【第128話】コスプレイベント
「こんなイベントがあるんだけど行ってみない?」
珍しく土日にバイトも無く休みとなった前日の金曜日、遥さんがタブレットを片手に聞いてきた。実は俺達に依頼されている原画描きはあるけど・・・一応、既にノルマは終わっている。
「街角コスプレ?」
「そそ。アニメで使われて聖地となった商店街で行われるって事で結構話題になってるみたい」
遥さんからタブレットを受け取って内容を見てみる。
確かにこのアニメでこの商店街を参考にしていたというのは聞いた覚えがある。いつものごとくうちの事務所の作品で、俺の出演作だ。このときは商店街の人たちの声を結構な人数分アテレコした覚えがある。
「アニメを地元の起爆剤にか」
「だね。成功例は聞くけど、失敗例も結構聞くよね」
「盛り上げすぎると白けるっていうのもあるからな・・・」
中々調整が難しいんだろう。
「コスプレって限定じゃないんだ」
「多分、それしたら殆ど同じキャラしか集まらないから面白くないからじゃないかな?」
一応場所は聖地となった商店街だけど、内容は普通のコスプレイベントというわけだ。
商店街の先にある同じくアニメで描かれたお寺も撮影場所として開放しているらしい。
「行ってみようか」
「やった!! 限定グッズは一人二つまでだから助かる!!」
さては、誘ってきた理由はそっちだな?
「ランダムなんだよ!!一人二つじゃ無理じゃん!!」
まぁ分からなくもないけどさ。
*
「おぉぉぉ」
イベントの会場となる商店街につくと、そこには結構な人数のコスプレした人達がいた。まだ開始時間前のはずなんですが。
確か、既に閉店してしまっている店のいくつかが今回の更衣室として利用されていて、イベント開始の1時間前から開放しているとは書いてあった気がする。
遥斗は既にその様子を見て目をキラキラさせている。わたしは多くの人が入るようにカメラを構えて一枚パシャリ。皆の風景をってね。確か、アニメでのこの商店街の構図は・・・
「順番待ちか」
アニメでよく描かれた角度の写真を撮ろうとカメラを構えた人達が列になっていた。流石にあの辺りは競争率高いか。
「リンさん、遥斗さん来たんですね!!」
「お久しぶりです」
ツバサちゃんと真奈ちゃんがわたし達を見つけたのか声をかけてきた。
「おは。二人共受験生では?」
「「何のことですか?」」
息が揃ってる・・・
「まぁいいけど」
わたしだって受験生の時にイベント参加しなかったわけじゃないし。
で、ツバサちゃんと真奈ちゃんの服装はこの商店街が舞台となったアニメのコスプレだ。
でもこれ・・・
「作った?」
「分かります?」
作りがよく売っているような大量生産品とは全く違う。生地からして違うのだ。
コスプレイヤーの中には自作のコスプレをする人も数多いから珍しくはないけど、受験生が服まで作る余裕があるものだろうか? まぁ夏休み前だし、大丈夫なのかな?
「ちなみに真奈のも、うちのお母さん作です!!」
ツバサちゃんがその場でくるりと回るのをわたしはパチパチとカメラで撮る。シャッターチャンスだ。ツバサちゃんのスカートがふわりと回転にあわせて膨らみいい感じだ。
それにしてもこのコス衣装をツバサちゃんのお母さんが作ったのか。あの人、本だけじゃなくて服も作れるのか。
「いい出来」
「ありがとうございます!! お母さんにも伝えておきますね!!」
「ん」
*
『本日はお集まりいただき~』
・・・聞き覚えのある声がスピーカーごしで聞こえてきた。
『てなわけで、迷惑にならないように楽しんでください!!限定グッズについては本部横にて販売しています!!かっきー役の鈴木麻美でしたー』
姉さんですね。あれ? このイベント、うち主催でしたっけ?
「個人主催だけど事務所も絡んでるっぽいな」
遥斗がSNSを確認しながら教えてくれた。まぁ、アニメの著作権絡みで色々有るだろうからね。
*
「リーン!! 来てたなら連絡ちょーだいよー」
姉さんがわたし達に気がついたのか、わたし達の方へ近づいてきた。もう少し待ってください。今レイヤーさん撮ってるんで。急に近くに現れた有名人にレイヤーさん固まったじゃないですか。
「あさみさん!?」
「はろー、一緒に撮る?」
「いいんですかっ!? ぜひっ!!」
姉さんがレイヤーさんに話しかけて、そのまま一緒に撮影会になった。姉さんもコスプレしているのもあって写真撮影はいいんですけど、現れた姉さんを勝手に撮るカメコさん達のカメラにレイヤーさんも写り込んでますけど大丈夫ですか? わたしはレイヤーさんに許可貰ってから撮ってますけど。
「はーい。撮るならルール守ってねー」
今回の撮影のルールとしては、レイヤーにちゃんと許可を撮ってから撮影する事と、往来の邪魔をしないこと。商店街でのイベントだけど、コスプレに関係ない人も買い物したりしてるからね。
「じゃ。撮る」
「よろしくー」
レイヤーさんも姉さんを見てないで、視線こっちにください。




