【第189話】文化祭4
「はーい。どうもー。今日の司会の山ちゃんでーす!!」
「「「ぶぅぅー」」」
山本さんが先にステージの上に上がっていくと、観客席の方からブーイングが聞こえてくる。まぁ恒例ですよね。
「なんだか歓迎されてない気がするぞー」
「「「早くKB18を出せー!! 引っ込めー」」」
「うるせー前説ぐらいはさせろ!! 里奈ちゃん上がってきて!! 俺だけじゃ無理!!」
呼ばれたからステージに上りますか。正直山本さんへのブーイングでわたし出る気がちょっとなくなってくるんですけど。
「少し罵倒されたぐらいでなんですか。さっさと前説やってください」
ステージに上がりながら、山本さんに言う。
観客席の方からは、誰あれ? という声が聞こえてくるのと、メイド喫茶で見た子だ、とか、何してんだ鈴木。とか聞こえてくる。最後のはうちの学部の人たちですかね。本当にわたしとしては予定外のステージなんですけど。
「はーいはーい。でもでも、里奈さんって誰?って人もいると思うから、前説の前にまずは自己紹介お願いしまーす」
「はいはい。どーも、皆さん里奈って言います。朝はメイド喫茶でメイドしてたりしましたー知ってる人どれくらいいる?」
「「「知ってるー」」」
意外と結構な人数から知ってると返ってきた。というか赤崎の声が混じってた気がする。
意外と女子からも返ってくる辺り、あのメイド喫茶に来た人はそれなりにいるみたいですね。
「里奈さんはつい30分前に出てくれーって言ったら、快く出てくれたんだよねー」
「快く・・・?」
快く出るとは言ってない気がするんですが。
「えっ?」
「わたしは台本があればといったはずですが」
「台本なら渡したでしょ?」
「時間の段取りを書いているタイムテーブルなら貰いましたけど、台本は一切もらってないですよ」
本当に台本と言う名のタイムテーブルしか貰ってない。あれを台本というなら絵コンテのほうがまだ台本って言える。
「台本というのはですね。台詞とか段取りを書いてあるものなんですよ。分かってますか?」
アテレコだって台詞がないと何を言えば良いか全然わかりませんからね。特に私がよくやる画面外からの声なんて口が見えないので何をいったらいいのかさっぱりなので。
「わかってる。分かってる。でも、今日の俺忙しかったの知ってるよね!!」
「あー、KB18脱走ですか」
「そうそう!! だから俺台本作る時間とれなかったんだよ」
「じゃぁわたし呼ばなくても良かったじゃないですか」
「だって華欲しくね?」
じーとジト目で山本さんを見る。
「いやっ、なんかその視線ゾクゾクくる!!」
「変態さんでしたか」
ジト目をやめる。ずっとやってたら山本さんが使い物にならなさそうなので。
「いい加減進行しませんか?」
貰ったタイムテーブル的にもそろそろだと思いますし。ちらりと付けている腕時計を確認する。今回は佑樹として付けている腕時計だし、腕の外側に向けてつけている。リンのときは小さめの腕時計で、姉さんにリンのときはこっち!!って言われて内側につけるようにはなってますけどね。正直腕時計の向きなんかどっちでもいいじゃないですか。見やすいほうでいいんですよ。見やすいほうで。
「はーい。里奈ちゃんもちょっと不機嫌だから進めまーす」
*
「さてと、じゃぁ・・・皆はアイドルは好きか!!」
「イケメンは好きですか!!」
「可愛い子は好きか!!」
「乗りに乗ってるアイドルグループは好きですか!!」
「可愛い女の子のほうが好きだろ!?」
ここだけは先に打ち合わせしておいたから台詞は覚えてる。
ところで、なんで山本さんはわたしの方を見て言うんですか。さっさとステージ横で待機しているKB18の人たちを出してあげてください。そして山本さんの台詞微妙に打ち合わせ内容と違うんですけど。
「俺としては男性アイドルより里奈ちゃん見ておきたい」
「そんなこと言ってないで呼んであげてください。観客の女子だってシラけた目で見てるじゃないですか。早くアイドルだせーって」
「おぉっとぉ、この冷ややかな視線はそういうことか!! ゾクゾクして心地よかったんだけどな!!」
「変態め」
「それを言ったら完璧に女装しちゃう里奈ちゃんはどうなのー?」
「うぐっそれ言っちゃいますか!!」
別に黙ってろとは言ってませんけど!! ほら、観客席の方からえっ!?という混乱の声が聞こえてきますし。
わたしがわざわざ性別言わないの知ってますか?
「こう混乱がおこるから黙っているんだが?」
地声で答えるとまた会場でえぇっ!?っと声が上がった。もう両声類なんて珍しくないですよね。
*
「なんか色々あったけど、KB18の登場です!!」
なんでそんなに山本さん疲れてるんですか? 最初のテンションはどこに・・・まぁいいですけど。
「「「皆さんこんにちはー!!」」」
「「「きゃぁぁぁぁ!!」」」
KB18の5人がステージに上ってくると観客席の方から女子の悲鳴とも取れる歓声が聞こえてきた。
わたし達ははけますよ。あとはプロの方にお渡しします。




