【第192話】エドちゃん
「鈴木先輩!! お久しぶりです!!」
ん? エドちゃんだ。流石に大学にはゴスロリを着てこれないからか、黒のワンピースに白のカーディガンをあわせた服を着ている。普通に似合ってて可愛い。
「おひさ」
「久しぶりー」
時々大学で会うことはあったけど、少なくとも夏休みがあけてからは挨拶ぐらいしかしてない。夏休みより前はアニメ研に入ったエドちゃんとその彼氏の田本君に演技を時間がある時に仕込んでいたけど、既にいた声担当の二人よりも上手になってきたところで俺たちはフェードアウトした。んーでも、文化祭で会ったような気もしないでもない。アニメ研の出し物に行った時に見たかな?
「先輩、この前の文化祭の司会見たんですけど」
あの時にいたんだな。
「高校の時にやったときよりレベルあがってませんか?」
んー俺としてはメイクも演技の感じも特に変えてないから、変わっているとは思わないんだけど。
「女子力あがってるよねー」
一緒にいた遥さんが俺の方を見ながら言った。
「そうですよね。女子力上がってますよね!!」
えぇ・・・せいぜい日々のスキンケアで化粧ののりがよくなったぐらいじゃないか?
「なんというか。普通に女子?」
「ですよね!! 最初司会している里奈さん見て、別人だと思いましたし!! 声聞いてびっくりです」
本当に地声聞いた時、少ししてから高校の文化祭の時思い出して鈴木先輩だって気がついたんですよ!! とエドちゃんは俺に詰め寄ってきながら言ってきた。
エドちゃんこそ女子力上がってると思うんだけど。
「まぁ佑樹のは完全に別人になりきるって感じだしね」
それは否定はしないけどさ。
「私はむしろこっちが素なんですけどね」
「素でいたらいいよー可愛いしね」
そうそう。全く似合わなかったら問題かもしれないけど、似合うんだったらどっちの格好でもいいよな。
*
「そういや、前からちょっと気になってたんだけど、エドちゃんのことってどのくらい知ってる人いるの?」
遥さんが気になっていたのか聞く。いつも周りに俺たち以外に人がいたから聞けなかったんだろう。今日はエドちゃん一人だし。
「えーと、先生達は知ってます。あと、高校から一緒の人たちは知ってますし、あと仲良くなった数人の女子には教えてます。男子は私の彼氏だけ知っているって感じです」
「へぇーその数人の女子って受け入れてくれたんだ」
「まー結構こういう業界も知っているようだったので教えました。フォローもしてくれるので助かってます」
全然ひかれなくてよかったです。とエドちゃんはホッとする。確かにカミングアウトするのって結構怖いとは聞くし、エドちゃんも結構勇気を出したんだろう。
「なんか最近はネットでその情報を仕入れたり、サブカルのそういった本が有名になってきたこともあって昔より受け入れやすい環境が出来ているとは聞いたんですけど、実際のところどうなんですかね?」
先生がデタラメ言っていたりするんでしょうか? でもまぁBLといった言葉は結構浸透した気はする。
「私達に聞かれてもわからないなぁ・・・」
「だな」
そういった情報は刻一刻と変わるからなんとも・・・
*
「あっ、そうだ。すみません。先輩に相談したいことがあって声をかけたんでした」
つい別の話で盛り上がっちゃいましたけど、別の話だったんです。とエドちゃんはぽんと手を打ちながら言った。
「相談って?」
まだ時間に余裕があることを確認してエドちゃんに聞き返す。まだタイムセールの時間には大丈夫。
「一樹がなんか女の人と一緒に、で、デートとか行ってるみたいなんです!!」
私見捨てられたんでしょうか・・・とエドちゃは落ち込む。えーと一樹はエドちゃんの彼氏の田本君の名前で、田本君が浮気? それはないんじゃないかなぁ・・・
「やっぱり女の人の方がいいんだって・・・」
まだ私体は男のままですし・・・とエドちゃんは言うけど、んー・・・正直恋愛関係は俺そこまでわからないから、なんとも言えない。
「大丈夫だって!! 一緒に授業受けてるんでしょ?」
「受けてますけど。たまに俺今日ちょっと用事あるからって一人で早々と帰るんですよ!! で、この前後ろからついていったら女の人と会ってたんです」
でも、重いと思われたくないから、言えないんです。その時は逃げちゃいました。とエドちゃんは顔を押さえる。なんというか乙女だなぁ・・・
「私どうしたらいいでしょうか?」
んんー・・・俺はよくわからないけど、遥さんは?
「私もちょっと分からないかな? 多分聞いてみたら教えてくれるんじゃない?」
「そうですよね・・・でも、怖いんです」
不安で仕方ないんです・・・とエドちゃんは肩を落とす。
ちょっと一肌脱ぎますか。可愛い後輩だしね。




