【第170話】誕生日
「んー」
わたしは買い物かごを手にデコレーション素材の前で眺めつつ考える。
本当に種類が多くて迷う。チョコだけで何種類もあるし色もいっぱいある。ケーキに使うならどれ使ったら良いんだろう。
そこまでお菓子作ってないから何が適しているかイマイチ分からないし、あと前見たときより種類増えてる気がする。
遥さんの誕生日がそろそろだから誕生日プレゼントと何食べたいか聞いたら、手作りケーキとのことだったから材料を買いに来た。
で、並んでいる棚を見ているんだけど、昔からあるやつもあれば、見たこともないアイテムもあって何がいいのか分からない。本当こういった時にしか見ないから急に増えたイメージがある。
「リンは何悩んでんの?」
一緒に買い物に来ていた遥斗がわたしの後ろから覗き込みながら聞いてきた。
えぇ。遥さんの誕生日用ですけど、まぁデートと称して一緒に買い物に来てます。サプライズしようと思っても気が付かれる気がするので。わたしそんなに隠し事得意じゃないんです。それに一緒に生活しているから相当頑張らないとサプライズは難しいです。
「デコるなら何?」
実際は女子の遥斗に聞いてみる。
基本的にクリームで形は作るけど、定番と言ったらホワイトチョコにチョコペンかなぁ・・・オードソックスなケーキで行くつもりだけど、ちょっとアレンジはしてみたい。
「んー俺やったことないからわかんね」
そうですか。遥さんがお菓子を一人で作れるようになるのはいつになるんだろうか。
*
「ふんふーん」
わたしはボウルを手にかき回す。
「なんでリンはそのままで?」
着替えた遥さんがキッチンを覗きこみながら聞いてくる。
「え? むさいのでお菓子作りたくない」
うん。ほんとそれだけ。
「んーまぁリンのほうが全く違和感ないけどさぁー」
そうでしょ? わたしだって素でお菓子作りしてたら違和感があるのは分かってる。イケメンとか渋い感じだったら似合いそうなんだけど中途半端なもさいのはねぇ・・・
「あと、こっちのほうが作ってて楽しい」
普通の料理ならともかくお菓子はリンのほうが楽しい。
「なるほどねー。まぁわかるけど」
見ててテンション高いし。と遥さんに言われる。わたしでもテンション高いの分かってる。
*
「はい。ハッピバースディー!!」
プレゼントフォーユーと準備しておいたプレゼントを渡す。今年のプレゼントは遥さんがほしいって言っていた財布だ。どうにも今使ってるのがくたびれたから欲しかったらしい。そんなに高いものじゃないけど、自分で買うにはちょっと躊躇する金額だったらしい。
「ありがとう!!」
まぁ一緒に選んだから遥さんも知ってるけどな。
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ところで佑樹って異性に財布を渡すときの意味って分かってるのかな?
財布って常に持ち歩くから、いつでもあなたと一緒にいたい。側に置いて大事にしてという意味があるらしいんだよね。私もネットで見たことあるだけだけど。
何が欲しいか聞かれて、私から丁度買い替え時期だった財布と答えたら買ってくれたけど、多分知らないんだろうなー
ブランド物じゃないけど、使い勝手のいい感じの長財布で一応遥斗の方でも使える感じの財布で少し前から欲しいなぁとは思ってたんだけど、微妙に手が出ない金額だったんだよね。
「二十歳ということで、お酒を用意してみた」
甘いのね。と佑樹は冷蔵庫から小さな瓶のお酒を取り出してきた。私それ知らない。というか冷蔵庫今日私開けたよね? なかったよ?
「頑張って隠した」
紙パックの中身がそのものだと思わないように!! と佑樹に言われる。紙パック・・・
「あぁっ!! あの飲むヨーグルト!!」
私それ飲まないけど、佑樹は飲むからよく冷蔵庫には入ってるからあるのは違和感なかった!!
「正解っ!!」
なんかいつもより佑樹がテンション高い。ちょっとリンより?
「飲む?」
「飲む!!」
二十歳だからね!! 飲むよ!!
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「ゆーきー」
一杯目を注いで、二人で乾杯してから初めてだから少しずつ飲んでいる遥さんをみて初々しいなぁと見てたら、遥さんが俺にしなだれかかってきた。目がとろんとしている。
え? 酔ってる? まだ一杯目なんだけど? というかコップ半分ぐらいしか飲んでないんだけど!?
遥さんが俺に寄りかかって・・・
「キスしよ? キス!!」
あっ、ちょっ!!
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あれ? 私いつの間に寝たんだろう?
気がついたらベッドの上で寝てた。なんか温かいのを抱いている。というかうん。この感覚佑樹だね。
えーと、佑樹に注いでもらったお酒を飲んだ記憶はあるんだけど、その後の記憶がない。
え? 私何した?
ねぇねぇ佑樹。私何した?
「遥さん、外でお酒飲むの禁止な」
え? だから私何したの!!
遅れましたm(_ _)m




