【第312話】会場探し2
「今回ご案内を務めさせていただきます。高崎といいます。本日はよろしくお願いします」
そういって、スーツ姿の男性から俺達は名刺をもらう。正直名刺どころじゃない。だってこの高崎さん、俺というかリンが知っている高崎さんだと思う。
いつもオフ会で会うような軽い感じのお兄さんって感じではなく、白のワイシャツに黒のネクタイ、銀のタイピンをアクセントにしたシックにまとめつつも、このウェディングチャペルに浮かないきっちりとした佇まい。正直オフ会のイメージしかない俺は少し違和感がある。
「お飲み物を入れてきますが、何になさいましょうか?」
「えーとじゃぁコーヒーで」「私も同じので」
「畏まりました。少々お待ちください」
と高崎さんは話す前に飲み物を取りにいく。
「ねぇ、事務所の高崎さんのお兄さんだよね?」
飲み物を入れに行った高崎さんの後ろ姿を見ながら遥さんが聞いてくる。声も高崎さんのお兄さんの声だし、多分そうだと思う。
「あの人結婚式場で働いてたんだ」
「全然分からなかったよね」
「高崎さんも何も言ってなかったし・・・」
「確かに・・・」
ちょっと予想外の再会があったりしたものの、飲み物を入れた高崎さんが帰ってきたから、一旦高崎さんに関する会話を止めていくつか用意してもらった会場の写真と実際の結婚式の写真を見始める。みんな写真写りいいなぁ。
*
「お二方とも職場は同じなんですね」
さっき書いた事前アンケートに高崎さんは目を通しながら、世間話するように聞いてきた。俺達の方でプラン、テーマが決まっていないから、ご提案させていただければということだったから任せた。
「はい。部署も一緒ですよ」
と遥さんが答える。
「なるほど。きっかけは・・・高校生の時からなんですね」
流石に詳しくは書けないけど、高校の時に参加したイベントからという事は書いている。
「はい」
「なるほど。では今までで、良かったこと悪かったことを言える範囲で良いので教えていただけないでしょうか」
良かったこと、悪かったことか・・・んー何があるかな。
「んー、なんだろ?」
遥さんも悩みだす。俺も悩むけど、何かはっきりと良かったこと、悪かったことってこれと言って何か上げれるようなことがない。
「何かあるっけ?」
俺達二人で見つめあいながら思い出そうとするけど・・・
「一緒にいて、落ち着くのが良い事っていえるのかな?」
「うん?」
どうなんだろ。普通の日を普通に過ごしてるから何かこれが良かったとかは上げてほしいと言われても思いつかない。
「いえ、大丈夫です。大体わかりました」
高崎さんは俺達のその様子を見て、何か納得したみたいだ。
「とても仲が良いのですね」
「まぁ喧嘩とかしたことはないよね」
「んー、ないよな?」
軽い言い合いはするけど、そこから大喧嘩になるようなことはない。まぁ大体の言い合いは同人誌のストーリーについてなんだけど。それは、違うだろうし。
「なるほど。であれば、こちらのようなテーマではいかがでしょうか?」
高崎さんがタブレットを俺達に見せてきた。うん。いいんじゃないか?
*
「会場についてはこちらなんかどうでしょうか」
といくつかの会場の写真を見せてもらう。王道の教会や神社、ホテルの写真の中にどこかの学校で撮った結婚式の写真がある。
「あぁ、それはですね。幼少期からの全て同じ学校に通う幼馴染の方で、思い出の学校で挙式をということで学校と交渉して結婚式をあげさせてもらったんです」
貴重な体験を私達もさせていただきました。と高嶋さんはその時の様子を思い出しているのか、目を細める。
「あっでは、お二人が出会った場所での挙式はどうでしょうか?」
イベントと言っていたので会場は時期があえば借りれると思うのですが、どの会場でしょうか? と高崎さんが聞いてくる。
「えっと、ビッグサイトの・・・」
「もしかして祭典ですか!?」
「あ、はい」
あそこで出会いがあるのか。と言いたいと高嶋さんの顔が物語っている。それがあったから俺達はここにいるんですけどね。
「僕も毎年行ってるんですよ」
はい。知ってます。
*
「では、こちらの会場を見学でよろしいでしょうか?」
「はい」
「お願いします」
「分かりました。スケジュールの方は・・・」
と俺と遥さんで選んだ会場のスケジュールを確認する高崎さんを見ながら俺達もスマホを取り出してスケジュールを開く。職業柄土日も仕事をしていることがあるから被る可能性がある。
「えーと来週の日曜日はいかがでしょうか?」
日曜なら・・・
「大丈夫です。祐樹は?」「大丈夫」
土曜ならちょっと木村君の付き添いの予定があったけど、日曜日なら大丈夫。
「では、来週の日曜日お待ちしております」
うーん・・・難しい。




