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アナタの本当の姿は?  作者: kame
大学4年生
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【第299話】卒業

「祐樹ここどうしたらいいの!?」

「祐樹君私袴の着付け分からないからやってくれる?」

「祐樹は袴の着付けもできるのか」

「なんでもできるな祐樹君は」


 いや、俺は袴の着付けは分からない。


 その日は朝からうちはバタバタしていた。いや、バタバタしてるのは女性陣だけで、男性陣はいたって落ち着いて俺が女性陣に呼ばれて色々準備しているのをコーヒーを飲みながら時間をつぶしている。というか父親達は何をしたらいいか分かっていない感じだ。

 今俺達の住むマンションに来ているのは、鈴木家と飯島家が集まっている。まぁ姉さんはいないけど、梨花ちゃんはいる。

 遥さんは袴のレンタルを用意しているし、まぁ俺は普通にスーツだ。


「なんでここで着せようとしてるのか。買った店で着付けもしてくれるって言ってるんだからそっちに任せたらいいんですよ」


 前撮り用にレンタルしたまま持っている袴を何故か家で母親達がノリノリで着付けようとしてできなくて悩んでる。出来ないならやらなかったらいいのに。袴をレンタルした所で着付けの予約もしてあるし。髪のセットもそこでしてくれる予定になっている。先に一度着たところを見てみたいとか言ってるけど誰も着付け出来ないから専門家に任せた方がいい。


「あと俺も袴の着方なんか知らないから店でやってもらったほうがいいですよ」


 上の着物なら分かるんだけど、袴はどうやるんだろうか?


「じゃぁ移動しましょう!!」

「えっ、ちょっとお母さんまだ朝ご飯食べてないよ!?」

「ほら、早く食べていくわよ」


 遥さんを急かす遥さんの母。いやまぁ娘の晴れ姿みたいのは分かるけど、着付けの時間も決まってるし少し落ち着きませんか。


「祐樹ータオルってどこにおいてあったっけー!!」


 母さんが俺を呼ぶ。はいはい。



 *



「祐樹はあっちじゃないのか?」


 と父さんに遥さんが持っていく為に色々準備しているのを見ながら聞いてくる。


「大学は一応男でずっと通ったからな」


 少なくとも事務所みたいに男子か女子か分からない感じにはなっていない。遥さんと一緒に卒業式の服装はどんなのがいいかは見たけど、自分が着るなんて微塵も考えてはいない。


「ほら金は出してやるから今からでもそっちで。レンタルとかあったよな?」

「何息子を女装させて卒業式に出させようとしてるんだよ」


 流石に学校行事は素の姿で・・・文化祭以外は出てるから。と父さんに説明する。少なくとも授業には女装して出たりはしてない。それに当日にレンタルできると思わないほうがいい。


「前オープンキャンパスでしてなかったっけ?」


 話が聞こえていたらしい遥さんが言ってくる。そういやオープンキャンパスでやったな。あの時は学長にも知られたような気がする。


「じゃぁあっちでも大丈夫じゃ?」

「流石にダメだから・・・」


 結構自由な卒業式ではあるから着れなくはないけど、一度しかない時に流石にあっちの姿はしないからな。


「じゃぁ後で私の着る?」

「それいいな」


 後日返却だからあと数日はうちにあるけど。と遥さんが提案すると父さんが賛同する。何故うちの親は息子を女装させようとしてるんだろうか。まぁ式に出ないなら着るけどさ。袴の着方は調べておかないといけないか。遥さんに覚えてきてもらおう。


「祐樹準備できたから着付け場所まで送って」


 何故かうちの母さんが張り切っているんだろうか。



 *



「あー、朝から騒がしかった」

「あはは。祐樹のお父さん、お母さんってあっちの姿好きだよね」

「嫌われるよりはいいけどさ」


 流石に卒業式にあっちはないなぁ。と着付けと髪のセットが終わった遥さんと手を繋いで大学の構内を集合場所となっている講義室に向かって移動する。周りにも俺たちと同じようなスーツや着物、袴といった晴れ着を着た卒業生が歩いている。


「私達も卒業なんだね」

「だな」


 さっきまで家でばたばたしていたが、大学に来て今日卒業するという実感がわいてきた。


「あっち、もう泣いてるんだけど、早くない?」

「卒業式中に泣くものじゃない?」

「だね」


 と話している間に遥さんと別れる場所に来た。まぁ俺ら学部違うから集合場所も違う。


「じゃぁ、また」

「おぅ」


 さてと、早く卒業式終わらないかな。



 *



「鈴木はイケメン姿じゃないのか」

「何を期待してたんだ」


 集合場所で赤崎が俺のほうにやってきて開口一番にそう言ってきた。あのイケメンメイクは正直俺は好きじゃない。なんだか堅苦しいし。


「最後はあっちで決めてくると賭けしてたんだがな」

「誰とだよ」


 俺の姿で賭けをしないでもらいたい。


「じゃぁ全員そろったようなので講堂へ移動します」


 大津先生が人数を数えて移動を宣言した。さてと、俺も移動するかな。



 *



「はー・・・」


 式が終わって講堂から出ると俺は息を吐く。大学の卒業式では意外と泣く人はいなかった。そこまで苦労してる人がいる感じもしなかったし・・・


「あっ木村君どうなったんだ・・・?」


 結局卒業できたんだろうか。今日はまだ木村君の姿を見ていないから卒業出来たか知らない。事務所でも木村君の話は内定だしたよという話ぐらいしかしてないから、卒業出来たかは知らないんだよなぁ。言ってなかったって事は、卒業出来てるんだと思うけど。


「あっ、祐樹いたー」


 遥さんの声が聞こえてきた。後ろか。と俺は振り返ると、遥さんはもちろんの事、登坂さんや大崎さん、あと卒業できたか気になっていた木村君がいた。木村君をみた感じ卒業できたみたいだ。良かった。女子は皆袴姿だ。


「ねぇねぇこの後さ、皆で写真撮って貰おうって話してるんだけど、祐樹もどう?」

「おーけー」


 もちろん行く。遥さんと一緒に撮りたいのもあるし、大学で出来た友達とも記念に写真は残しておきたい。あとカメラも持ってきてるから撮っておきたい。半分ぐらいは今後の資料の為ではあるんだけど。


「木村君は卒業出来たんだな」

「あ、あははギッリギリだったけど、なんとか」


 良かった。良かった。これで事務所の次期エースが入社できた。


「じゃぁ行こ?」


 遥さんは俺の手を握った。

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