【第127話】来訪2
「鈴木って一人暮らしなのか?」
「ん?」
赤崎君の隣で授業を受けていると聞かれた。別に俺と遥さんはずっと一緒ってわけじゃないし。こうやって同性の友達同士で固まることだってある。今日は赤崎君に誘われたから隣で授業を受けていた。
「一人暮らししてんのか? 前スーパーで一人で買い物してるの見たんだが」
スーパーで一人で買い物してるからって一人暮らしと考えるのはどうかと思うがな。あと結構リンと遥斗という組み合わせなら一緒に買い物していることは結構ある。
「一人じゃねぇな。ルームシェアだな」
「相手は男か?」
「さぁ」
にひひ。と笑いつつ赤崎君の反応を見てみる。
「女か!?」
「どうだろなー」
「誰とシェアしてんだよー」
言わねぇ。
*
「きちゃった」
・・・男が言っても何とも思わねぇな。
夕飯の買い出しに行って帰ってくると、マンションの前に赤崎君がいた。どうやってここのマンションを突き止めた?
「前偶然ここに入っていくのを見かけてなぁー」
見られてたか。
「というわけで。お邪魔しま~」
「なんでだよ」
なぜ家にあげなきゃならない。
「いいじゃん。いいじゃん。俺お前がどんな奴とルームシェアしてるのか気になってんだよ」
なんで、赤崎君が気にするのか分からない。
「あのイケメン鈴木とどんな奴が一緒に暮らしてるかって気にならないか」
「知らねぇ」
人が誰と住もうがいいだろうが。
「あれ? 佑樹と赤崎くんどうしたの?」
遥さんが丁度帰ってきた。タイミングが良いのか悪いのか分からない。
「鈴木が家に入れてくれないんだよ」
赤崎君が遥さんに説明する。
「んー入れてあげたら良いんじゃない?」
遥さんは少し考えた後にそう答えた。
「飯島さんは鈴木が誰と住んでるか知ってんのか?」
「まぁ、わたし佑樹の彼女だし? 何度か行ってるから知ってるよ」
もっというと本人だがな。
「ルームメイトってどんな奴なんだ?」
「えーと、漫画家兼アニメーター兼声優?」
「なんだそいつ・・・」
遥斗の職業で言ったらそうなるな。本当に一覧にしてみたら遥斗はなにが本業なのか分からないな。多分同人漫画家が本業になるんだと思うけど。あっ、大学生が本業か。
*
「ひっれぇ!!」
まぁ2LDKだからな。結構広いぞ。
「あっそっちの部屋入るなよ。ルームメイトのだから」
遥さんの部屋には入るなよ。そして今の間に俺の部屋の化粧品やウィッグを遥さんがクローゼットやらに片付けてくれている。とは言っても元々俺は広げておくタイプじゃないから、見えるようにおいてある化粧品を片付けるぐらいだ。まぁあったとしても初日にメイクで化けれるのを教えているから、メイク道具があったところで問題にはならないと思うけど。
「やっぱりルームシェアの方が安くすむのかなぁ・・・俺も一人暮らししたいんだが、参考にしようと思うんだが」
急にうちに来たいと言い出したのって自分の一人暮らしの参考にするためだったか。
「まずはワンルームのやつを見てからじゃねぇのかな。そういうのって」
「もう見てきたんだよ」
やっぱワンルームって狭いわ。と赤崎君。まぁ確かに一度俺もワンルームの見学に行ったことあるが、物凄く狭く感じた。あのサイズに冷蔵庫やなんやら置くと考えたらリン用の服とか持っていけないと思っていた所に遥さんからのルームシェアのお誘いがあって今の状況になっている。
「これで月いくらよ?」
今は遥さんと二人で割っているが、実際の金額を言うと、
「流石に学生の一人暮らしでその金額はきちぃな・・・」
ただ、ここに一人暮らししている人もいるからな。いや、大崎さんは例外か。
「ここって風呂トイレ別か?」
「もちろん。更に脱衣・洗面所付き」
脱衣所に洗濯機置場完備という素晴らしい物件だ。その分学校から少しあるけど。
赤崎に風呂トイレと脱衣・洗面所を見せる。一人暮らしの参考にするならどうぞ見て下さいな。ただ参考にならないと思うけど。
「んん? あぁ。やっぱりそうか。
せめて風呂トイレ別がいいよなぁ・・・」
「でも、ここよりもっと学校に遠かったらあるかもよ?」
俺の部屋の片付けを終えて、遥さんが会話に混じってくる。
「二人ってどうやってここ決めたんだ?」
「えーと、何だっけ? もういい加減時間なくなって、値段と距離で決めたんじゃなかったっけ?」
「そうだったかなぁ」
大学合格と仕事のゴタゴタで3月終わりギリギリに決めた記憶はある。
「ん。んん?」
何か今赤崎君に聞かれた言葉で一瞬気になったのがあるんだが・・・
「へぇ、"二人"で決めたんだな」
・・・あれ?
もしかしてルームメイトというのが遥さんというの気が付かれた? わざわざ強調して発言したし。
「分からいでか!!アレみろあれ!!シンクに並んだおそろいのコップに洗面所に並ぶ化粧品とスキンケアのメイク道具、靴箱のヒール!!」
ぐぬぬ。急すぎて隠しきれなかった物達だ。俺の部屋のものには気が向いたが、そういや洗面所にもメイク道具は並べてた。
「つまりはルームメイトは女性!! 鈴木とルームシェアしていてもおかしくない女性といえばっ!!」
赤崎君はびしっと、遥さんを指差し
「飯島さんしかいないっ!!」
正解です。
一つだけ間違いがあるとすると、靴箱のヒールは俺のだ。




