71 極悪非道エルフと真紅の悪魔2
「ちょっと、お嬢様!?嘘だよね?」
ルナリアの手に浮かんだ魔法陣と周囲を見回しながら、スタリアは状況を打開するべく思考を巡らせる。
そして一つの手段を思いつくと、彼女は引きつった笑みを浮かべながら、手の中に愛用の大斧を転移させた。
「何のつもりだ?」
訝し気に眉をひそめるルナリア。
「せーのっ!!」
ブンッ!!
その問いに答えることなく、スタリアは大斧に魔力を纏わせ、盛大に振るった。
途端にスタリアの魔力が当たりに吹き荒れ、周囲は閃光に塗りつぶされる。
「ただの目くらましか?私をなめ過ぎだ」
一切動揺することなくルナリアはそう告げた。
しかしスタリアはしてやったりというように口の端を持ち上げてルナリアを見据える。
「その考えは私をなめ過ぎだよ?お嬢様!!」
スタリアがそう叫んだ直後、ルナリアの手に集まっていた魔力は唐突に形を変え始める。
ハッとしてルナリアは必死に魔力を抑えようとするが、最早取り返しのつかない所まで魔法陣は形成されていた。
次の瞬間、魔法陣から大量の蝙蝠が解き放たれ窓の外へと飛び出していった。
「……おいスタリア。そこになおれ」
もはや形容することすら恐れるような殺気を辺りに撒き散らしながら、ルナリアはユラリとスタリアを見据える。
「ごめんお嬢様、私用事が……」
「安心しろ、用事殺してやるから」
「言ってること無茶苦茶だよ!?ってこっち来ないでぇぇぇ!?」
一歩一歩近付いてくるルナリアにスタリアは小鹿のように悲鳴をあげた。
そんな彼女を見据え、ルナリアは口を歪めると足を振り上げる。
「アー、コレハ長クナリソウダナ……」
どこか諦めたようにナイが呟き終えるや否や、地下街中にスタリアの悲鳴が木霊した。
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「懲りたか?」
「はい……」
たった十分でこれである。
ナイの予想は大きく外れ、スタリアは僅か十分でルナリアの責めに屈服していた。
「ったく、こんなんで根を上げるなら最初からやんなよ、詰まんねぇな」
「だ、だってお嬢様?さっきから魔力の気配がおっきく成ってるよ?」
満身創痍の体を無理に起こしながら、スタリアはふにゃりと笑う。
しかしその言葉にルナリアは心底嫌そうな顔をした。
「……知ってる、あいつらが来るな」
そう言った次の瞬間、床に大量の魔法陣が現れ、天井を照らし上げる。
「ほら来た……」
溜息を吐くと、ルナリアは腰の剣を引き抜き、床に突き立てた。
それと同時に魔法陣から悪魔が次々と現れ、膝をついて頭を垂れていく。
その光景を見回しながら、ルナリアは見覚えのある悪魔に近づくと冷たい声で語りかけた。
「ラグザール、今回の招集に応じたものは?」
「列席者49名、全員です」
恭しく答えるラグザール。
その答えに溜息を吐くと、ルナリアは雰囲気を柔らかくして全員に向き直った。
「お前ら、いつまで打ち首みたいな恰好してんだ?さっさと立て」
その言葉と同時に悪魔たちは一斉にゲラゲラと笑い出し、顔を上げた。
「おい、カレア。何笑ってんだ?殴るぞ?」
「仕方ないだろ?……ッハハ!!ルナリアにこんなの似合わないよ」
そう言うとカレア---オーナスカレアはケラケラと笑い続ける。
「所で、なんで私達を呼んだんだい?戦争でもするのかい?」
「スタリアの馬鹿が悪戯してくれやがってな。簡単に言えば事故だ」
その答えに悪魔たちは再び笑い出す。
「ねーねー、おねーさん」
不思議そうな顔をしてカインはルナリアの裾を引っ張る。
「カインどうした?」
「このひとたちってだれ?」
「こいつらか?列席者だ、って言っても分かんねぇか……まぁ悪友みたいなもんだ」
「適当だな!?」
誰かがそう言うとまた笑い出す。
「まぁその悪友を呼びだしたからにはそれ相応のもてなしがあるんだよな?」
そう言ってニヤニヤ笑う悪魔、対してルナリアは悪辣に笑う。
「当たり前だ。マシュリ、ありったけの酒買ってきてくれ。馬鹿どもが呑むぞ」
「さっすがルナ嬢!!」
ルナリアの豪快な宣言に悪魔たちはワッと歓声を上げた。
そんな彼らの姿を見ながら、ルナリアはキョトンとしているカインの頭を優しく撫でる。
「眠くなったら部屋に行って寝ていいぞ?あの馬鹿共はいつまで起きてるか分からん」
「んー、がんばっておきてる!」
そう言いながらもカインは大欠伸をしていた。
そんな彼を優し気に見つめるルナリア。
「フフフ、オ前モ変ワッタンダナ。ルナリア」
そんな師弟を見てどこか満足そうなナイはワインを一口飲んで見えない空を仰ぐのだった。
お久しぶりです。再び現れた新参猫です。
またのんびりと書いていきます。




