【第132話】夏季休暇1
大学の長い夏季休暇が始まる。
わたしと遥斗は、車に服と食料品を詰める。とりあえず一週間は実家の方に戻る予定だから賞味期限が近い食料品とかを二人で分けている。仕事もあるから夏季休暇中ずっと実家でもいいけど、大学の友達とも遊ぶ予定があるから戻ってくる必要がある。
リンと遥斗なのは、大崎さん対策だ。大崎さんにはこの車の所有者はリンと認識されてるからね。
「忘れ物ない?」
「だいじょーぶ。レポート用のパソコンも持ったし、液タブも積んだし」
「おけ」
さぁ帰りましょうか。まぁ週末帰ってましたけどね。
*
「どっかで食べてから帰る?」
ちょうどお昼時ですけど。とわたしは信号待ちをしながら助手席に座る遥斗に聞いてみる。まだ家を出てすぐの信号だ。
「いいねー回転寿司でも行く? ちなみにコラボ中」
遥斗がスマホを手に提案してくれた。回転寿司・・・コラボ・・・あぁ。あれですか。
「行こうか」
「おけ。この道沿いにあったよな?」
「ん」
「じゃ、予約するから移動よろ」
久しぶりの回転寿司ですね。
*
「122番のお客様ー」
「ん」「はーい」
先に予約しておいたことでスムーズに入れた。最近はスマホアプリで簡単予約だ。
あれ? なんか見覚えのある人が回転寿司屋の制服を着ている。
「大崎さん?」
「あっリンさん。遥斗さん」
「こんにちは。大崎さんバイト?」
「はい。バイトしてます。8番テーブルにお願いします」
なんで、お嬢様がアルバイトしているんでしょうか・・・?
でも、アルバイト中に聞ける内容じゃないですよね。アルバイト中ということもあって大崎さんは次のお客の案内に行きましたし。
「ささ、リン、コラボアイテムはガチャだってさ!!」
「わたしそんなに食べられない」
男ですけど、そこまで食べられませんよ。いつも遥さんと同じくらいの量で満足してますし。
*
「リンさん、遥斗さん。一緒に食べてもいいですか?」
とりあえずサーモンを食べていると大崎さんが回転寿司屋の制服から着替えて私服でわたし達の席の横に立ち、声をかけてきた。着替えるの早いですね。
「いいけど、仕事は?」
「時間なのでアガリです」
なら、どうぞ。
「なぜバイトしてる?」
「あー、やっぱり気になりますよね」
今までお金に困っているという話はリンでも佑樹でも聞いたことはない。
「ちょっとお父様にお金使いすぎと怒られまして。お金を稼ぐというのがどれだけ大変かというのを理解するためにバイトしろと言われたので・・・」
大崎さんのお父さんは大会社の社長さんですけど、甘やかし一辺倒ではないんですね。
「何にいくら使ったんだ?」
遥斗がマグロの握りを食べながら聞く。
「ご飯です。えーと10万円ぐらいでしょうか」
「は? 何食べたらそこまで行くんだよ。うちどのくらいだっけ?」
「二人で3万円ぐらい」
これでも他の大学生に比べたら使ってる方だと思う。
わたし達は結構稼がせてもらってるから意識して節約しているわけじゃない。まぁわたし達そもそもそんなに食べないですし。土日は実家に帰っていたりしますし。
「お肉が高かったんですぅ」
きっと大崎さんに言うお肉って国産の霜降りだったりしませんか? 味付けして食べるんですから欧州産とかアメリカ産でもいいと思うのですけど。
*
「デザート何にする?」
「いちごパフェ」
「おーけー、俺チョコパフェ。大崎さんは?」
「えーとミルクレープで」
遥斗がピピッと端末を操作して注文する。
注文し終わってからお皿を返却口に投入。端末のモニタにルーレットが現れて・・・
「あたった」
ここまではいい。あとは出てきたカプセルから・・・
「お」
フィギュア出たっ!! 犯人だけど!!
「ぷっ、なんで犯人がラインナップされているのか」
「さぁ?」
と話しているうちにデザートが届く。
「リン一口ちょーだい」
「おけ」
わたしのスプーンから遥斗にイチゴパフェを食べさせて、わたしもチョコパフェを一口貰う。
あぁ、おいしい。
「二人共よくやってるんですか?」
「「なにを?」」
なにか特別なことってしましたっけ?
「食べさせ合いです」
しかも自分のスプーンで!! と大崎さんが少しテンション高めに言う。
「んー、意外と普通によくやってるけど?」
「ん」
特に外食したときはよくそっちの味も見てみたいで食べさせ合うことはある。一口ならお皿を移動させるのも面倒だし、そのまま食べさせることも多い。
「うわっ彩芽の言葉を借りるならバカップルだ」
いやいや、このくらい誰でもやってることだと思うんだけど!?
*
「お会計3500円です」
「5千円から」
食べ終わって会計する。三人で食べてもこのくらいだし、結構安いほうじゃないかな。デザートとか一枚100円以外のネタも食べてるけどね。
この金額でフィギュア2種類出たら十分でしょ。




