【第280話】絵里奈
「うっわっ、マジで祐樹!?」
電話のあとに来たメッセージで貰った場所に遥さんと一緒に来たら、眼鏡とウィッグで変装した絵里奈に興奮気味に言われた。
絵里奈の隣では龍ケ崎さんがわたしを見て興奮している絵里奈を見て笑っている。龍ケ崎さんはわたしの姿を多分大学で何度も見てますからね。驚きはしないんでしょう。ちなみに待ち合わせ場所は有名なコーヒー屋の奥の方のボックス席だ。
「まぁわたしの姿はいいとして、この辺なんか囲まれてない?」
なんだかこの辺に居ることがおかしいような人達がこの辺にうろうろとしていた。学生が多く住む街なのに、スーツ姿の人たちが多くうろうろとしているし、何かを探しているような感じだった。なんか絵里奈達と関係ありそうな気がしてならないんですよね。
「声も可愛いし!!」
ねぇ、わたしの話聞いてた? 一応わたし姿変えている間は普通に声をアテレコ中以外はその姿にあったものにしてますけど、可愛い声にはしているつもりはないです。
「あー、きっとその人達週刊誌の記者ですね」
わたしの事で盛り上がる絵里奈ではなく龍ケ崎さんが答えてくれた。
「「週刊誌?」」
わたしと遥さんが聞き返す。なぜに週刊誌の記者が?
「今あたし追いかけられてるのよね」
絵里奈がポリポリと頬を掻きながら言った。
「何した?」
追いかけられるって何かしないと追いかけられないだろ。
「ちょっーと今つきあってる人が有名人でねー」
人の恋愛ぐらい自由にさせてよ。と絵里奈はズゴーとカフェオレを飲み干す。恋愛を自由にっていうのは同意する。
「お相手は?」
「この人」
流石に名前はここでは言えないのか、スマホの画面をわたし達の方に見せてくれる。そこに映るのは、絵里奈と一人のイケメンな男性。
「ん?」「あっ」
「まぁ知ってるよね」
知ってるというか・・・
「さっきまで一緒にいたからねー」
「へっ!?」
なんで!? と絵里奈がこっちを驚いた顔で見てくる。絵里奈が見せてきたスマホの画面には、わたしがさっきまで一緒にいたKB18の大藪さんが映っていた。
「あー、あの人達まだ大学いたんですか?」
「なんでか残ってたねぇー、龍ヶ崎さんは挨拶しなくてよかったの?」
「僕が会うなんて恐れ多い!!」
なんで皆そんなに会うのに怖がるんだろう?
*
「なるほど、付き合っているって言うことが漏れて、相手である絵里奈も追いかけられているということか」
の割に大学付近には居なかった気がしますが。
「大学はなんかどこからかの圧力で近寄るのが禁止されてたみたいですよ」
知り合いの記者が言ってました。と龍ケ崎さん。龍ケ崎さんは記者に伝手があるんですね。
というか、大藪さんが早くから大学にいた理由って安全地帯ということと、メンバーと一緒に居づらかったからじゃないですかね。あそこのグループ、恋愛禁止なのでリーダーである大藪さんがルールを破っていますし。色々率先して調整とかしてたんじゃないかな・・・うん。なんか、いろいろ今日の大藪さんの行動に合点がいった。
「そこでなんだけど、あたしに変装教えて?」
今のままじゃ普通に生活できないの。と絵里奈が言ってくる。
「それは、いいけど、なんでわたしがメイクできるって思ったの?」
「みすずがそれなら鈴木先輩に聞けばいいよーって言うから」
「確か先輩のメイド喫茶って先輩がメイクしてるんですよね?」
「まー、そうだけど」
確かに男はわたしがメイクしてますけどね。
「お願いっ!!」
はいはい。仲のいいイトコですし、メイク教えるぐらい全然かまいませんよ。
✳
「これは・・・」
「分かっていましたけど、鈴木先輩おかしくないですか?」
場所を移動して、龍ヶ崎さんの家で絵里奈にメイクする。メイク道具は絵里奈が普段持っている奴で十分。女子にする女子のメイクですからね。
龍ケ崎さんの家にくるまでに記者にバレないように絵里奈は帽子を目深に被ってマスクをしていたけど、むしろその方が怪しく思えるのはわたしだけだろうか。まぁ無事に付いたんだけど。
「ここもうちょっと変えた方が印象変わらない?」
「こう?」
わたしは遥さんと話しながら絵里奈にさらにメイクをしていく。不自然にならない程度で、絵里奈の特徴を隠しきる。やっぱり、女子にするメイクは女子に聞いた方がいい。
「おぉっこれで絵里奈だとは思われないでしょ」
結構わたしの自信作だ。わたしもここまで特徴が消せるとは思わなかった。
「ただ、これはあたし自分でできないなぁー」
「やっぱり鈴木先輩おかしいですって」
「祐樹のメイク術は本職にも認められてるからねー」
「遥それマジ?」
「マジマジ。知り合いの女優のメイク任されるぐらいには」
「おおっすごっ!! 知り合いの女優って?」
「守山佳織って知ってる?」
「ちょー有名じゃん」
「元クラスメイト」
「マジで!?」
遥さんと絵里奈が盛り上がっている。なんか、メイク中に意気投合してた。
ーーー♪~♪~♪~
ん? メッセージアプリの着信音だ。わたしと遥さんの着信音じゃないし、絵里奈か龍ケ崎さんのだとは思うけど。
「あっ、出ていい?」
「どーぞ」
絵里奈のだったか。
『絵里奈? 今大丈夫か?』
漏れ聞こえてきた声は数時間前までわたしと一緒にいた大藪さんの声だ。というかまだ数時間前なんですよね。ちなみに今の時間はギリギリ日を跨いでいない時間です。
「友達と一緒にいるから長くは無理だけど」
『それって里奈さん?』
「里奈さん? いや、みすずとあたしのイトコとその彼女さんだけど」
そういえば絵里奈にこの姿の名前教えてなかった。
『そうか。じゃぁ今度でいい。またかけるな』
「うん。分かった」
そういって、絵里奈と大藪さんの通話が切れる。
「毎日電話してるの?」
遥さんが聞く。
「んーまぁほぼ毎日かな?」
隠しきれない嬉しそうな声色の絵里奈が答えてくれる。仲がいいことは良い事だ。




