【第103話】文化祭2
「うわっ、あっちとはまた違う美少女だ」
いや、遥さんはこの姿を見た事あるでしょうに。前は眼鏡はしてませんでしたけど、わたしこのウィッグとメイクであなたのバイト先行きましたよね。
後そんなに美少女ですか?
「一年以上前のこと覚えてるとでも?」
確かに見たことはあるけどさ。と遥さんは頷きながら言った。覚えてんじゃん。
「あーあー、ごほん」
リンの声とも悠里の声とも違う女子の声。遥さんの声に寄せた女声を出す。とりあえずコレをこの姿の声としておこう。どうせ女装としてステージに立つわけだからリンとも悠里ともかけ離れた声で。ステージに立つからメイクもいつもと違うのにしている。
「うわっ、すごっ」
先生が声を聞いて感嘆の声をあげた。変声はわたしの得意分野ですからね。
「で、コンテストはいつ?」
外堀を埋められて着替えたは良いけど、まだ文化祭が始まって一時間も経ってない。メイクしていたのは文化祭の準備時間だったし、わたしの着替え自体は直ぐに終わる。慣れてるからね。
「15時からね」
「・・・まだまだじゃないですか」
「先に捕まえておかないと帰られると困るし!!」
しかもこれ生徒会企画で、突発だったから教師も参加者集めを頼まれて、クラスから一人か二人出してほしいって。と先生。それわたしが文化祭に来なかったらどうするつもりだったんでしょうか。
わたしとしてはアカネ君を推してみます。きっとステージ上でも堂々としたパフォーマンスを発揮してくれると思いますよ。
*
「飯島先輩。おはようございます。たこ焼きいかがですか?」
たこ焼きを売り込んできたのは須藤さんだ。
さて、わたしがいることは分かっているんだろうか。
「うん。おはよう」
「えーと、こちらの方は・・・?」
はじめましてですよね?と須藤さんから声をかけられる。
あっこれ遥さんを見て声をかけてきたパターンだ。
「おはよう」
折角なので声を変えたまま。
「?おはようございます」
誰だろうと思いながらもちゃんと挨拶を返してくれる須藤さん。
「今さっき朝ごはん食べた所だからいいよ」
次は地声で。今回この姿は女装と大々的に言うつもりの姿だから、ばらしたって問題は無いわけです。
「え゛っ!?鈴木先輩!?」
声で分かるんだ。
「おう。なんか女装コンテストに出てくれーって言われて、なぜか朝っぱらから着替えさせられてるって感じだ」
本当になんでだろうか。声をかけておいて直前に着替えても良かったんじゃないかと思う。
「あー、あの突発のやつですか」
須藤さんは知ってたんだ。
「まぁそれなりに興味はあります。それにしても先輩、可愛くなりましたね」
そんなに可愛く作っているつもりはないんだが。
「その姿って名前つけてたりするんですか?」
「いや、ないよ」
「おぉっ、声も凄いっ!!」
この姿で地声ってちょっと違和感あるから声は変えさせてもらう。口調はそのままだけど。
でも須藤君もこれくらいは・・・いや、あの子そこまで声は変えられなかったな。
「じゃーその姿に名前つけよう」
遥さんが取り出したるはスマホ。そこには名前を生成するサイトが開かれている。そのサイト同人誌描くときにそれなりにお世話になってるからブックマークしていてもおかしくはない。名前に意味を持たせないモブの名前はこれで決めることが多い。
「決まらなかったら最終的にこれで」
おけ。
*
「というわけでその姿は『里奈』で決定!!」
ふわっとした茶髪におっとりめのメイクだからゆるふわ系の名前で考えていったらそうなった。
いや、別に名前なんてどうでもいいんですけど。わたし色々名前持ち過ぎじゃないですかね。
「里奈せんぱーい!!」
須藤さんもノリノリだしまぁいいか。
「確かイベントは15時からでしたよね?行きますね!!里奈先輩なら優勝間違いなしですし!!」
というか違和感なさすぎて、女子が紛れ込んでるとか言われそうです!!と須藤さん。出し物の担当はいいんですかね。
「幸平に変わってもらうんで!!」
おぉう。須藤君、頑張れ・・・
*
14時半ぐらいに出場者に集まって欲しいというアナウンスが流れたから、遥さんと一緒に食べていたたこ焼きを一気に流し込んで控室に入った。
そこには今回参加者であろう男子が数人。まだ集まってなさそうですね。参加者名簿には結構名前入ってますし。
「えっ、なんで女子が!?」
・・・あぁ、普通控室来る場合は普段の姿ですよね。はい。わたしが特殊なだけですよね。




