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アナタの本当の姿は?  作者: kame
高校一年生
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【第11話】もう一組4~告白~

 俺、近藤(こんどう) (のぞむ)は高校入学時に一目惚れと言うものをした。

それは入学式でのことだった。


 桜の花が風で吹き荒れる中、暴れるスカートを手で押さえていたボブカットの少女ー(ひいらぎ) 千里(ちさと)に一目惚れをしたんだ。

ただ俺は話しかける自信は一切なかった。その立ち姿に俺は一目惚れした。

同じクラスだったことに、内心相当喜んだ。ずっと見ていると変態と思われるかもしれないと思っていつも視線の端に入れる程度で見つめていた。

授業で黒板に回答を書く時には、怪しくない程度に柊さんを見つめていた。


 ただ、どちらかと言うと女顔の俺はかっこいいとは全く言えないし、華奢と言われる体には一切自信がない。話しかける機会もなく春が過ぎ、夏が過ぎた。

夏服の制服になった時には、また別の魅力を柊さんから感じてさらに惚れ込んだ。


 彼女が彼氏がいないというのは、学級委員でもある飯島さんと話している時に漏れ聞こえる話で分かっていたが、全く話しかけれなかった。

彼女はどちらかと言うと活発と言える性格をしていて、暗い自分よりも物凄く輝いて見えた。



 文化祭で飯島さんがボソッと漏らした異装喫茶が決定したときは、俺が女装をするという考えよりも柊さんの男装姿を妄想してしまって内心では悶まくった。

ただ準備段階で料理担当とホールを分ける関係で料理が出来るといった柊さんは料理班に行ってしまって男装姿を拝むことはできなかった。


 そんな男装姿を拝めなくなった事で意気消沈していた俺は、先生が持ってきた姫服を着て教室に帰ってみたが柊さんに声をかけられることもなかった。声をかけてきたのはヅカっぽくなった飯島さんと女子にしか見えない鈴木だった。

飯島さんと鈴木はなんというか息の合った動きで俺達男子の着こなしを直していき、


「やっぱメイクしないと男子だな」

「まぁそれは仕方ないか」


と、必要なメイク道具を紙に書き出していた。その横にどこで手に入るかも書かれていた。

ほとんど100均で手に入るのと、一部は専門店で買ったほうが単価的に安いなどと会話していたが、鈴木って男だよな?普通に女子の会話に混じってないか?違和感はまったくないんだが、メイク道具なんて男はどこで売ってるのかすら怪しいと思うんだが。

その会話に柊さんが混じり、さらに食品の購入先まで考え始めた。安い店と言うのは俺でも知っているが、更にそこから安く手早く衛生的に提供できる食べ物がポンポンと出てくる鈴木はなんなんだと思った。



そして当日、俺達男子は鈴木にメイクされて、


「これが・・・俺・・・」


と言ってしまうのは仕方のないことだろう。

元々女顔という自覚はあったが、それを活かしつつ美少女に仕上げてくれていた。他の男子も美少女か美女に変身してしまったのだ。

明らかに鈴木のメイク技術はおかしい。全く別人になる。それぐらいの変化は普通普通と女子達が言っていたが、普通の男子高校生がそのメイクを出来るというのに疑問を持ったのは俺だけだろうか。

鈴木は俺達のメイクの出来に満足気に頷いていた。


 丁度近く(俺から寄っていっただけだが)にいた柊さんからかわいい!!という言葉を頂き、ありがとうと答えておいた。

久しぶりに話した言葉だった。その前は・・・プリントを配った際に少し話した程度だ。

その後、シフトが一緒(※偶然)になった柊さんと何度か話すことはあったが、やはり俺の気持ちは伝えることができなかった。


 文化祭が終わり、家族に女装姿の写真で弄られつつも柊さんに声をかけることも出来ない日々は続いていた。

 ふと夜中に肉まんが食べたくなり近くのコンビニまで出かけると、途中で男装していた柊さんを見つけた。カツラを被っているがアレは柊さんと俺は断言できた。

入学した時からほぼ毎日柊さんを観察しているのだ。後ろ姿から柊さんを判断することはそう難しくはない。

その時は後ろから眺めるだけで終わったが、また別の日にも柊さんが男装姿で夜の街を徘徊しているのを何度も見かけた。

つい文化祭で拝めなかったその姿を拝んでしまったのは悪くないと思う。


 で、その柊さんにどうやって近づこうかと考えみたら、柊さんが男装なら、俺は女装すればいいと何故かそのときは思ってしまった。

 あの時のメモを見た記憶から色々メイク道具にカツラを集めてみたり、服をネットのフリマアプリで集めたりして準備が出来たが、部屋の中で女装を試すのと外に出るのとでは全く違うことに気がついて、俺は物怖じした。

 バレて見つかった場合は。と考えてしまって中々次の一歩を進めることが出来なくて、SNSの裏垢に目線を隠してアップしてみたりと他の人の反応を確認して、と時間がかかったが、俺は女装で外に出た。


 既に秋が終わり冬の寒さがやってきている時に出た時の服装は白のワンピースに母親から内緒で借りた黒のコートをあわせていた。とても寒かった。

柊さんのいるであろうルートに合流してみると、意外とすぐに柊さんに合流することが出来、声をかけようとしたところでくしゃみしてしまった。

びくっと後ろを向いた柊さんに一発で女装だと見抜かれて、クラスメイトの俺ということもすぐにバレた。

メイクが悪かったらしく、全然俺が隠れてないとのことだった。

柊さんは飯島さんの女子に施していた男装メイクを面白そうで覚えて実践してみていたらしい。


そこから俺達の秘密で不思議な関係は始まった。



 二人で夜な夜な集まり柊さんから俺のなっていないメイクを教えてもらったり、俺から柊さんの女っぽいポイントを言ってどう修正するかという話をするようになり、見た目は男子、女子に見えるようになった頃から声が気になり始めた。

外見上はもう問題ないとして少しずつ昼間も出かけるようになり、何故か俺は偶にナンパされつつカラオケで声の練習をした。

 柊さんが鈴木君がいれば声はなんとかなりそうだなーとは言っていた。どうやら文化祭の準備の時に俺達男子が教室に戻る前に女声を披露していたというのだ。

 俺達のこの関係を教えるわけにはいかなかったから呼べないが、鈴木君の普段の声と変えた後の声の差は凄かったから近藤君でもいけるっ!!と柊さんは励ましてくれたけど、ネットの情報だけで中々うまく行かなくて行き詰まっている時に、遥斗さんとリンさんに会った。


 二人はカップルで俺達が声で困っていることを話すと、鈴木を紹介され、連絡しておくから声かけてみてと言われた。

やっぱり鈴木に聞かないといけないらしいから腹を括る。


 次の日に学校で鈴木に声をかけてみると遥斗さんから連絡が来ていたのかすぐに話が通じた。

鈴木が複数の声を使い分け、途中から来た飯島さんの彼氏と言うことも分かり、俺の理解力がパンクしそうになった時に飯島さんが柊さんの男声の先生として男声を出したことで俺達は声を上げてしまった。



 その後は驚くほど順調になった。

 声の出し方を四苦八苦しながらも教えてくれた鈴木には頭が上がらない。これでレディースデイを楽しめる!!おっと、最近の目標が漏れた。

最近の目標はレディースデイの店に入るということだ。俺だってケーキを安く食いたい。

何と言っても女だと色々なところで優遇されるのが最近楽しくなってきた。食べ放題でも女性料金のほうが安いし。


 鈴木にメイクも教えてもらい、徐々に違和感のない仕上がりになっていくにつれて、ふと俺がなぜ女装を始めたのか思い出した。

『柊さんに近づくため』だ。

 それは十分達成したと言っていいだろう。カップルの真似といって女装状態であれば柊さんは抱きついてもオッケーという了承は得るぐらいに近づいた。

ヘイ。カモン!!と言われた時には驚いた。男前だ。


 ただ俺達のこの関係が終わったらどうなると考えると不安になってきた。

今はまだ女装・男装の技術を高めるという名目で二人で会っている。

事情を話している鈴木からは告っちまえ。と言葉を貰っているが、今の趣味が女装の俺なんかが柊さんに告白なんか出来ない。

まさか目的のために女装していたはずなのに、女装自体が楽しくなってしまうとは思わなかった・・・





 今日は二人でカラオケに来ていた。女声・男声で歌も出来たら動画でもあげようかーという話をして今練習中だ。

出来るなら鈴木と飯島さんも誘って4人ででもいいかもしれない。あの二人なら普通に歌えそうだ。


「ねぇ。のぞみん」

「なに?」


俺は柊さんからのぞみんと呼ばれている。


「これ一緒に歌おう」


と入れたのはボカロのデュエット曲。両声類を調べる時にその曲は俺も何度も聞いたことがある。


「おけ」


イントロが始まる。

男パートを男声の柊さんが、女パートを俺が女声で歌う。


 曲が半分を過ぎた頃、柊さんが急に女パートを地声で歌い始めた。俺はあれ?と止まる。


「気づいてるあと少しで届く距離・・・服をひいてみる」


と柊さんは俺の服を掴んだ。


「・・・好きかもね」


柊さんが歌詞ではなく俺の方を向いて言った。え・・・?


「ゴメン・・・歌で言うことじゃなかったよね」


え?




「好きです。私と付き合ってください!!」

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