表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アナタの本当の姿は?  作者: kame
大学3年生
213/339

【第213話】夏の祭典

「今日も暑いなー」


 わたし達と一緒に歩く早乙女さんが、突き刺さるような直射日光を手で遮りながら呟いた。本当に暑い。

 わたしは少し大きめのツバの麦わら帽子で日を遮ってるけど、日焼け止めを塗っている腕とスカートから出ている足に日が突き刺さってくるのが分かる。地面も朝から焼けているのか、靴底からも暑さを感じる。動きやすいようにスニーカーなんだけど・・・遥斗もスポーツキャップを被っているけど暑そうだ。半パンなだけマシな気がするけど。わたしが素の時は長ズボンだから半パンにしたときとの差はよく分かる。


「二人共ウィッグで暑くないのか?」

「暑いよ? でも慣れたかなぁー」

「夏には夏のウィッグがある」


 今年の夏のわたしはウィッグじゃなくてエクステだけど。わたし素でも髪はもさいって言われるぐらいには伸ばしてるから実は色さえ合えばエクステでもリンになれる。元々リンと素の髪の色は一緒だから違和感はないはず。遥さんや母さん、姉さんにも確認してもらったけど、いつもと変わらないって言われたし。今までは通気性の良い夏用ウィッグだったけど、今年は異常な暑さだったからエクステにしてみた。これでほんの少し熱中症対策になるかな。


「炎天下の下並んでる人には申し訳ないけど、サーチケで入ろうか」


 そうですね。すみませんが、エアコンの効いている先に会場に入りますか。まぁ効いているのは開場するまでなんですけどね・・・



 *



 遥斗と早乙女さんとで設営をして、去年と同じようにわたしはクーラーボックスの上に座る。


「今年早乙女さんはサークル参加しないんだっけ?」

「委託はしたけどサークル参加はしてないな。サークル申し込み忘れたからな」


 そんなに自信満々に言わなくても・・・というか申し込み忘れたんですね・・・


「だってあたし、一人でサークル参加したことなくって気がついたら申込み期限過ぎてたんだよ」


 いつも合同で出すときに申し込んでくれる人が仕事で無理だったみたいでな。今回は合同じゃなくてバラバラで参加ってことになったんだよ。と早乙女さんは説明してくれる。


「言ってくれれば、ここで委託してもいいよ?」

「それは考えたんだけど、やっぱり音楽は音楽のサークルで頒布してもらったほうがいいじゃん?」

「それもそっか」


 まぁ確かに。『ブレンド』の本は音楽とは全く関係のない内容ですからね。



 *



「ん? 先生?」


 開場してからのラッシュが終わってブースを遥斗と早乙女さんにまかせてわたしは買い物に出た。そこで華岡先生を見つけた。まぁカタログで同じ日というのは知ってたけど。


「あっリンちゃん。おは」

「おは」


 挨拶してから先生のブースに並んでいる本をチェック。


「全年齢?」

「そ」

「珍しい」


 いつもR18なのに。といったわたしの視線から読み取ったのか先生は頬を掻く。


「うちの生徒がサークル参加してるのよ」


 だからR18は今回は封印。と先生は言うけど、先生わたし達が参加していると知ってからも普通にR18描いてたと思うんですけど。あと、変装しているんですから大丈夫じゃないですかね? 昔ならともかく今ならそう簡単にはばれないと思いますけど。


「今回はやばいのよ・・・リンちゃん達は頼んだら黙っていてくれるでしょ?」


 まぁわたしたち比較的口は固いと思いますけどね。


「今回の子は口が軽いのよ・・・学校でも全開だし・・・」


 それなのに無駄にコミュ力高いから広まる速度が半端ない。と華岡先生は顔を押さえた。あー、それは面倒くさい。


「R18は通販にしてるから・・・」


 描いてはいるんですね・・・



 *



「すみませーん。新刊お願いしまーす」

「は、はい」


 わたしが先生と話していると声がかかった。女性の声だ。ちょっと教育実習で実際何するのかっていうのを聞いてた。先生がやってきた人をみて固まる。もしかして言ってた生徒さんですかね?


「いつもはR18ですよね? どうしたんですか?」

「えっと、ちょっとあって」


 まぁ目の前の人が原因とは言えないですよね。


「こっちの人は・・・リンさんですか!?」

「ん」


 なんで、わたしのこと知ってるの? 少なくとも今年に入ってからは姉さんたちに連れて行かれてないからSNSで話題になった記憶もないんですけど。


「1年ぐらい前にSNSに話題になってたのを見たんです!! わぁっ実物はもっと可愛い!!」


 うーん・・・やっぱり一度ネットで有名になると結構覚えられますよね。


「リンちゃんが可愛いから覚えられてるってだけじゃないかな」


 先生まで・・・


「スカウトされた経験は?」

「4回ぐらい?」


 守山さんをテレビ局に連れて行くことでスカウトマンに知られたのか最近はスカウトされてませんけどね。遥斗とデートに行ったときにも何度かスカウトされた。名だたる有名芸能プロダクションの人達だったっていうのは覚えてる。


「ほらっ!! やっぱり可愛いから声かけられるのよ」


 可愛くは作ってますけど、やっぱり本当の女の子のほうが可愛いんじゃないでしょうかね。



 *



丸山(まるやま)? 夏の祭典は参加不可って言ったよな?」


 あら、平島先生じゃないですか。わたしの高校の時の男性教師で華岡先生の同僚ということになる。


「なんで、このお祭りに参加不可なんですか」

「熱中症のリスクが高いからだ、あと悪影響だ!!」


 と平島先生。何に悪影響か聞いてみたいところですが、そこにアナタの同僚がサークル主としていますよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ