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アナタの本当の姿は?  作者: kame
大学3年生
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【第205話】新人歓迎会

「リンちゃん今日、新歓あるけど来る?」


 アテレコにスタジオに来ていたら、声優の一人から声がかかった。今年は声優にも新人が入って、須藤君に後輩ができた。まぁ須藤君はまだ大学生だからアルバイトだけど。でもキャリアから考えると先輩だし少し先輩面してる。新人の子もわたしとか両声を担当している須藤君にあこがれてこの業界に入ったとは言ってた。

 それはそうと、今日の新歓ですよね。


「行っても良いなら」


 わたしまだアルバイトなんですけどいっていいんですか? よく事務所のイベントには呼ばれますけど、まだわたしアルバイトなんですけど。


「リンちゃんと遥斗君なら、誰も文句言わないよ」


 二人してうちの事務所の期待の新人だし、と言われる。遥斗は期待の新人かもしれないですけどわたしはどうなんですかね。


「リンちゃん・・・嘘だよね? ネタで言ってるよね?」


 まぁ、はい。わかってますよ。自分で自分を期待されているだなんて言いたくないだけです。


「本当にリンちゃんたちはうちのエース予定なんだからね!!」

「リンちゃんはもうエースじゃないかな?」

「少なくとも期待の新人ではないよね」

「すでにエース?」


 なんで他の声優の人も納得顔なんですかね。今日で会ったのが二回目の人新人さんも頷いてるし。


「皆の共通認識だしね」


 というわけで、リンちゃんはうちのエースだから!! って言われる。いつの間にか期待の新人からエースになってるし。



 *



「はい。今年も新人さんが20人も入ってくれました。では、乾杯の前に挨拶をしてもらおうと思います。

 新入社員の子らはこっちに上がっておいで」


 社長が、少し上がったステージの上に新入社員の人たちを上げる。男女比は半々。皆が皆、リクルートスーツというつまらない、もとい初々しさのある新入社員の人達だ。ちなみにうちは一部以外は私服です。


「じゃぁ適当に名前と趣味でも喋って」

「い、伊部(いべ) といいます。趣味は映画鑑賞です。右も左も分かりませんが、一生懸命働かせていただきますので、よろしくお願いいたします」


 定型文といった感じだけど、初々しくていい。その後も、新入社員の自己紹介が続く。


「高崎 あずさ といいます。大学のサークルでアニメ制作してました。よろしくお願いします」


 なんで高崎さんが、この事務所にいるんですかねぇ・・・初耳なんですけど。というか就職決まってないとか結構最後の方まで言ってたような気がするのですが・・・



 *



 新入社員の自己紹介が終わって、社長が乾杯の音頭を取る。

 今日はわたしは飲める。遥斗は前の反省で飲まないと言ったから運転してくれるとのこと。まだ大学の授業は始まらないから、わたしの実家まで送ってくれる。まぁうちの車で送ってもらうから、遥斗はそのままうちに泊まるらしいけど。親も泊まっていってと言ってるし。


 あちらこちらにいるスーツ姿の新入社員の人が先輩社員の人たちから声をかけられている。中には高崎さんも声をかけられている。


「そういやリンは就職決まったの聞いてた?」

「聞いてない」


 高崎さんがうちに就職するだなんて本当に初耳なんですけど。


「聞いたところによると、卒業式の前日ぐらいに決まったらしいよ」


 早乙女さんが教えてくれる。それなりにイベント会場で見たことある人だから少し調べてみたんだろう。


「早乙女さんって結構情報はやいよな」


 確かに。わたし達が知らないことを先に知っていたりするし。


「え? 社内掲示板に普通に載ってたけど?」

「そうなの?」


 ごめん。わたし社内掲示板はそこまで見てない。



 *



「リンちゃん!!」


 高崎さんがわたしのいるテーブルにやってきた。どうせなら気がついてほしくなかった。


「やっぱり声優だったんですね!!」


 そういえば高崎さんにははっきりと声優と教えた覚えはなかった。まぁほぼ声優だと思われていたみたいだけど。

 あと、少し大学にいた時と口調が違いますね。やっぱり社会人になったからですかね?


「ん」


 もうここにいて声優じゃないだなんて言えないですからね。他の有名な声優にも囲まれていますし。


「そうだったんですね・・・」


 本当に声優だと分かったら、雲の上の人のように思っちゃう。とか言われても、わたしそんなに上のほうじゃないですから。姉さんと伊佐美さんのほうが遥かに人気は上ですからね。


「リンちゃんはいつから声優やってます?」

「んー」


 えーと・・・高校三年間と大学二年間だから・・・


「5年?」


 多分そのくらいのはず。


「いや、リン中学三年のときもやってたでしょ?」

「そうだっけ?」


 姉さんが教えてくれる。中学校のときもやってたっけ?


「ほらちょい役でさ」


 んー、あぁ地声そのままでやったような気がしますね。中学三年のときのは、姉さんに家で録音されてそのままアニメで流れたっていう小話もありますけど。


「大先輩ですね」

「でも、わたしアルバイト」


 長くても結局はアルバイトなんですよ。


「あっリンちゃんがうちに正社員になったらアルバイトの時期の分も加味して給料とか役職決まるからな!!」


 どこからか聞いていた社長が声をかけてきた。

 えぇ・・・なんですか、その特別待遇みたいなの。


「特別待遇じゃなくて、それがうちの方針だからな。遥斗君も早乙女君も正社員になったら同じだから」


 そうなんですか。少しいいこと聞いた気がしますね。



 *



「リンちゃんと大学で会えなかったのって私のこと避けてました?」


 おぉう。避けてるかどうかを直接聞かれるとは思わなかった。まぁ気にはなりますよね。同じ大学と言っていても全然会わないんですから。


「避けてはないけど、気がついてないだけ」

「私のこと大学で見たことは?」

「ある」


 うーん。と高崎さんは腕を組んで考える。


「リンも意地悪だなぁー」


 遥斗がわたしの後ろから抱きつきながら耳元で呟く。


「遥斗も同罪」

「あははーそうだなー」


 高崎さんに正体隠しているのは一緒なんですから。

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