【第302話】答え合わせ
「へっ!?」「はっ!?」
二人が固まってわたしを上から下まで見る。いや、あなた達わたしの里奈の姿だって見てるじゃないですか。それの延長線ですよ。延長線。
「リンの事を知った人の反応って変わらないよな」
と遥斗がわたしの隣で呆れたように言う。うん。それはわたしも思った。
ほとんど、現実が受け入れられないのか固まってわたしを頭の上から足先まで見るって言うのが大体の人の反応だ。こんなの言うのもなんだけど、面白味がない。求めてはないけど。というか、バレたくはないんだけど。
そもそもあんまり関わり合いがなかった早乙女さんがわたしのことに自力で気が付いたことって相当凄いこと何じゃないだろうか。遥さんはまぁ偶然が重なった結果だと思う。
「いい加減落ち着け」
「いやいやいや」「嘘だろ!?」
と未だに現実を受け入れられない二人。でも現実。今まだゲーセンの中だし、声をあげられても困るからそのまま静かに困惑しておいてもらったほうが助かると言えば助かるけど。
「そうか、リンのこと両方知ってる人はこういう反応するんだな・・・」
バレる原因になった父さんがわたしの隣でうんうんと頷きながら二人を観察している。
「大体こんな感じで現実を受け入れられないって感じが多いですね」
遥斗が父さんに説明をする。人って驚くと固まるんですよね。とりあえず二人が落ち着くまで待ちますか。梨花ちゃんは適当に遊んできていいですよ。
*
「まじで鈴木なのか・・・?」
「だからそういってるだろ」
「声真似じゃなくて?」
「なんでわざわざ地声を声真似しないといけないんだ」
わたしは呆れたように言う。動きはリンのままだけど、声と口調は祐樹というちぐはぐでわたしも混乱するような感じだけど、袴姿の晴れ着で地を出すつもりはない。だって鏡でも写真でも何度も見たけど普通に可愛いし。作りものだけど。遥さんのこの晴れ着があってこそだとは思いますけどね。
「じゃぁ今朝会った時を思い出してみて」
まずは今朝、卒業式で会った時のことを思い出してもらう。二人とは朝会っている。
「今朝は・・・卒業式終わった後鈴木達と会って・・・」
はい。会いました。ちゃんと朝は性別通りの服で卒業式は参加してました。
「じゃぁ遥さんが着ていた服を思い出して」
「えーと・・・」
なんとか思い出そうと頭をひねり出す二人。いや、覚えてないんですか。
「あっ、リンさんが今着てる柄と飯島さんが着てたのが一緒だ」
まだ女性の服を着ることがある木村君のほうが覚えていたらしい。
「まぁ着せられたわけだ」
そこの親に。とわたしは目線を反らした親二人に視線を向ける。元々わたしは袴は着るつもり無かったんですよ。
「そうか」
「なるほどな」
と、納得した感じの二人。そうそう。親二人がうるさかったんで着たんです。
「ん?」
何か木村君が気が付いたみたいだ。
「それリンさんが鈴木だって説明になってないよな」
「あっ確かに!!」
ちっ、話を逸らしていたの気が付かれた。
*
「この娘は、娘でもあって息子でもあるのよ」
と母さんがわたしの後ろから抱きつきながら言い出した。少なくとも性別的には娘じゃないんですけど。
「えっ、ってことはふたなり・・・」
「そんなわけねぇよ」
木村君がぽつりと呟いた言葉には否定を入れておく。ふたなり・・・両性具有だけど、人類として一応実在はするという話は聞いた覚えがある。でもわたしは生物学的にも男だ。
「がちで、頭が理解を拒否するんだが・・・」
赤崎が頭を押さえながら呟く。そう皆さん悩まなくても・・・普通に今まで通り別人として扱ってくれても構いませんから。
「いや・・・鈴木がリンさんだとしたら横の遥斗さんって・・・」
と、木村君が何かに気が付いたように、わたしの隣に立つ遥斗を見た。わたしも遥斗を見る。わたしの事はばれたからいいといて、遥斗の、遥さんの事は言っていいんだろうか。
「もう気付かれてるでしょ?」
と遥さんも地声に戻してわたしの肩を叩きながら言ってきた。まぁ最近わたしたち一括りにされてますからね・・・
赤崎と木村君に目線を向けると、二人は口を開けて遥斗を見ていた。
「・・・なんか納得したわ」
「あぁ」
なんで遥斗のことが分かったら納得するんですかね。
✳
「まさか里奈が手抜きだったとはな」
と、もう一度わたしの全身を見た赤崎が呟いた。
「手抜きってわけじゃない。ただ、コンセプトが違うだけ」
里奈は女装というのをまだ出していて、リンは女子に溶け込むというのをコンセプトにしている。もう納得してくれたみたいだし、わたしはリンの声に戻す。もうこの姿の時はこっちの声じゃないと落ち着かない。
「いや、あっちも十分女子に溶け込んでるから・・・」
俺も参考にしてたし。と木村君が言ってくる。いつのまに参考にされたのかは分からないけど、わたし文化祭のときぐらいしかしてないと思うんですけどね。
「それで遥斗さんは飯島さんか」
わたしに続いて遥斗へ視線が向く。
「こっちもこっちで俺らがへこむ」
なんだよ、このイケメン。と赤崎が言ってる。うーん。遥斗はイケメンではあるけど、ちょっと女子よりのイケメンじゃないかな。
「それでもイケメンだろ・・・女子だなんて思えない」
「でも、これが現実なんだよなー」
遥斗が頬をかきながら言う。まぁイケメンと言われて悪い気はしないと前教えてもらったことがあるから、ちょっと照れ臭いんだと思う。わたしも本物の女子に可愛いといわれてちょっと照れ臭い気持ちはほんの少しある。
「ちなみにこれ、高崎さんには秘密で」
「言ってもどうせ信じられねぇよ」
赤崎は呆れたように言った。まぁ信じるかどうかは別として言わないでくださいね。
大学生編終了です。




