【第231話】文化祭4
「鈴木君はどこ!? カラオケそろそろ始まっちゃうんだけど!?」
コスプレ撮影会会場となっている講義室に遥さんと一緒に戻ってくると、文化祭実行委員の山本さんが来ていて、うちのスタッフに聞いているところに出くわした。そしてちょうど講義室に入ってきたわたしを見て目が合う。二コリと笑っておく。山本さんがわたしのほうに近づいてくる。
「どうかしたんですか?」
声はキャラの声で。別人になりきる。ワタシ、スズキ、チガウ。MCヤリタクナイ。というか結局わたしにMCの話は来てないし!! 当日に言われてもできないですって!!
「鈴木君だろ!? MCお願い!!」
別人になりきったのになぜばれたし。里奈用のメイクだけどキャラに近付けるために少しメイク変えてるんだけど?
「横に飯島さんがいるのに気が付かれないとでも?」
君たちいつも一緒にいるから。と山本さんに言われる。そんなに一緒にいるかなぁ・・・土日はよく一緒に買い物とか仕事のために事務所までドライブとかしてるけど。講義は取ってるのが違うから講義室から違うし。
「授業以外ほとんど一緒だろ」
ほんと仲良いよな。と言われる。まぁ遥さんと一緒にいたら落ち着くって言うのはありますけどね。
「というわけでMCよろしく!!」
何がというわけなのか分からないし!! わたし達の仲から何でそっちに話が行くんですか・・・それになんでわたしなんですか・・・MCなんかほかの人でもいいじゃないですか。
「そりゃあわよくば歌ってもらおうかと」
一人デュエット希望!! とか言われる。
「一人デュエットは無理だから」
同時には違う声出せないですからね!!
*
「はーい!! 皆さんこんにちはー!!」
遥さんがわたしの隣で男装コスプレした状態で女子寄りの男声で声をあげた。張り切って男装しているわけじゃないから、遥さんが女子というのは観客からも分かっていることだろう。それにしても、なんでわたしステージに立っている上に、隣に遥さんがいるんだろうか。一人でデュエット出来ないって言ったら遥さんが誘われてカラオケのステージの裏に山本さんに二人でドナドナされた。仕方ないから、ちょっとだけ準備されていた台本通りやるけどさ。
「なんでそんなに堂々としてるの?」
「腹くくれ。男の子!!」
「「「えっ!?」」」
観客席から声があがる。この観客席から声があがることすら台本に書いていた。もうこの反応は山本さんの中では想定済みの反応だったらしい。
「皆驚くよね? すごいよね? メイドさんだよ?」
「なんか最後は違くない?」
「だってメイドさんだよ? 今度遊びに行くときそっちで行かない?」
「行かない!!」
誰が私服としてメイド服を着るんですかね。ゴスロリなら普段着として着てる人知ってるけど。
「着てほしーなー」
「家の中でならね」
外は勘弁してください。と頭を下げながら地声で言うと少し観客席のほうが盛り上がった。なんで?
「まぁそれはそうと、文化祭運営からさ、余興として歌ってって言われてるんだけど」
何歌う? と遥さんに聞かれる。歌ってとは言われたけど、曲も何も決めてないんですけど。ここからは台本なしだ。まぁ台本ってさっきの冒頭少しだけなんだけど。
「わたしの歌える奴?」
「じゃぁ私の知ってるの歌えるね」
大体知ってるでしょ? と言われてんー・・・流石に知らないものもありますよ? ぴっぴっと遥さんがカラオケの装置を操作していく。
「おっ入ってるじゃん」
そういって選んだのは、VoiceResearcherとしてファーストCDになった曲だ。入ってるんだ。
「これなら歌えるよね?」
「おけ」
イントロが流れ始める。というか普通に流されたけど、結局わたし達ステージで歌うことになっていますよね。もうここまで来たら戻れないからいいですけど・・・
「あーあーあー」
よしっ。と遥さんが柊さんの男声の発声練習をする。そこでまた観客席から感嘆の声が聞こえてくる。
「それじゃ。いっくよー」
「はいはい」
わたしも近藤の声を出すようにしますかね。
*
「二人とも最高!! 流石自分の曲だな!!」
カラオケの時間が終わってステージから降りてくると山本さんに言われた。そういやこの人にはVoiceResearcherっていうのはばれてたんだった。他のスタッフから視線が集まる。知ってるの山本さんだけだっけ。
「あれ? 里奈はともかく私の事も知ってましたっけ?」
「飯島さんは印象違うけど鈴木君がいるって分かったらすぐわかるって」
飯島さんはきっかけがあればわかりやすいから。と山本さんがいう。遥さんは変装してるけど、わかる人はわかるってレベルだから・・・性別変えるぐらいしないと。
「今更変えてもなぁ・・・」
もう男装していない変装姿でジャケットとか出ちゃってますからねぇ・・・
忙しいので、9/9の更新はお休みします




