【第218話】教育実習2
「佑樹さん。なんでうちの学校に?」
放課後帰ろうとしていた俺に梨花ちゃんから声をかけられた。名前はお昼休みに梨花ちゃんにメッセージを送っておいた。というか梨花ちゃんの連絡先はリン用のスマホにしか入ってなかった。
「教育実習でね。言ってなかったっけ?」
「聞いてないです」
んー・・・あぁ、遥さんには言ったけど、梨花ちゃんには言ってないか。遥さんからも話は言ってないと。何度か遥さんには今日実習に来る中学校名と前の挨拶で梨花ちゃんを見たって話をしたと思うんだけど、梨花ちゃんには話してなかったのか。
「あはは。まぁこれから二週間、実習だからよろしく」
「学年違うから関係ないかも」
あぁー、そういやそうか。
流石に受験生の三年生に教育実習生をつけるのはまずいだろうし、多分授業じゃ梨花ちゃんと会わないかな?
「乗ってく?」
家まで送るよ? 俺ら車だし。
「それっていいんだっけ?」
さぁ? ダメかな?
「駄目だと思うから、普通に歩いて帰るよ」
おーけー。
「あっ、でも今度の日曜日ちょっと連れて行ってもらいたいところあるんだけど」
「バイトもないしいいよ」
「やった!!」
どこにいくんだろう?
*
「できるだけ生徒とのプライベートでの接触は避けてください」
昔からの付き合いというのは昨日の様子を見ていて分かっていますが。と前置きされつつ、次の日に中学校に行くと遠藤先生に言われた。
「何故ですか?」
「特定の生徒に贔屓していると言われる場合があるからです」
あー、分からなくもない。でも、華岡先生は・・・あの先生普通に俺と遥さんのことがバレてから完全にプライベートでも更に近づいてきたからな・・・イベントごとによく一緒に話してたし。早乙女さんに至ってはなんか学校で同人誌の受け渡ししてたし。
「プライベートで接触してるって見られなければいいんですよね?」
「グレーですけど、見られなければ・・・はい。ただどこにでも生徒や親御さんたちの目はありますので」
赤崎が遠藤先生に聞いて、にやっと俺の方を見る。
「なら、鈴木なら大丈夫だな」
赤崎が俺の耳元で「里奈」とつぶやいた。あー、確かに姿を変えておけば生徒にも保護者にも気が付かれることはないな。意味が分かってない遠藤先生が頭の上ではてなを浮かべているが、わざわざ言うようなことではないし、言わないけど。
*
「~であるから、この公式を使うことで、求めることが出来るようになります」
教壇で遠藤先生が数学の授業をしているのを後ろの方で見学しながら、躓いていそうな子にちょっと声をかけてみる。学校で塾並みの教育を要望する人もいると聞いたことがあるけど、学力の違う30人相手に一人で授業をするのでは当たり前だけど、塾並みの教育なんて出来ない。出来るものならやってみたらいい。
後ろから移動していると、俺達が近付いてくるのを感じ取ったのかガタッと動くのが数人。スマホを弄っていた感じじゃないから落書きでもしてたか?
「じゃぁ、ここの問題は宿題とします」
と遠藤先生が教科書の一部の問題を宿題としたところでチャイムが鳴った。時間調整完璧だな。
*
――パサッ
実習の一環として授業を教科の担当の先生に変わって赤崎がやっていると、ルーズリーフの一枚が教室の床に落ちた。音の出所は窓際の丁度真ん中ぐらい。
丁度、内容に躓いていた子が居たから、近くにいた俺が拾う。おぉう・・・なんともまぁ中学校の頃からどぎつい落書きしてるなぁ。絵は上手い。でも、内容ががっつりBLっていう。というか、この内容だとR指定されそう。
「見ました?」
「ほどほどにな」
別に俺は耐性あるから学校で描くなよぐらいしか思わないけど、拒絶反応ある人もいるから注意しろよ。
*
「レポート何書くよ?」
今日の学校での実習が終わり、家に帰ってから客室に泊まっている赤崎が俺の部屋にやってきた。赤崎が泊まるというのは決まっていたから化粧品とか服は姉さんの部屋に移動させている。まぁほとんどは大学の方の家においてあるんだけど。そういえば、遥さん生活できてるかな? 一応毎日チャットはしてるから、生きているのは確認できてるけど。
「とりあえずやったことでも書けばいいんじゃね?」
というか俺はそれで書いてる。早めに出来ることはやっておかないと。
土曜日は仕事だし、日曜日は梨花ちゃんと出かける用事がある。梨花ちゃんの用事は行ってみたいオンリーイベントがあるとのこと。両親が仕事で移動手段が電車しかなくて、でも、ちょっと遠いといったところでいい足がいたって感じ。まぁいいんだけど。俺も日曜日は暇だし。梨花ちゃんとはリンとして行こうかな。




