【第201話】タイムカプセル(遥)
お母さんから、小学校のタイムカプセル開封の案内が来たから行けば? と言われて佑樹に送ってもらって母校である小学校に7,8年ぶりぐらいに入った。塗り直しされたのかキレイになった校舎に耐震工事でもしたんだろうか、鉄骨が増えている。校庭の遊具の配置は変わっていないもののやはりこれもキレイに塗り直されている。
「遥ちゃーん!!」
小学校、中学校と同じ学校だった同級生が私を見つけたのか声をかけてきた。タイムカプセルは確か校庭の端の方に埋めた記憶がある。数人の男子がスコップ片手にこの辺だっけか? と話している様子。
「久しぶりー」
高校一年生の時は時々会ってたけど、高校二年三年、あと大学になってからは全然会ってない。でもあんまり変わんないね。
「タイムカプセルって何入れたか覚えてる?」
「んー全然覚えてない」
実は覚えてる。全員が決めていれた手紙とあの時描いた漫画を入れたんだよね。 地味に黒歴史!! 小学校の頃はニチアサあたりとか国民的耳のない猫型ロボットとか、ちっちゃくなった名探偵のアニメをメインに見てたから普通にオタクとは言われなかったんだよね。絵も描いていたけど、落書きレベルしか皆には見せてなかったし。多分このタイムカプセルに入っているのが私が初めて全て自分で描いた漫画だと思う。
「そういやさ、これ遥ちゃんでしょ?」
そういって見せられたのは、VoiceResearchersがステージで歌っている様子。佑樹が悠里として乱入したときのやつだ。まぁ私変装という変装はそんなにしてないしね。ただのクラスメイトにバレない程度は変装できてるけど。気がつく人は気がつくよね。男装だったら気が付かれない自信はあるんだけど。
「知ってるんだ」
「まぁ、結構有名になったし?」
あたしだってそれぐらいはチェックするよ。と言われる。サブカルに強くない印象だったけど、まぁまぁ知ってるのかな?
「本当両声類って凄いよね!! この4人全員なんでしょ?」
「そうだねー」
両声類以上が一人いるけどね。佑樹を両声類で纏めたら他の両声類のハードルが高くなりすぎちゃう。
「ねぇねぇ。声変えてみてよ」
「おっけー」
遥斗の声は出さないように気をつけないとね。多分遥斗の声を出してもわからないと思うけど、遥斗は遥斗で知り合い結構いるし。私がイベントで気が付かなかっただけで昔のクラスメイトもサークルに来てる可能性もあるし。来る人多すぎて全員覚えてられないし!!
*
「あったあった」
タイムカプセルを掘り出していた男子達の方から声が聞こえてきた。意外と浅かったのかな?
さて私の黒歴史の過去漫画を受け取りに行きますか・・・だってさ小学校の頃の絵だよ? 今ですら一年前の描いた絵を見返してみてもっとここをこうしたらよかったとか思うのに、小学校の頃の絵だよ? 黒歴史じゃん。
「飯島さーん」
「はーい」
良かった。袋は中が見えないようになってる。漫画見られたくないし。内容は普通の少女漫画風だった記憶はあるけど。袋が透明で描いていたのがBLだったら死ねる!!
「何入ってたー?」
「手紙と・・・あとは、秘密」
漫画のことは教えない。
「えー教えてよー。黒歴史?」
ねぇねぇと言ってくるけど、黒歴史なのは正解なんだけど、そう聞かれるとは思わなかったし、
「というか手紙も皆黒歴史だよね」
内容によったら黒歴史になるんじゃないかな。私はなんて書いたっけ? 手紙の内容は覚えてない。まぁ手紙より漫画のほうが時間かけて描いてるからだろうけど。
「ま、まぁねー」
あたし手紙って何書いてたっけ。と自分の手紙を見始める。私も見てみる。大体こういうのって将来の夢を書いているんだと思うけど。うん。やっぱり将来の夢を書いてる。私小学校の頃お嫁さんって書いてるし・・・なにこれ幼稚園のタイムカプセル開けたわけじゃないよね?
「遥ちゃんなんて書いてた? あたしは先生になりたいって書いてたんだけど」
んー・・・
「言わなーい」
卒業文集の方には公務員っていうお堅い感じで書いてたのにね。
「えー教えてよー」
誰にも言わないからさー。と抱きつかれる。こんなにスキンシップする子だったっけ・・・
そぉれっ!! と手に持っていた昔の手紙を取られる。
「お嫁さん?」
「だったらしいね」
見られてしまったら仕方ない。
「で、今どうなの? 相手いるの?」
まぁ気になるよね。
「いるよ」
「くっ裏切り者っ!!」
裏切り者って・・・多分私に今接してる感じで行ったらすぐ見つかると思うんだけど。ものすごく可愛いってわけでもないけど、ブサイクってわけじゃないんだし。祐樹を見てたらわかるけど可愛いは作れるから。
「見せて?」
遥ちゃんの彼氏なんだからきっとイケメンのはず!! って言うけど・・・イケメン? イケメンにもなれるっていうのが正しいかな?
「やっぱイケメンなんだ!!」
あっ答えなかったから勝手に話が進んでる。
「どんな人? あたしも知ってる人!?」
「えーとVoiceResearchersのすーさんがそうなんだけど」
なんかイケメンで話が進んでるからイケメンの体で説明しておく。
「えっ!? マジ!? 会いたい!!」
何? ファンなの?
でも今日はメイクしてないから駄目かな。あんまり素で知られたくはないらしいから私も隠すのは協力する。
「あわせてよぉー」
「今日は無理かなーごめんね」
「えぇーお願いー」
媚びをうっても私には効かないよ?
*
「飯島さんすーさんが彼氏なんだって?」
祐樹から連絡が来たから抜けようとしたら、元クラスメイトに聞かれた。私もメンバーだとは気が付いてないみたいだけど。
「会わせてー」「会わせて」「サイン欲しいんだけど」
何?皆そんなにVoiceReseachers知ってるの?
「迎えに来てるんでしょ? 合わせてよ」
あーもうめんどくさい。迎え来たから行くね!! じゃっ!!
*
「あーもうめんどくさい」
車に乗り込んでついぽつりと声が漏れちゃった。
「何があった?」
「大丈夫。大丈夫。昔の友達が佑樹に会いたいってうるさかっただけだから」
別にあってもいいんじゃない? と言葉が返ってきた。
「でも、会いたいっていうのイケメンモードだよ?」
「あーそれはめんどくさい」
「でしょ?」
佑樹もしっくりは来ないって言ってたしね。




