【第124話】活動再開イベント2
「あずさ、この娘がリンちゃんだ」
高崎さんに、うちの大学の漫画研究会のサークルブースに連れてこられた。高崎さんの下の名前はあずさなんですね。
あと、近寄るつもり無かったんですけどねぇ・・・前に話した大学の妹がちょうどサークル参加してるから紹介するよということで連れてこられた。
同じ高崎さんだと区別がつかないから、社会人の方を高崎さん、大学の方があずささんと区別しておこう。
「兄さんが言ってた娘?」
「そそ。あずさと同じ大学だってよ」
高崎さんと話していたあずささんがわたしの方を向く。
「ども。鈴木リンです」
「どうも。高崎あずさです」
一先ずは挨拶。
「リンちゃんってあのリンちゃん?」
「どの?」
わたしってどんな感じで伝わってるんでしょうか?
「声優のあさみん、いさみんのダブル巨塔の友達って感じ?」
確かに友達ではありますけど、片方は姉さんですけどね。
「まぁ間違いじゃない」
友達付き合いを否定するつもりはない。
「いいなぁー」
そうですかね。友達付き合いを羨ましがられるのもなんだかなぁとは思いますが。
*
「リンちゃんって確か色んな声出せたよな?」
「ん」
確か、カラオケでと高崎さんに言われる。確かに高崎さんの前でカラオケで声を変えながら歌った覚えはある。
確か声を変えて歌っていて声優? と聞かれたんだったかな。
「えっほんと!? 演技って出来る!?」
「出来なくはない」
「リンちゃん声優だからなぁー」
「えっ!?」
「それ肯定はしてない」
「でも、否定もしてないでしょ?」
えぇ。否定はしてませんよ。でも肯定もしてないんです。
「リンちゃん。サークルって入ってる?」
あずささんがぐいっと近寄ってきて聞いてきた。
「入ってない」
「ぜひ、アニメ研究会に!!」
声優不足なんです。と顔を多いながらあずささんが言ってきたけど。
「ごめんなさい」
わたしリンとして大学行ってないんで。高崎さんに大学名教えたのミスったかな。
*
「あっリンさん。おかえりなさい」
遥斗のブースに帰ると大崎さんがブースの中にいた。どういう事?
「離れてから、あれ? 今さっきのリンさん達じゃ? って思って帰ってきてみたの
・・・あと彩芽においていかれたのも有るけど」
「で、そっちにいても通行の邪魔になるから入ってもらったんだ」
「なる」
登坂さんおそらく初参加の友達を置き去りにするのはどうかと思いますよ。
「遥斗さん達ってどういった本作ってるんですか?」
「こんなの?」
遥斗がBLじゃない方の本を大崎さんに渡す。耐性がない人にBLは毒になるからね。
最初はペラペラと読んでいた大崎さんだが、途中からは真剣に読み始めた。なんというかまたファンが増える予感。
*
「今までのってありますか?」
読了した大崎さんがキラキラとした目で遥斗を見る。あぁこれはまたファンが増えた。
「紙媒体は家にはあるよ」
データなら今もあるよ。と遥斗は鞄から取り出したタブレットを大崎さんに渡す。
「おぉっ!!ありがとうございますっ!!」
ハマったな。お嬢様だと思っていたけどこういったサブカルチャーも全然OKらしい。いや、元々地下アイドル追いかけてたぐらいだからサブカルチャーもOKになるか。
「大崎さんってあの食品会社のご令嬢のはずだけど、なんで一人暮らししてる?」
ちょっと前から気になっていたことを聞いてみる。
「お父様から嫁入り修行代わりに放り出されたんです。
包丁なんて調理実習以外で初めて握りました」
お手伝いさんもいない一人暮らしで家事を覚えろってことらしい。嫁に行ったときに何も出来ないのは駄目だ!!とのこと。
ただ包丁を握ったこともないような人に急に一人暮らししろって・・・
「スパルタ」
「ですよねっ!!お父様もお母様もひどいんですよっ!!」
お米の炊き方から頑張ってスマホで調べてなんとかって感じです。と大崎さん。調べて失敗しないのなら十分だと思いますけど。だって・・・
「まぁ遥斗よりはまし?」
「え? 何リン喧嘩売ってる?」
「包丁で自分の手を何度も切ろうとしてた」
「うぐっ」
「妹のほうが料理がうまい」
「ぐはっ」
「遥斗さんはいいじゃないですか。リンさんがいますし」
「そーだ。そーだ。俺にはリンがいるから出来なくてもいいんだ」
自分の本当の性別を思い出してくださいよ。あと性別関係なく料理とか家事は出来たほうがいいですからね。
じーっと見るわたしの視線から感じ取ったのか・・・
「ダイジョウブ。洗濯ナラデキルカラ」
それ内心大丈夫だと思ってないですよね。まぁいいですけど。わたし料理好きですし、怪我されたくないんでわたしが料理しますから。




