【第165話】購入依頼
「鈴木ってBL漫画って知ってるか?」
・・・何? 急に? 大学の授業が終わり、次の講義の準備をしていると赤崎が聞いてきた。
「知ってるけど。どうした?」
「鈴木ってそういうの読むのか?」
「んー、まぁ読んだことはあるよ」
ガッツリ読んでるけど、それは言わない。
「どう思ってる?」
「まぁとうと・・・ゴホン。別にありだと思うけど」
それがどうしたんだ?
「俺にも教えてくれ!!」
教えるものじゃないんですけど・・・なぜ急にBLを知りたくなったんだ? 調べればいくらでも出てくると思うんだが。
「ネットで調べはしたんだが・・・」
多すぎてわからん。と赤崎は胸を張った。威張るなよ・・・まぁBLで調べると色々あるからな。作品ごとに色んなカップリングがあって、さらにライトなものからディープなものまであるからなぁ。
俺だって自分の好きなものしかわからないし、ディープなのはあんまり好きじゃない。
「何で急に知りたくなったんだ?」
「えっと・・・ちょっと興味が・・・」
リア充の権化が何をいってんだか。
「あーもう、鈴木ならいいか!! 好きになった奴がそういうのすきなんだよ!!」
なるほど。赤崎にもそういう相手が・・・
「まだ何も話せてないけどな」
コミュ強が珍しいな。グイグイと行ってるものだと思ってたが。
「そこで、鈴木に頼みたいことがある」
なんだ、一体。
*
「で、なぜ、わたしはこの格好をさせられてる?」
赤崎に頼まれて、里奈の格好でマンションの下に行くと赤崎が車で待っていた。
別に里奈の格好をするのは嫌じゃないけど。なんでこっちでと言われたんだろうか。
「あいつの好きな本を俺も読んでみたいから、代わりに買ってくれ!! 流石に女子向けのところには入れん」
だからってわたしに頼むんですか。自分が変装したら良いんじゃないですかね。
「鈴木なら見た目女子だからな!!」
それにある程度はBLってのを知ってるらしいし。と赤崎の車に肩を揉まれる。
「ん? お前ブラしてんのか」
「なに? してたら悪い?」
あと強く肩を揉むな。ブラ紐がずれる。今日も小さめのパッドを入れてるからブラはしてるけど。
「いや、徹底してんだなぁーって」
「まぁね」
ずれたブラ紐を首元から手を入れて直す。服の上からでも直せるけど、直接手を入れたほうが早い。
「うっわ、鎖骨エロっ!!」
「何? 赤崎、鎖骨好き?」
ほれほれと首元を見せてみる。リンだったらこんなことしないけど、今日は里奈だから少々こういうことも出来る。
「男と分かってるのに、何で目が行くんだ・・・」
「ふふん」
見てるのは男の鎖骨ですけどねー
*
「で、どれ買えばいいの?」
赤崎の運転する助手席に乗り移動する。BL漫画と言っても色々ジャンルとカップリングがあるんですが。
「えーと・・・なんか六つ子の・・・」
「それかぁー」
わたしあまりあれには詳しくないんですよね。いくつかカップリングは知ってますけど。
「それカップリング多いけど、どれ?」
「分かんねぇ・・・」
駄目じゃん。場合によったら地雷だったりするから、その辺りはしっかりと分かっておかないと。
*
「うわっいる」
「誰?」
赤崎とともに女性向けの本が並んでいる棚の横の本棚で本棚を覗き込みながら赤崎が言った。赤崎が惚れるって誰だろうか。わたしの知ってる人?
「・・・高崎さんじゃん」
覗き込む本棚の前に居たのは、アニメ研の高崎さんだった。え? 赤崎、高崎さんに惚れたの?
「知ってるのか!?」
「ま、まぁサークルに何度も誘われてるけど」
というかあの人腐女子だったの?
*
「すみません。失礼します」
「あっはい」
高崎さんが吟味している本の表紙をちらっと見てから、その前の棚に置かれていたわたしの知っているカップリングの本を取る。
なるほど高崎さんはそのカップリングですか。赤崎にはその本を渡すことにしますか。
それにしてもわたしには気が付きませんねぇ。いや、本に夢中っぽいんでそんなにこっちに気が回ってないだけかもしれませんが。
*
「おしっ、これで共通の話題が!!」
「読むのは良いけど、読んでわたしに文句は言わないでね」
一応ライト系を選んだけど、合わない場合もあるからね。




