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アナタの本当の姿は?  作者: kame
大学4年生
287/339

【第287話】いい夫婦の日

「ねーねー今日、いい夫婦の日だけど、二人は何かするの?」


 登坂さんが俺達に声をかけてきた。いい夫婦の日。あぁ、11月22日か今日。


「何にも予定してないよね?」

「今のところは何も考えてないかな」


 晩御飯は帰りにスーパーに寄って考えるし。というかいい夫婦の日だからと言って、何かする必要はあるだろうか。


「そもそも、私達まだ夫婦じゃないんだけど」


 婚姻届はまだ出してないよーと、遥さんが言う。まだ出してないもんな。一緒に住んではいるけど、まだ夫婦じゃない。


「私らの中じゃ鈴木夫妻なんだけどね」


 実は一緒にいた大崎さんがぽつりと言ってくる。


「まぁ、大学卒業までには、届出すんじゃない?」


 正直私はいつでもウェルカムだけどね。と遥さんが俺に向かって言ってくる。うん。まぁ準備するけど、もうちょっと待ってほしいかなぁ・・・



 *



「いい夫婦の日だからってわけじゃないけど、どこか晩御飯食べに行く?」

「いいけど、どこに?」


 大学から帰る途中で遥さんが俺に聞いていた。晩御飯の用意もしてないから、食べに行くなら食べに行くで全然構わないけど、どこいくんだ?


「ここ。ちょっと前からあるのは知ってたんだけど、行かない?」


 そういって遥さんはブックマークでもしていたのか、スマホを少しいじって俺に見せてきた。遥さんの行きたいっていっているのはアニメのコラボカフェと言われるものだ。俺は推しがいるほど熱心に見ているわけじゃないけど、遥さんはガチはまりしているのも知っている。まぁ遥さんの今の推しはSNSにアップされる絵から分かるんだけど。


「じゃぁ行く?」

「いいの?」

「いいよ」


 予定がない限りは全然行けるからな。別に俺、出不精ってわけでもないし。


「荷物置いたら行こうか」

「私このコースター欲しい!!」

「遥さんの推しってこれだったよな?」

「そうそう!!」


 ランダムらしいけど、出てほしいなーと言っている遥さんを見て少し笑みがこぼれる。何と言うかこうテンションあがった遥さんを見るのはいつもの感じとは違って見ているだけで楽しい。いつもはいつもで落ち着くんだけどな。


「何笑ってんの?」

「いやー、なんでもない」

「えー」


 教えてよー。という遥さんを見ながら、また笑みがこぼれる。



 *



「あー食べた食べた」


 遥さんがお腹をさすりながら言った。俺も結構食べて満足している。


「一発で推し出てよかったー」


 と遥さんはコースターを手ににやにやとしている。まぁ楽しそうでよかった。俺も結構楽しんでるけど、ガチはまりしている人はもっと楽しめるんだろう。いや、むしろ推し出ろばかり考えていて楽しんでない可能性も・・・? いや、考えるのはやめよう。

 まぁ遥さんは一回で出たからよかったよかった。


「今回のコラボはあたりかなー」

「今までそんな外れってあったっけ?」


 何度かコラボカフェは来てるけど、外れっていうのはなかったと思うんだけど。


「内容の割に高いっていうのはあるよね」

「あー」


 まだ、ここは値段も良心的だし、平日だからっていうのもあるとは思うけど、落ち着いた雰囲気で周りが騒がしいといった感じでもない。


「まだ今度コラボしてないときにも来てみる?」

「そうだな」


 おいしいし、コラボなしで来てもいいかもしれない。コラボいつまでだっけ。



 *



「ん? ここ絵描いていいんだ」


 遥さんが壁を見て言った。壁は落書きスペースになっていて、すでにいくつかの絵が描かれている。皆一発描きと考えるとうまいなぁ・・・


「描く?」

「描く描く!!」


 折角なんだから描いとかなきゃ。と遥さんは近くに置かれていたペンを手に取った。俺も横でデフォルメ絵でも描こうかな。



 *



「んー、なんかうまく手が描ける気がしない」


 俺が一体のデフォルメ絵を描き終わって、少しお手洗いと用事を終わらせて帰ってきたら遥さんは二人分の全身絵を手以外、ほぼ描き終わっていた。相変わらずの速筆だよなぁ。


「祐樹、ちょっと手を貸して」

「はい」


 俺が遥さんに手を差し出すと、遥さんが握って指を絡ませてくる。そしていわゆる恋人繋ぎという形になったところで、


「このままキープ!!」


 この角度!! と遥さんは片手を俺と絡ませたままペンを走らせる。するとたちまちそこに手が描かれていく。Undo欲しい!! と言いながらも遥さんの手は止まらない。


「よし!! 完成!! 完璧とは言えないけど、下書きなしならこんなもんんじゃないかな」


 うまくて他の絵から浮いてるんだけどな。


「えっと、じゃぁ会計を」


 遥さんが、カバンの中から財布を取り出そうとするのを握ったままの手を引いて止める。


「えっ、何?」

「もう払ってるから」


 そういって遥さんの手を握ったまま店を出た。



 *



「私も出すよ?」

「別にいいよ」


 家までの道を二人で手をつなぎながら歩いていると遥さんがさっきのカフェのお金を出そうとしているのを止める。


「そんな高くないし」


 楽しそうな遥さんを見れて満足したからな。と言っておく。まだ言えないけど、最近は俺が指輪探しのために家をあけることが多いから、ちょっとだけでも一緒にいる時間を増やせただけで全然いい。


「えーでも」

「じゃぁ今度出してくれたらいいから」

「んー、分かった」


 その時は多分リンと遥斗っていう組み合わせだと思うけど。多分その時もこの握る手は変わらないんだろうなと思いながら、家までの道を二人で歩いた。

あの予定までに一つイベントあるなーというわけで、二人でのデートでした。

平和な二人が一番です。

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