【第211話】ドームライブ2
「みなさ~ん!! こんにちはー!!」
近藤がステージの上でテンション高く女声で挨拶した。そういえば、近藤がステージに立つ場合は女装してるんだけど、観客の皆さんは近藤のことどう思ってるんだろうか?
俺は一応メイクはしてるけど男の姿だし、遥さんはメイクで別人レベルになってるけど女子のまま。なぜか近藤と柊さんが性別を入れ替えているという状況。なんでだろうか。
「それじゃぁ私達の新曲から行きたいと思います!! この曲、最近色々なところに楽曲提供し始めた乙女さんが作った曲なんです!! それじゃぁミュージックスタートっ!!」
本当に近藤のステージ上のキャラがさっぱり分からない。
*
「すごかった!!」
関係者席の方でステージを見ていた梨花ちゃんが楽屋で凄い凄い!! と言ってくる。まぁ結構盛り上がったからな。近藤が盛り上げるのがうまいんだよなぁ。
「このあと佑樹はどうするんだっけ?」
「とりあえず今日の仕事は終わりだけど?」
関係者用のパスがリン用のだからリンに着替える必要はあるけど。
「ならさ、梨花が色んな芸能人に会いたいっていうんだけど、会わせるって事できる?」
「んー、まぁ何人かなら」
守山さんをテレビ局とか芸能部門の方のビルに連れて行った時に知り合っている人もいるし会わせること自体は問題ないと思う。
「ほんとっ!? 無理やり付いてきてよかった!!」
梨花ちゃんがガッツポーズする。梨花ちゃんってミーハーだったっけ?
「ミーハーじゃないけど会えるんなら会いたい!!」
んー、まぁ分からなくもないか。
*
リンに着替えて、遥さんと梨花ちゃんを連れて、とりあえず女優の沙苗さんがいるからその楽屋に移動する。いる理由は出ているドラマの主題歌を歌っている人が出ているから、そのゲストとして来てるんですよね。
――コンコン
まだ出番は先だし楽屋にいるはず。電気付いてるみたいだしね。
『はーい』
やっぱりいた。
「リンです」
『あっリンちゃんか。どーぞー』
「えっ、リンお姉ちゃんちょっと待って!! 待って!! この楽屋って女優の沙苗さん!?」
超有名女優じゃん!! なんでそんなに親しいの!! と梨花ちゃんはわたしの肩を掴みながら言う。なぜかって言われたら普通に知り合いのお嫁さんだからだけど。
「私の記憶違いじゃなかったら沙苗さんの夫って漫画家の藤堂先生だった気がするんですけど!! 普通の知り合いって何!?」
なんか今日は梨花ちゃんテンション高いなぁ。あと、沙苗さんが藤堂先生の嫁って言うのは正解。
扉の前で話すのもなんだし入ろうか。多分、沙苗さんも待ってるし。
「まぁそんなにビビらなくても良い。お酒呑まない限り取って食べられないから」
「リーンちゃーん? 私がなんだってぇ?」
いつの間にか扉が開いて沙苗さんが出てきていて、わたしの肩を掴んだ。そこにはまだ梨花ちゃんの手があって手が重なる。梨花ちゃんがさっと手を引っこ抜いた。多分急に有名人の手が重なって驚いたんだろうか。
「沙苗さんが綺麗で美しいって言ってただけ」
「そうかー、って聞こえてたんだからねぇー」
あっちょ、チョークスリーパーはやめてください!! ウィッグがずれるからっ!!
「なんかさっきまで緊張してたのがなくなったんだけど」
「あはは。リンって狙ってやってるのか、素なのか分かんないわ」
緊張なくすの上手いよね。と遥さんに言われる。
「これは沙苗さんの性格もある」
自分が芸能人で他とは違うんだと思っちゃってる人にはこんな扱いは出来ませんよ。しても絡んでくれなさそうですし。
「はぁーい。私のこと知ってるみたいだけど、私は藤堂沙苗っていいます。よろしくね?」
一番年下の梨花ちゃんに高さを合わせながら、沙苗さんは挨拶した。
「よ、よろしくお願いしますっ!!」
「やんっ!!可愛いっ!!」
沙苗さんが梨花ちゃんに抱きついた。この人抱きつき癖あったっけ。
「あー純粋な中学生ってかわいい~」
ドラマで見せるきりっとした感じとは違う沙苗さんに梨花ちゃんは目を白黒させている。急に抱きつかれたのもあるのかな?
「仕事で会う子はなんか作った感じの可愛さって言うの? いかにもこうすれば可愛く見えるって意識してるから、なんか違うのよ~」
んーと梨花ちゃんを堪能する沙苗さん。梨花ちゃん固まってますよ?
*
次に姉さんの楽屋に行く。知ってるか聞いたら知ってるということだったから楽屋にいることを確認して移動してきた。あと伊佐美さんも姉さんの楽屋に遊びに来てるらしい。開けてるから自由に入ってきてとのことだから、軽くノックしてから入る。
「あっ来た来た!!」
「大富豪しようで!!」
二人して何トランプ準備してるんですか・・・
「遥ちゃんもおいでー」
「そっちの子が遥ちゃんの妹さんやな。よろしくなー」
遥さんはそうでもないけど、梨花ちゃんが余りの緩さに目を白黒させてるじゃないですか。
「入り口で固まってないで入っといで」
はいはい。




