【第261話】温泉旅行5
「お夕食の準備を行ってもよろしいでしょうか?」
「あっ、はーい。お願いしまーす」
仲居さんがやってきて、晩御飯の準備の確認をしてきたから、伊佐美さんが答える。多分こういうのって風呂に行っている間に準備するんだと思うけど、ちょっと俺たちの風呂の時間がずれてたんだと思う。一応夕日が沈むぐらいのときに風呂に行ったから、そこまで変な時間に風呂に行った気はしないんだけど。
横の部屋で準備している仲居さんを見ながら、皆でソシャゲをする。身内以外がいたら話も少なくなるよな。まぁやってるソシャゲは全員一緒だから、今会話するとなったらソシャゲの話題かなぁ。
*
「おぉっうまそうっ」
「私お造りって初めて食べるかも」
「僕は前、ライブの打ち上げで食べましたね」
「俺も食ったことないな」
今日の晩御飯は海鮮と山の幸を使った料理だ。肉も少しだけあるけど、メインはお造りだろう。刺し身も色々ある。本当にこれだけの料理が宿泊費に含まれていると考えたら相当お得に感じる。
「遥さんサーモンいる?」
「貰うー」
遥さんサーモン好きだからな。俺は嫌いじゃないけど絶対食べたいというレベルじゃない。
「じゃぁはい。お返しねー」
と遥さんは俺にブリの刺し身をくれる。俺ブリ好きなんだよな。遥さんとそれ以外にも好きなおかずを交換する。食べに行ったときにはよく交換する。
「うちらもなんか交換するかー?」
「僕たち好きなもの一緒ですよね?」
「せ、せやなー」
伊佐美さんとアカネ君は好物一緒なのか。好物一緒だと御飯作るのも楽だなぁとはたまには思うけど、好物は人それぞれだからな。
「日本酒ありますけど、誰か飲みますか?」
アカネ君が用意されていた日本酒を手に聞いてくる。
「うち飲むー」
「じゃぁ俺も」
伊佐美さんと俺は折角だし飲ませてもらおう。同じように用意されていたお猪口に注いでアカネ君が渡してくれる。
「飯島さんは飲みますか?」
アカネ君は遥さんにも聞く。
「えーと、私ちょっと酒癖悪いからやめとく」
「まーまー、一杯ぐらいなら大丈夫やろ」
そういって伊佐美さんが遥さん用のお猪口に日本酒を注いでいく。どう思う? と行った感じで遥さんが俺の方を見てくる。遥さんお酒飲んだときの記憶ない人だからな・・・まぁ一杯ぐらいなら大丈夫じゃない? ジョッキとかコップじゃなくてお猪口だから、そこまで量は入らないし。と考えてから頷いておく。まぁ酔ったとしても吐いたり騒いだりといった感じじゃないから大丈夫だろう。
「じゃぁ行き渡ったところで、いつも仕事お疲れ様ー、かんぱーい」
「「「かんぱーい」」」
というか乾杯する前に食べてたんだけどな。
*
「んー佑樹」
今回は最初から全ての料理を並べてもらっていた料理が9割方なくなったころ、横に座っていた遥さんが俺にもたれかかってきた。
へ? 遥さん? もしかして酔った? お猪口一杯しか飲んでないし、そのあとはお茶だったんだけど? 飲んでから少ししてから酔いが回ってくるってのはあるから酔うまでのタイムラグは分からなくもないけど・・・
「いや、お猪口一杯やで? 遥ちゃん弱すぎひん?」
「親は飲めない口じゃないんですけど、遥さんは妙に弱いんだよなぁ・・・」
「そうなんですか?」
「飯島家の人たちと食べに行ったことあるけど、両方とも飲んでたから、遺伝的に弱いわけじゃなさそうなんだよな」
へーっと、アカネ君はまた日本酒を一人で飲んでいる。というかアカネ君結構飲める口だな。
デザートである餡蜜をスプーンですくって遥さんの口元に近づけると遥さんの口が開い前にあるスプーンに食らいつく。なんというか小動物っぽくてかわいい。
「なんや、慣れとんな」
「まぁ、何度かあったから・・・」
今日はいつもよりは大人しめだけど。多分飲んだ量が少ないからだと思うけど。
「んーもっと」
ん? あぁ、餡蜜な。もう一すくいして、遥さんの口元に持って行くと遥さんがまたパクついた。食べさせるのは良いけど、スプーンの上の物を食べたらスプーンを返して欲しい。それ俺の食ってたスプーンだから、俺それないと食べられないんだけど・・・遥さんのスプーンは逆方向にあって手が届かないし。
*
「くぅ・・・」
自分の分のデザートを食べていると横から寝息が聞こえてきた。これは遥さん寝たな。
「寝たな」
「寝ましたね」
対面に座っていた伊佐美さんとアカネ君が遥さんを見て言う。
「ちょっと寝かせてきます」
布団は、さっき日本酒を新しく持ってきた仲居さんが遥さんの少し酔った感じを見て横の部屋に敷いてくれた。その時には、ほこりがたつかもしれないのでと気にしてか、部屋を区切る襖を閉めて敷いてくれている。
*
「よっと」
遥さんを布団まで抱えて行って、遥さんを布団に下ろす。ほぼ同じ背格好だけど、意外と持ち上がった。まぁ少ししか持たないけど・・・ほぼ同じ体重を長時間持ち上げる力は俺にはない。
遥さんを布団に下ろして、移動で起きていないのを確認するために遥さんの顔を見てみる。気持ちよさそうに寝てる。リビングで居眠りしているときの顔だ。その様子に移動で起こしてないことに少し安心してから、隣の部屋に戻ろうとすると、
―――キュッ
「・・・いかないで」




