が入ってチャンネルを選択すると目的の番組が流れ始めた。
『本日の大阪で旅行中の~』
と今日の俺達のインタビューの映像が流れだした。うん。まぁ無難? 特に変わったこともしてないし、面白くもない。よくこれで放送OKでたなと思う感じの内容だ。
―――ブブブ
なんか遥さんのスマホが震え始めた。遥さんがベッドでゴロゴロとしながらスマホを手に取って内容を見る。
「大崎さんがさっきのテレビ見たから連絡してきたみたい」
今大阪いるから、明日会えない? だってさ。と遥さんは大崎さんから来たであろうメッセージを伝えてくる。
「明日イベントだしなぁー・・・」
しかもブースを出す側の。ただの参加者であれば途中で切り上げれるんだけど、ブース出すからちょっと難しいと思う。荷物は宅配便で送付済み。
「イベント終わりで良かったらかなぁ」
ほぼ夜になるよな。と明日のスケジュールを思い出しながら遥さんに答える。
「一回聞いてみるね」
そういってスマホに入力していく。
「イベント行ってみたい!! だってさ」
まぁ俺達はどっちでもいいけど。大崎さんは暇になるんじゃないだろうか。
「来たいなら来たらいいんじゃないか」
「おっけーって返しとくね」
明日は大崎さんも来るのか。
「俺らあっちの姿じゃね?」
「んーまぁ大崎さんは知ってるからいいんじゃない?」
「それもそうか」
大崎さんには知られてるんだったな。
「場所は伝えておいたから、来るって」
「了解」
まぁ大崎さんが楽しめるかは分からないけどな。




