【第202話】会遇
「交換しよ?」
遥さんが別の味を注文したクレープを渡してくる。わたしも食べていた違う味のクレープを渡して続きを食べる。うん。やっぱチョコも美味しいなぁ。ちなみにわたしのはいちごです。
「この二人、躊躇いもなく間接キスするよね」
「確かに」
対面に座る登坂さんと大崎さんが喋っている。
「まぁ今更だしね」
一緒に暮らしてたらよくあることだしね。と遥さんは言う。まぁ味見するときに新しくスプーン出すの面倒だからって言ってわたしが使ったスプーンを遥さんがそのまま使いますからね。
今日は登坂さん達に里奈さんでと言われて、里奈の格好で来ている。ただ授業終わってから遊びに来ただけで、何かイベントがあるわけじゃない。甘味を巡りに来てる。晩御飯もどこかで食べようか? と話してる。本当にノープランだからね。
「この後、どうする?」
どっかイートインのあるケーキ屋でも行く? と聞いてみる。クレープは本当に通り掛けにおいしそうだなーってことで食べただけ。
「はいはい!! 私メイド喫茶行ってみたい!!」
大崎さんが手を上げながら言う。メイド喫茶かぁ。そういえば文化祭でしたけど、ほとんどの人は行ったことないって感じだった気がする。その中に大崎さんがいたかは覚えてないけど。
「この辺あったっけ?」
「なくはないけど・・・」
どうなのかなぁーって遥さんは頭を傾ける。何かあったっけ?
「知り合いがいる可能性あるんだよねー」
ん? 大学の知り合い? わたしの知ってる人?
「高校の時の知り合いかな。一度一緒に行ったことあるところであったことあるよ」
ふむ。この近くの行った事あるメイド喫茶にいた高校時代の知り合い・・・
「あー」
思い出した。アカネちゃんのいたメイド喫茶か。考えてみたら今居るところからあのメイド喫茶近いですね。
「まだ居ると思う?」
「さぁー」
もう結構有名になったし流石にメイド喫茶でバイトはしてないんじゃないかな。
「メイド喫茶に知り合いが居るの?」
「まぁ居るけど、今いるか知らないなぁ」
一応連絡してみようか。アカネちゃんにメッセージを送っておく。すぐには既読はつかないけど、まぁアカネちゃん忙しいだろうしね。
「どうする?」
「んー行くだけ行ってみる?」
知り合いが居ても居なくても別にどっちでもいっか。
*
「お帰りなさいませ。お嬢様方」
「アカネちゃん!?」
大崎さんがわたし達に入店の挨拶をしたアカネちゃんを見て声をあげた。えーあーごめんなさい。アカネちゃんまだバイトしてたんですね。
アカネちゃんもわたし達を見て一瞬顔をしかめたけど、すぐに営業スマイルになった。多分わたしと遥さんだけなら止まらなかったと思いますけどね。
「えっアカネちゃんメイド!? 可愛い!!」
大崎さんのテンションがあがる。大崎さん知らなかったの? ストーカーしてたし知ってると思ってたんだけど。あっでも、メイド喫茶には行ったことないって言ってたっけ。
「してるって噂は聞いた事あったんだけど、中々来れなくて」
連れてきてもらうにはちょっとハードル高かったの!! と大崎さんは教えてくれる。
まぁあのストーカー時代は運転手付きでしたからねぇ。運転手付きのストーカーって結構パワーワードな気がする。
「あはは。お嬢様方、こちらの席へどうぞ。お決まりになりましたらそちらのベルをお鳴らし下さい」
了解です。アカネちゃんはお仕事頑張ってくだいね。
*
「あれ? 遥ちゃん?」
「げっ」
「げって何!?」
別のテーブルの給仕をしていたメイドさんが通り掛けに遥さんを見つけて声をかけてきた。遥さんの知り合いっぽいですね。エプロンのところについている名札には『みさきち』と書いている。
「なんでメイド喫茶で会うの・・・」
「だってここあたしのバイト先だし!!」
「まじかぁ・・・」
「遥ちゃんこそどうしたの? うちに来て?」
「友達が行きたいって言ったから来ただけだよ」
「へぇ、なんかメイド喫茶とは縁もゆかりもない感じの人ばかりなんだけど」
「まぁそれは分かる」
なんか遥さんと盛り上がってますけど、みさきちさん仕事中にそんな油売ってていいんですか? 店長らしき人がこっち見てますけど。
「あっやばっ」
じゃっまた今度!! とみさきちさんは裏へ消えていった。
「今さっきの、岬って言うんだけど、前話したすーさんに会いたいって言ってた一人なんだよね」
まさかここで会うとは・・・あっだからサブカルに詳しくなってたのか。と遥さんは岬さん?が消えていった方をチラリと見る。すぐに出てくる様子はない。あっアカネちゃんが出てきた。持っているのは多分わたし達の頼んだやつかな?
「結構話してたみたいですけど、知り合いですか?」
「うん。まぁ小中と一緒だった友達かな」
「裏で怒られてましたよ」
まぁよく見る光景ではありますけど。とアカネちゃんはわたし達に給仕しながら教えてくれた。
大崎さんはアカネちゃんの慣れた給仕の様子を目に焼き付けようとガン見している。まぁチェキは許可制ですからね。料理の写真はメイドさんと他のご主人様が写ってなければOKらしいですけど。
「よく見るんだ」
「まぁ、みさきちさんすぐに友達と話したくなる人なんで・・・」
たまに友達が来て長話して店長に怒られってことしてます。とアカネちゃんはぷぷっと思い出し笑いをしながら言った。なにやらアカネちゃん的にはそういったのがツボらしい。
岬さんそれでメイド喫茶でやっていけてるんですか・・・?
*
「あっ、遥ちゃん。彼氏さんに会わせてよー」
またテーブルに来た岬さんが遥さんに声をかけた。もう自分がメイドだってこと忘れてますよね。
「えー。機会があればね」
わたしに視線が集まる。分かっていると思いますけど、言いませんよ?




