【第166話】アニメ研
「なぁ、前の本、別のやつないか?」
「へ!?」
授業が終わり、赤崎が寄ってくるとそう言われた。前の本ってあれか? 高崎さんが読んでいたBLカップリング同人誌。
「そうそれ!!」
「なんだ? はまったか?」
「ま、まぁな」
あれはライト系だからな。結構気軽に読めるとは思うが・・・ハマったかぁ・・・まじでか。
いや、ハマったらマズイわけじゃなくて、赤崎もこっちの世界にくるのかという意味で。
「あの本からアニメも見てみたらハマってな・・・」
「お、おぅ」
アニメも見たのか。
「で、本家を知ったらその同人誌?ってのも見たくなって・・・」
同人誌から入って本家に行って同人誌に戻ってくるとは・・・
「で、どんなのをご所望で?」
「カラー」
ふむ・・・ならまだライト系のがいいよな。俺詳しくないから知ってるやつに聞いてみるわ。
*
「えっ? 鈴木君達もこのカップリング好きなの!?」
聞きに来たのは、アニメ研究会の部屋。まぁ赤崎が惚れたという高崎さんに直接聞きに来た。遥さんと一緒に呼ばれたのもある。何か新人が入ったから紹介したいとのことだ。あと声仕込んで。と言われた。声は時間が取れれば手伝うけどな。
「友達にこのカップリングの本でいいのをピックアップしてほしいと言われまして」
高崎会長なら何か知ってるかなって。と聞いてみる。
「ならいくつかピックアップしてタイトル後でメールで送るね!!」
きっと同胞でいて嬉しいんだろう。高崎会長がウキウキとしている。
「それで、今年入った新人なんだけどね」
はい。なんで俺たちに紹介するのか不明ですが、聞きましょう。
「二人共入ってきて」
二人入ったんですね。というかなんで、わざわざ部屋から出ていたのかわからないんですが。
扉が開き、二人が入ってくる。男女かな?
「あっ」「あー」
二人の顔を見て、俺たちは声をあげた。向こうもえっ? とこっちを見ている。
「えっ? 知り合い?」
はい。知り合いです。女子の方(?)については。男子の方は知らないけど。
「まぁ同じ高校だったので」
「鈴木先輩ですよね?」
女子の方・・・でもないな。エドちゃんがそこにいた。
うわっまじかーという顔をしているエドちゃんだ。えっと、どういった感じで高崎さんに説明しているんでしょうか? 普通に女子学生で通ってます?
「知り合いっぽいけど、遠藤さんと田本君ね。で、こっちがうちの特別顧問の鈴木君と飯島さん。絵も描けて、声も演技もばっちしな二人だから分からないことは二人に聞けばいいと思うよ」
特別顧問なんて初めて聞いたし、まずは先輩の人たちが教えてあげたら良いじゃないですか。
*
「文化祭ぶりだっけ?」
リンとしては何度か会ってるけど、俺としてあったのは文化祭から会ってない気がする。そもそも文化祭のときもそんなに話したわけじゃないけど、一応優勝を争った相手として少しは話している。
「は、はい」
何でそんなにビクビクしてるのか知らないけど。
「遠藤さんと田本君ってもしかしてこれ?」
遥さんが小指を立てつつ聞く。
「はい。付き合ってます」
「へぇー」
あっ、遥さん妄想してる。きっと女装男子と男子のいちゃこらが頭の中で繰り広げられてるんだと思う。今度の漫画ネタかな。
遥さんもエドちゃんの姿は文化祭のコンテストで見てるはずだから知っていると思うし。
「ここの大学だったんだな」
「はい。先生に勧められたのもありますし、知り合いがいるらしいので」
あと、先輩・・・とエドちゃんが近寄ってくる。
「私があれというのは、秘密でお願いします」
「それはいいけど、大学にはどんな感じで通ってんの?」
「それはもうしっかり説明しました。華岡先生も色々手伝ってくれて」
本当駄目なときは駄目な先生だけど、華岡先生も動くときは動くよな。
「え? 何? 遠藤さんって問題児だったとか?」
実はまだいた高崎会長が話しかけてきた。
「んー、人様に迷惑がかかるような問題ではないですから気にしないであげてください。ちょっと高校だと病弱だっただけなので」
気にしないほうがいいですよ。
*
「先輩方ってリンさんって知ってますか?」
何で急にリン?
「華岡先生がリンさんもこの大学に通ってるから困ったら助けを求めたらいいよ。とか言ってたので。そういえば鈴木先輩の名前も言ってたような・・・」
あの教師。こっちに何も話しを通さずに名前出してるし・・・フォローするのは別にいいけど先に連絡くれたら良いのに。
「リンちゃん私も探してるんだけど、大学に来てないのか見つからないんだよねー」
目の前に居ますけどね。




