【第30話】レクリエーション2
早乙女さんからコーヒーを貰って一息ついたところで、弁当箱を取り出す。
結局中身はいつもの夕飯の残りをぶち込んだ奴だけど、弁当箱にはラップを先に敷いてある。一応合宿所に戻ってから洗うこともできるけど、念のため先に洗い物をしなくていいように仕込んできた。
「わぁ、おいしそう」
遥さんが俺の弁当を覗き込みながら言った。
早乙女さん以外は親に作ってもらったり、コンビニ弁当だったり、具のないおにぎりだったりとカバンから取り出している。
早乙女さんがごそごそとカバンを漁り取り出したのは・・・カップカレー麺!?蓋を開けて沸かしたお湯を注いでいる。
「おぉ・・・」
「いやー、山頂に来ると食べたくならない?」
どうなんだろう・・・?
あと晩御飯もカレーだが、それでいいんだろうか。
「カレーは飲み物」
そ、そう・・・
*
無事に下山してきて、次のスケジュールまで少し時間があったから早乙女班と別れてから俺達は男子部屋に集まってトランプを始めた。
「そういや、今日ご飯食べた後に野外広場に集合だって」
「何するんだろうな」
俺は遥さんからカードを一枚引く。手札と見比べてセットが一組できたから中央の山に捨てる。
次の渋谷さんにカードを引いてもらう。
「野外広場に木組みがあるの昼間に見えましたよ」
揃わなかったのか渋谷さんはそのまま次のツバサちゃんにカードを引いてもらって、ツバサちゃんの顔が崩れた。
あっ、ババがツバサちゃんに移ったな。
「うぅ・・・木組みということは、定番としてはキャンプファイヤーですかね」
引けっ引けっと念がこっちにも伝わってくるツバサちゃんを遥さんが苦笑しながらわざとババらしき場所に指を這わせてから、さっと別のカードを取る。
ぐぬぬとツバサちゃんが手札を睨みつけ、遥さんはセットが揃って更に手札を減らす。
「かなー、流石にフォークダンスなんてしないだろうし、火を囲んで何するんだろう」
既に遥さんの中ではキャンプファイヤー確定みたいだ。
遥さんから一枚カードを引く。
「さぁ。火を囲むならこんなのあるけど」
俺は揃った組を捨ててから、後ろにあったカバンからマシュマロとクッキーの袋を取り出す。
「焼きマシュマロですか」
「そそ、本当はカレーを作るかまどで一緒にしようかとね」
出来なかったらそのまま食べるつもりで持ってきていたけど。
渋谷さんがカードを引いて、
「あがりっ」
揃ったのか2枚捨てると手札が一枚になり、ツバサちゃんが最後の一枚を引いて上がった。
ツバサちゃんも揃ったのか、2枚捨てて、2枚残る。
「こっちっ!!」
遥さんはツバサちゃんの顔を確認しながらカードを取り、揃ったのか2枚捨てて、残り一枚。
俺が引いて遥さんの上がり、そして俺も揃ってあがり。
「ツバサちゃん顔分かり易すぎっ!!」
「えっ!?そんなに分かりやすかったですか!?」
「ジョーカーを選ぼうとすると露骨に嬉しそうな顔になるんだもん!!」
ころころ顔が変わって面白かった!!と遥さんは満足気味だ。よくコスプレのしている役になりきって表情作ってることがあるから、ポーカーフェイスも得意かと思ったらそうじゃなかったらしい。
さてと、時間も時間だし、晩御飯の準備始めましょうかね。マシュマロはキャンプファイヤーだったときのためにおいておこう。
*
「事前に伝達しておいたようにカレーを作って班で食べて下さい」
教師から材料を貰って割り当てられた作業場で適当に下ごしらえをする。
「えっと、私は何したらいい?」
「遥さんはお米をお願いします」
怪我するから、お米でも研いでおいて下さい。
今日はピーラーもないし包丁しか無いから、じゃがいもの皮むきとか包丁でしないといけない。遥さんには正直無理。じゃがいもが赤く染まってしまう。
「えーと、僕達は何をすればいいですか」
早っと、俺の準備を見ている一年生組が聞いてきた。
「包丁使って怪我しない人は?」
「「普通は怪我しませんよっ!?」」
ツバサちゃんと渋谷さんが一緒に突っ込んできた。
うん。普通は自分の指が切られないかぐらいは確認しながら包丁を使うよね。
でも人によっては自分の指が刃の下にないかを全く確認しない人もいるんだよね。
「そんな人いるんですか!?」
「ドMの人ですか!?」
「ぐぅっ・・・」
言葉の刃が遥さんを刺す。遥さんの心臓を連続で槍が突き刺さったのが見えるっ。
「まぁそんな人はどうでもいいから、包丁使って怪我しないなら皮剥いた野菜を適当な大きさに切って下さい」
「「はーい」」
*
「かまどでご飯を炊くのは初めてだ」
遥さんに洗ってもらったお米を飯盒に入れて、合宿所の職員が見てくれている飯盒のかまどに持っていく。
失敗されるともったいないからと職員が管理しながら、生徒に手順とか教えてくれるらしい。
カレーの方は後は煮込むだけだから、遥さんに絶対に火傷には気をつけてと言い含めて渋谷さんと見てもらうことにした。
火については各調理場にある小型の竈だ。隣の調理場を使っていた早乙女さんに色々用意してもらった。
早乙女さんは自分の班の料理は放り出して、担当の職員と何やらアウトドア系の話をして盛り上がってた。
ま、まぁ前のあのバレンタインの惨状を知る身としては、そっちの方が安心できるけど。
「へぇ、あんなに黒くなるんですね」
「新聞紙でこすったら煤はある程度は落ちるらしいよ」
前テレビでやってたのを見たことがある。一緒にやってきたツバサちゃんと職員の説明を聞きながら自分たちでセットする。
あとは職員の人におまかせだ。
*
「あー自然の中で食べるカレーって美味しい」
「いつも食べてるカレーと違うみたい」
「うまいっ」
出来たカレーの感想としては、外で食べたことも相まって、とても美味しく感じた。