【第197話】正月企画
冬の祭典も無事に終わり、遥さんと初詣を終わらせてから、リンとして遥さんと初売りのために量販店までやってきた。まだ開店前だというのに駐車場に困るぐらい混んでる。服が好きな人って結構いますよね。わたし達の狙いは化粧品ですけど。なんか毎年化粧品の福袋を狙ってきているような気がしなくもない。
「まだ開店30分前なのにこんなに並んでるなんて・・・」
「面倒」
イベントで並ぶのは全然いけるんだけど、イベント以外で並ぶのは面倒。
「そうそう昨日買った本にリンの好きそうなのあったから、今度渡すね」
「ん? 了解」
大晦日のイベント後はわたし達実家の方に帰りましたからね。遥さんがどんなものを買ったかは知っているけど、どんな感じだったかの共有はしていない。
「まだ全然読めてないんだよねー」
何かと正月って親戚が家に来たりして忙しいですよね。
*
「オープンしまーす!! 走らないようにお願いしまーす!!」
このぞろぞろと進む様子を見ていると祭典を思い出すんですよね。祭典のほうがきれいに並んでいる気がしますけど。
「化粧品はっと、あっちか」
遥さんが微妙に売り場の変わっている化粧品売場を見つけ、わたしをひっぱって少し列から外れる。結構な人数が服の福袋狙いなのか、あまり化粧品の方には人が少ない。服と比較してってだけで全くいないわけじゃないけど。
「何ほしいんだっけ?」
「化粧水は確定。あとツケマ」
「あれ? ツケマしてたっけ?」
「してないけど、里奈として欲しい」
ちょっと最近里奈の姿も大学で知られてきたから、外に出歩けるように新しく姿を作りたい。まぁリンとして出歩いてもいいけど、リンは何かと知られてるからね。
里奈をベースとして一つ姿を考えている。ウィッグは新しく買おうかな。茶系の髪を考えてる。ストレートなのは確定なんだけど、どれくらいの長さにしようかな。
「リン、こっちの色どう?」
「いいと思う」
遥さんに少しその明るめの色は合うと思う。
「じゃーこれにしよーっと」
良いと思いますよ。
*
「すみません。今お時間よろしいでしょうか?」
なんかスーツ姿の男性に声をかけられた。首からかけられていたネームカードにはこの店の名前が書いてあるし店員の人ですかね?
「ん」
もう欲しい物は大体カゴに入れたので大丈夫ですよ。
「ありがとうございます。現在このようなキャンペーンやってまして・・・」
そういって渡してくれた紙には正月イベント!!お買い物価格が最大7割引に!! というチラシだ。うん。どこかで見た事ある。これ、あれだ。テレビの人間観察って奴じゃない? わたし達も時々見てる。
「よろしければ、挑戦しませんか?」
んー遥さんどうします? わたしとしてはどっちでもいいんですけど。7割引になってくれるのなら嬉しいですけど。
「7割引になるの?」
「はい。成功すれば7割引になります」
失敗してもペナルティーはありません。と教えてくれる。
「やってみたい!!」
はい。じゃぁやりますか。出来たら7割引ですか。ものすごく大きいですよね。今日は特に一つ一つはそんなに高くないと言っても数があるので総額としては結構いってるんですよね。
「挑戦しますか?」
「はいっ!!」
ところで挑戦内容は何ですかね。
「今回の挑戦内容は正月なので黒豆を箸で掴んでお皿を移し変えてもらいます」
黒豆ですか。どんな状況かですかね。煮汁があると掴みにくいですし。
*
「はい。それでは新たな挑戦者です!! 自信のほどは?」
遥さんの前に何人かの挑戦者がいて、おばちゃんのほうが箸使いが上手だった。
「ありませんっ!!」
「おぉっとぉ」
遥さん自信満々にないと言わなくても・・・
「あっちの子のほうが箸使い上手だから!!」
遥さんここでわたし巻き込まないでもらえますか? これでも基本料理担当なので箸には少し自信ありますけど。
「挑戦者変えることも出来ますが、どうしますか?」
「じゃっ変えます!!」
はい?
*
「なぜ、わたし・・・」
「あはは、ごめん」
まぁいいですけど。
「それでは30秒で全ての黒豆を横のさらに移すことができれば成功です!!」
はい。7割引はちょっと魅力的なんで出るとなったらがんばりますよ。
「ではスタートです!!」
いつもどおり。いつもどおり。慌てない。慌てたらいつものができなくなるからね。
*
「成功でーす!!
こちら7割引券になりまーす。レジにてお渡し下さーい」
やりました。7割引きだしもうちょっと買っちゃいますか。
「やったやった!!」
遥さんがわたしの手を握ってぶんぶんと振る。追加で買いに行きますか。
あれ?テレビクルーの人は?
「すみません。僕、テレビ局の・・・」
あっ来た。
「リンさん!?」
んー? あー前、守山さんの出るドラマにいたカメラさんだ。
というか、わたしのこと最初の段階で気が付かなかったんですかね?




