【第174話】ライブ2
「わぁっ!! ナギサさんアカネさん!! お久しぶりです!!」
大崎さんが楽屋に入った途端、二人に飛びついた。本当に好きなんだなパロメロの二人。
「加奈ちゃんお久しぶり!!」
「わぁっ!! 覚えていてくれたんですね!!」
まぁストーカー相手で更に有名になるきっかけになった仕事をくれた人ですからね。忘れないですよね。
「加奈って少し猪突猛進的な感じになるときあるわね」
「まぁ、我慢するより良いんじゃない?」
溜め込んでもっと違う方向に進んだたアウトかもしれないし。
それにここにはわたし達しかいない楽屋だから、少々は大丈夫だと思うけど。
「えーと・・・」
アカネちゃんがわたしの方を見ながら言葉を詰まらせる。わたしが今どの程度情報を出しているかわからないからだろう。
ちょいちょいとアカネちゃんを呼んで大崎さんと登坂さんに聞こえないように説明しておく。
「了解しました。で、今の名前って?」
前この姿で会ったことはあるけど、今なんて名前で通っているか分からないよね。
「里奈で通してるからよろしくー」
「了解です」
アカネちゃんがビシッと敬礼する。うん。本当かわいいなぁ。流石はアイドル。というか本当にアイドルらしくなったなぁ。初めて会ったときはちょっとビクビクしていた感じだったけど。
「何鈴木くんって色々名前あるの?」
聞こえていたのか登坂さんが聞いてきた。
「んー秘密」
別に教えても良い姿はいくつかありますけどね。
*
「ところで、リ、ごほん里奈、ステージ出る気ない?」
「は?」
意味が分からないんですけど。姉さんわたしにどうしてほしいんですか。
「えーとねぇ・・・私がスペゲスってSNSで出回ってるみたいだから一発かましてやろうってね」
「無理無理。ウィッグも服もないんだけど?」
あと、あの二人にわたしが悠里だとは教えてないんですけど。
「そうなの?」
「ん」
「ウィッグならあるよ?」
はい。とナギサさんが、アカネちゃんの予備だろうウィッグをわたしの頭に被せながら言う。ウィッグの上にウィッグなんですけど。
あと、ナギサさん? あのですね。わたしするつもりないですよ。
大崎さんと登坂さんはなんのことやらといった感じで頭を傾げているし。
「どういうこと?」
「ひみつー」
「里奈さん秘密多すぎ!!」
「まぁわたし色々あるからねっ!!」
本当色々あるからね。
「んー、まぁ教えれる事といったら・・・一応これでもCDデビューしてるぐらい?」
VoiceResearchersとしての活動は普通に素の姿を知っている人なら教えても良いしね。
「デビューしてんの!?」
「遥さんもね」
「私は黙っておくつもりだったのに!!」
「まじで!?」
何二人共そんな面白そうなこと黙ってんの!? と登坂さんがわたしの肩をがしっと掴んで揺らす。
「自分からは言わないって」
「うんうん。私から言うようなものじゃないよねー」
それに売れているには売れているけど、パロメロの枚数よりも少ないし。
「いや、テレビ出ているアイドルと比べる時点でおかしいから」
まぁなんかそんな気はしてた。
「で、出てくれる?」
「だから、なんでわたしが?」
「だってこの中で私達以外にステージ慣れしてるの佑樹だし」
素人をステージに上げるわけにはいかないしね。と姉さんにほらほらとウィッグを被せられる。
「あんた、地味ーに前のステージから人気あるの知ってる?」
「前のステージイケメンでやったんだけど?」
「だからそのイケメンが人気になってるんだけど」
まじですか。
だったらやるとしても、わたしイケメンモードでってことですよね? なんでウィッグを被せようとするんですか。
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「ねぇねぇあの人かっこよくない?」
近くに居た人が着替えた佑樹を指さしながら言う。服はどこからか・・・多分岡崎君の服だと思う。
メイク道具は持ってたからイケメンモードの佑樹だ。見慣れているといえば見慣れているけど、やっぱり慣れない。佑樹はいつものがいいなぁ・・・
「本当に鈴木君ってイケメンから美少女までなれるよね」
「まぁ100の顔を持つ男だから」
100は言いすぎかな?




