【第3話】答え合わせ
リン=鈴木君というのは、多分間違いないと思う。
文化祭が終わってからリンとも何度かイベント行ったり遊びに行ったりしたときに、それとなく文化祭いつだった?と聞いてみるとうちの文化祭と日付がドンピシャ。
さらに文化祭で鈴木君をしっかり見て見つけておいた膝の小さなほくろ。
これもリンにもあることが確認できた。
普段はズボンに隠れて見えない膝のほくろも膝丈スカートなら見える。
でもなぁ・・・
『ん?時間ない。描く』
「はいっ」
遊びすぎてイベントで出すつもりだった原稿が出来ておらずリンに手伝ってもらっている時に問いただすような内容じゃないよなぁ・・・。
リンも描ける人で助かった。
今はパソコンで通話アプリを使って会話してる。何気に液タブを持っていたリンは結構上手い。
SNSのアイコンも自分で描いたらしい。
「当日は来れないんだっけ?」
『ん。どうしてもバイト休めない』
バイトは仕方ないな。
「欲しいのがあったら買ってきてあげる」
『ん。頼んだ』
よし、印刷所の最終は明日の朝!!
今の速度なら間に合う!!
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「おはようございます」
わたしはもう来慣れたスタジオに挨拶しながら入る。
「あっリンちゃんおはー」
「おはー」
元気ですね。伊佐美さん。
伊佐美さんは人気声優の一人だ。
まぁ伊佐美さんに気安く話しかけられるわたしも声優なわけで。
「そういやあの映画のチケットで一緒に行った男の子とは今も仲ええん?」
地元が関西の伊佐美さんは演じていないときはちょろっと関西弁が出る。
あの映画のチケットとは遥斗を誘った奴だ。
あのときのドタキャンしたのは伊佐美さんだ。どうにも急遽撮り直しが入ったらしい。
「仲はいい」
「何々?リンちゃんの彼氏の話ー?」
また別の人が話に混じってくる。
こっちも有名声優の鈴木 麻美。
ぶっちゃけわたしの実の姉だ。
わたしを声優に誘ったのも姉だ。色んな声出せるしお願いーと頼まれたのが初めで、給料も他のバイトに比べていいから続けてる。
「わたしの性別知ってるくせに何を」
このスタジオにいる全員わたしが男だって知ってるくせになんで彼氏ってなるんだろうか。
「あー・・・リンちゃん男(笑)なんやったね」
ちゃんと男ですからねっ!!
担当している声が女の子の声だからリンで来てるだけで!!
ーーーブブッ
スマホが震える。
開いて確認すると遥斗から任務完了とスタンプが来ていた。
グッジョブのスタンプを送り返した。
って、ほら見て奥さんとか二人でしないっ!!
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なんかリンと合わないイベントって久しぶりな気がする。
リンに頼まれた本は手に入れたし、新刊も間に合って順調に頒布出来ている。
「あれ?今日は彼女さん居ないんですか?」
いつも売り子を頼んでいる子が聞いてきた。
「彼女ってリンの事?」
「はいっリンさんです」
今日はバイトで来れないって。と伝えて・・・ん?・・・
「リンは彼女じゃないからな!!」
付き合ってない!!
なんかすんなり彼女=リンって納得しかけたけど違うっ!!
「またまた~すごく仲いいじゃないですか~本当は付き合っていたり?」
仲はいいけど、恋愛感情はない・・・はず?リンといてほっとする気持ちは恋愛感情ではないと思うんだが。
何ていうんだろうか。同類意識?
「気を張って気の合わない人といるより、気の合う人と一緒に居たほうがいいですよ」
売り子のしみじみと実感のこもった言葉が頭の中に残った。
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12月25日平日(※平日)に遥斗からイベントで集めた本渡すから集まろうと連絡が来て、待ち合わせ場所のコーヒー店で一人ラテを飲む。
あぁ、周りカップルだらけだ。
いつもの待ち合わせ場所がここだから流れで待ち合わせにしたけど、やっぱりカップルが多い。
あぁ、いいなぁ。
「おまたせ」
遥斗が紙袋とコーヒー店のコーヒーを手にわたしの横の席に座った。
ボックス席はカップルで一杯でカウンターしか空いてなかった。
「ん」
小さく手を上げて返事をして、ラテを混ぜる。
まぁ飲み終わるまでは移動しないし、ゆっくりしよう。
「この後さ、ネームに付き合ってもらっていいか?」
年末の冬の祭典は遥斗はスペースが取れなかったらしく一般参加でもう来年の新刊の準備を始めるとのこと。
「ん。おーけー」
どうせ今日は予定はないし。
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ネーム切りたいというのは半分は本気だが、本当の目的は別のところにある。
今日、リンの正体を聞く。
本当にリン=鈴木君なのかとやもやしてしまっているこの気持ちに終止符を打ちたい。
「リン」
「ん?」
俺が呼びかけるとリンは振り向きながら頭を傾けた。
口数少ないクール系の彼女だが、こういった時々に見せる仕草がとても可愛い。
振り向く時にセミロングの髪がふわりと舞うのも可愛い。
本当に鈴木君?とほぼ確信している気持ちがブレる。
「いや、いいや」
ん?と頭上にハテナを浮かべるリンも可愛い。
リンを連れて店を出て、カラオケに入る。
ドリンクバーからドリンクを持ってきて、カバンに入れてあったノートとペンを取り出す。
聞き出し方は、ストーリー仕立てでと思って今までの俺たちの出会いから俺・・・私が気がついて今までのことを纏めてきた。
これは昨日深夜までかかって準備した奴だ。
「えーとじゃぁ次のイベントで出す本について会議したいと思います」
リンが控えめにパチパチと手を叩いてくれた。
「今度はズバリっ男装女子×女装男子の本にしようと思いますっ!!」
「いつもの」
ここまではいつもと同じ。
基本的に私はNLの異性装物を描くのが好きだ。
「で、今回はイベント会場でばったり会い、よくつるむようになった男装女子と女装男子が実はクラスメイトだったってところから始めますっ!!
男装女子をA。女装男子をBとします。
ちなみにまだ二人は相手が男装、女装とは気がついていません!!」
うんうんとリンが頷いてくれる。
よくある展開だからね。王道は大事。
「発覚イベントとしては高校の文化祭での男女逆転喫茶店。つまりは男装・女装喫茶店の打ち合わせの時!!」
うん?とリンが首をかしげる。
自分が文化祭でやっていたことだからね。少し気にかかるよね。
「二人が声は変えていたが、いつもの声じゃない声でいたため他人の空似で一旦は済ませる。
でも、Bがそのままの姿で休憩となった時にBが道を聞かれていつもの女声で話しているところを偶然Aが聞いてしまい。
AがBがよくつるんでいるBだと気がついてしまうっ!!」
リンの顔が青くなってきた。
ごめん。可愛い顔を蒼白にさせている自覚はある。
自分の行動を辿ったようなプロットだからね。
そして私の顔を見て思い出したかのように目を見開いた。
ここでリンが私に気がついていなかったことを確信する。
「そこで次にあった時にBは気がついていないふりをしながらBを観察。
やはり女子にしか見えないB。Aの確信は揺らぐ。
ただスカート姿でしか見えない膝にクラスメイトの男子Bと同じほくろがあることで再度確信するっ!!」
とここで持ってきたコーラを飲む。
バッとリンがスカートの裾を伸ばしている。
もうその動きをした時点で自白しているということは気がついているのだろうか。
「で、何か質問ある?」
青い顔をしたリンに聞いてみる。
「うぐっ・・・気がついてる?」
「まぁね。鈴木佑樹君で合ってる?」
私は地声で、飯島 遥としてリンに向き直った。
リンは肩を落としてコクリと頷いた。
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遥斗と次のイベントで出す本のプロット打ち合わせにカラオケに入って、
プロットが完全にわたし・・・いや、俺に被っていることに気がついて顔を青くしていると遥斗、いや飯島遥さんに本名を言われた。
文化祭でそっくりだなぁとは思っていたが、まさか本物だとは思わなかった。
外部の人に道を聞かれて驚かれないようにいつものリンの声で答えてたのを聞かれていたとは全く知らなかった。
あぁ。終わった。俺の学校生活も終わった。
女装趣味の変態として全学年に知れ渡るんだ・・・
「別に誰にも言わないよ」
私だってこんなんだし。と言うけど、男装と女装じゃ女装のほうがリスク高いんですが・・・
「でも、ここまでのクォリティーだったら誰も文句言わないんじゃない?」
「まぁ誰にも否定されたことはないけど・・・」
ここはあえて地声で返す。
家族公認、バイト先公認といった感じだが、クラスメイトがそうだとは限らない。
「で、さ!!お願いがあるんだけど!!」
で、出来ることなら・・・
「別に断ってても誰にも言わないからね!!本当だからね!!
今のこのヲタ友っていう関係は嫌いじゃないから壊したくないし!!」
結構力説された。
本当に本当だから。断ったとしても誰にも言わないから私のヲタ友のままで居てくださいっと頭を下げられた。
「俺の彼女になってください!!」
「はぁ!?」
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「はぁ!?」
まぁそういう反応になるよね。
本当は男だと知っていてでも彼女になってと言われるんだから。
しかも相手は男装女子に。
「もっと言います。私の彼氏になってください!!」
「ちょっ、さっきと逆になってるんだけど!?」
ぷっ。何故か慌てて女声が出ている鈴木君につい笑ってしまった。
「私のどっちの姿でも恋人になってくれませんか?」
昨日、どうやってリンに聞こうかと考えた時に、あのイベントで売り子に言われた気の合う人と居たほうがいいという言葉を思い出した。
私が告白した理由はただ一つ。一緒に居て落ち着ける。
クリスマスという時期に当てられたというのもあるかもしれない。
恋愛感情というのとはまた違うかもしれないでも、私はリンと鈴木君と一緒にこれからも居たい。
短編として書いたのはここまでです。
時間が取れれば続きも書いていきたいと思います。