【第123話】活動再開イベント1
「サークル『ブレンド』、休止期間からふっかーつ!!」
ブースを設置し終わった遥斗がバンザイしながら宣言した。周りのブースからパチパチと拍手が返ってきた。ありがとうございます。
イベントには参加していたから長いこと離れていた気持ちは無いけど、やっぱりサークル参加するというのはまた違う。
「ブレンド活動再開。おめでとー」
・・・先生。自分のブースはいいんですか? 準備段階からこっちのブースに来ていた先生が祝福の言葉をくれる。既に遥斗の新刊を手に読んでいる。しっかりと先生の今回の新刊も貰ってるけど。
「あー大丈夫大丈夫。今日は売り子さんもいるし!!」
誰が・・・? と先生が指差すブースを見るとツバサちゃんがいた。いや、なんでツバサちゃんが? しかも女装コスプレしてるし。確か先生のクラスになったんですよね。前行ったときのエドちゃんの担任でツバサちゃんはエドちゃんのクラスメイトって言ってましたし。
「ツバサちゃんってこの耐性というかもうどっぷりだから、手伝ってもらおうかなーって」
先生が自分の持ってきた自分のところの新刊を手に話す。
報酬は晩御飯とR18本です。と先生。確かにツバサちゃんBLにどっぷりだけど。あれ? まだツバサちゃん17歳じゃ・・・
「ばれなきゃ大丈夫」
それ見つける側って先生ですよね。どっちかといえば先生の方がバレたときのリスクがでかい気もしますが。年齢制限のかかっている本を自分の生徒に渡してますし。
「やばい!!ツバサちゃーん。絶対秘密ねぇぇぇ!!」
先生が自分のブースに帰っていた。
「相変わらず、騒がしい」
「あはは」
*
「活動再開したんですね。またよろしくお願いします。新刊ください」
「はい。こちらこそお願いします!!」
開場からひっきりなしに遥斗のブースに人が来て活動再開のことについて触れつつ新刊を購入していく。
「ファン多い」
これだけ来るなら、もう誕席あたりになってもいいんじゃないかな。
「その一端をリンが原因なの知ってる?」
「ん?」
どういうことでしょうか。
「有名声優と仲がいいリンがいるからで見に来た人たちが購入して次もってなってるっぽいんだよな」
んー、一応わたしがきっかけではありそうですけど、結局は気に入ってくれたんですよね?
「気に入ってくれてるっぽいな。色々好意的な感想がSNSに上がってたし」
「んー、ファンが増えてよかった?」
きっかけが何であれ。
「まぁね。気に入ってくれるのは嬉しいからリンは気にしなくてもいいよ。絵描きの承認欲求舐めるなよ」
好意的な感想を貰って嬉しくならないやつなんていない・・・はずだから。と遥斗は続けた。なんで一瞬止まったんでしょうか。
「いやー否定的な理由を貰って喜ぶドMを見たことあったから・・・」
なるほど。否定的な内容を貰って燃える人だっていますよね。
*
「活動再開おめでとうございます。新刊くださーい」
「ありがとうございますっ!! 500円です」
聞き覚えのある声にわたしが顔を上げると、そこにはボブの髪型に赤縁のメガネのわたし達と同じくらいの年齢の女性が一人。
「彩芽ぇー歩くの早い!!」
その女性に声をかけながら近づいてきたのは、少し幼い顔立ちで腰までかかるロングヘアの女性。
「加奈。ここは戦場よ。ゆっくり歩いてたら勝てないわ」
「せ、戦場!?」
そこにいたのは、大学の同級生の登坂さんと大崎さんだ。多分わたし達はばれないと思う。ちなみに赤縁メガネが登坂さんで、ロングヘアが大崎さんだ。
「あっと、すみません。500円ですね。はい。お願いします!!」
がま口財布だ。ちらっと見えたけどその中には500円玉と100円玉が大量に入っていた。登坂さんこういったイベント慣れてます? そういえば夏の祭典には何回か行ったことあるとか言ってた気がする。
「はい。新刊です」
「ありがとうございます」
登坂さんが大事そうにリュックに詰めている。今までも他のブースを巡ってきたのか、リュックの中には色々入っていた。
「では、これからも応援しています!!」
登坂さんと大崎さんが次のブースへと移動していった。
「今まで登坂さんって来てたっけ?」
「んー、覚えがない」
口ぶりからして一度は来たことあるんだと思うけど・・・まぁ全員覚えているわけではないし、覚えてないだけの可能性はありますけど。
*
とりあえず店番は遥斗だけに任せてわたしは買い物に出る。
「お、おぉう・・・」
ついとあるブースを見つけて声を出してしまった。
わたしが見つけたブースは、大学の漫画研究会のサークルブースだ。見覚えのある会長とあの時話してはないけど絵を描いていた一人と、あれは・・・アニメ研究会の会長?えーと、高崎さんだったかな。
今まで気にもとめなかったサークルで大学だと思い出さなかったけど、前からこんな人が同じように参加していたのを見た記憶はある。近付かないようにしよう。ばれない自信はあるけど、リスクは減らしたい。
「あれ? リンちゃん?」
踵を返して遥斗のブースに帰ろうとしたら、前のボウリングで幹事をしていた高崎さんがいた。
「こんにちは」
「こんちゃー、今日は遥斗君の活動再開だっけ?」
「ん。知ってたんだ」
「まぁねー。遥斗君のサークルって結構有名になったし」
「ん。わたしのせいですけど」
「あはは!!まぁキッカケはなんであれリピーターが作っていうのはモチベもあがるし良いと思うよ」
ところであさみんのサインとか手に入れれない? と聞かれる。姉さんのファンですか。
「手に入れれるけど、本人から貰ったほうが良いと思う」
記憶にも残るし。
「確かに記憶は大事だよな。頑張って予定空けるか」
社会人は大変ですよね。




