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アナタの本当の姿は?  作者: kame
高校三年生
110/339

【第110話】卒業式

 雲もなく澄み渡るように晴れきった空、視線を下に下げ、校庭に植えられた桜を見ると、この日を待っていたとばかりに満開となり、風で桜の花びらがひらひらと数枚落ちてきている。

 今日のために綺麗に掃除された校庭に校舎は太陽の光を受け、輝いているようにも見える。


 俺の周りにはきちんと制服を着こなしたクラスメイトが教室で時間を待っている。いつもの表情ではなく皆が引き締まった顔をしていて緊張感がある。そんな俺達生徒の前にはいつもと違う袴姿の華岡先生が立つ。


 今日、俺達は高校を卒業する。



 *



「あー鈴木君ちょっと!!」


 袴姿の華岡先生が俺を呼んだ。

 なんですか。折角人が今見た風景を言葉に表していたというのに雰囲気ぶち壊しにして。


「チョット涙でメイクが崩れたから直すの手伝って!!」

「えぇ・・・」


 卒業式で泣いてくれるのは少し嬉しいんですが、泣いてメイク崩れたからって卒業生に直させますかね。確かに先生にメイクを教えたのは俺ですが。

 アイラインが滲んでパンダ目ですね。


「この涙はっ、ちがっ、か、花粉症だから辛くって」


 ・・・それはそれでお疲れ様です。

 でも、先生が花粉症というのは初めて聞きましたよ。・・・あぁ、花粉症ということにしておきます。


「ここで直していいですか?」


 思い切り生徒の前ですが。


「他にないし時間もないしお願い」

「はいはい」


 先生からメイクポーチを受け取って漁る。涙目にはウォータープルーフのアイライナーがあればいいんですが・・・ないな。

 とりあえず目尻だけメイクを一旦落として綺麗に整えて・・・


「遥さんアイライナーコート持ってる?」

「あるよ」


 遥さんから100均のアイライナーコートを受け取ってぱぱっと先生のメイクを整えた上で防水加工。


「はい。これで花粉で目をやられてもある程度は持つと思います」

「ありがとう!!」


「本当に鈴木って見た目によらずメイクとか得意だよなぁ」

「ほんと、そういうのに無頓着っぽい姿してるのにね」


 へいへい。どうせ俺はもさい系男子ですよっと。



 *



飯島(いいじま) (はるか)

「はい」


 うちの高校は一人ずつ卒業証書を渡すのが伝統になっているから、名前を呼ばれた遥さんが壇上に上がっていく。

 壇上の上には校長と、名前を読み上げる華岡先生が立っている。

 校長の前で止まり一礼。卒業証書を受け取って遥さんが壇上から降りる。そしてまた次の人が呼ばれる。


鈴木(すずき) 佑樹(ゆうき)

「はい」


 俺の名前が呼ばれた。俺も壇上まで移動して校長から卒業証書を受け取り、そして壇上から降りるため振り向いた。意外とこの3年間で色々なことがあった。ほとんどは学校外のことではあったけど、色々な人とも触れ合えたし、遥さんとも出会うことが出来た。自由な校風のお陰で色々なことが出来た高校3年間だった。


渡辺(わたなべ) 隆一(りゅういち)


 うちのクラスの最後が呼ばれる。


「3年A組。34名」



 *



『校歌斉唱』


 本当に俺達卒業するんだな・・・思ったより高校での思い出がある。

 毎日のように使った屋上にそこから眺めた校庭の景色。教室の景色。クラスメイトの悪ふざけに全力で乗ってくれた教師陣。ふとその光景を思い出して少しだけ涙が出てくる。卒業生の方から嗚咽が漏れてくる。俺と同じ様にこの3年間を思い出しているのかもしれない。


 あぁ。でも・・・・・・校歌は思い出せない。

 校歌の伴奏がなくなる。一応体育館の前に掲示されている校歌を見ながら歌った。


『これにて第64回。卒業証書授与式を終了いたします』


 本当に卒業なんだな・・・



 *



 式が終わり、桜の木の前でカメラマンによるクラス毎の写真撮影が始まる。

 カメラマンに撮ってもらう以外にもスマホで皆は思い思いに写真を撮っている。


 クラス毎の写真を撮ってもらった俺は持ってきた一眼レフを手に今までお世話になった校舎から屋上。集まっている教師陣をファインダーにおさめていく。

 思ったより思い出のある場所がある。


 皆の集まっている体育館前に戻ってくると遥さんと早乙女さん、アカネ君、近藤、柊さんが須藤姉弟と一緒に居た。

 他のクラスメイトも交流のあった下級生や部活の方に顔を出しに行ったりしているんだろう集まっている人数は減っていた。


「「先輩!!卒業おめでとうございます!!」」

「ありがとう」


 二人の写真もパチっと一枚。


「それ先輩が写ってないじゃないですか。ちょっと待っててください」


 おーい。と人を呼んでくれる須藤さん。やってきたのは遥さんに前に告白した須藤さんの幼馴染の男子だ。

 手には一眼レフ。あーあれうちの学校の写真部のカメラだ。がっしりした体型の見た目だったから運動部かと思ってたけど違ったか。


「じゃ、撮って」

「はいはい。先輩。そっちのカメラで撮りましょうか?」

「ん?あぁ。はい。お願いね」


 俺がカメラを渡すとしっかりとストラップを首にかけた。そして手慣れた様子でカメラを操作している。


「じゃぁ撮りまーす。はい。チーズ」


 フラッシュは光らないが撮れたようだ。


「どうでしょうか?確認してもらえますか?」

「んーおーけー」


 誰かが被っているというわけでもないし、変顔をしているわけでもない。オーケーでしょ。



 *



「そういえば先輩。リンさんって人知りませんか? 卒業式で名前を全員聞いてたんですけどいなくって」


 須藤君から聞かれた。近藤と柊さんは自分のクラスの写真撮影があるからここにはいない。

 遥さん、早乙女さん、アカネ君からどうするの?という視線が来る。


 まぁいいんじゃないかな。

 須藤姉弟とも今後共仕事で一緒するけど、そろそろ前みたいにリンは一応男だからという話しを声優間でしてもいいかもしれない。何故か今まで黙ってたし。本当になんでだろう。姉さんがどのくらいで気がつくかやってみようという話をしていた記憶はあるんだけど。


 リンの声に整えて・・・


「ずっと近くに居たのに」

「「えっ!?」」



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