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70 極悪非道エルフと真紅の悪魔 1

「おじーさんってトルテナコルトのことだよな?」


額を押さえながら、ルナリアはうんざりしたように聞く。


「そうだけど?」


何でもないように答えるカイン。

彼が言い終わるや否や、ルナリアはナイの襟を掴んで、床に投げ倒した。


「イイ加減、人ニ当タリ散ラスノハ、ヤメロ!」


体を起こし、ナイは抗議の声を上げる。


「当たりたくもなるだろ?これで残ってる神は二人だけだ。しかも今のところ再起不能だ」


心底困っているのか、ルナリアは頭を抱えて机に突っ伏した。


「そんなにこまるの?」


「当たり前だ!……ってカインは知らないか……」


マシュリから紅茶を受け取ると、ルナリアはそれを一口飲んで一息入れる。


「いいか?カイン。さっき話した通り神は元々七柱いた。奴等の仕事はこの世界の保護、つまり外世界からの攻撃を防ぐことだ」


「がいせかいってなーに?」


「こことは違う世界だが……まぁ別の国みたいなもんだ」


そこまで言うとルナリアは紅茶を飲み干し、頬杖をついた。


「さっき話を聞いてたなら解ると思うが、お前が食べた林檎は原初の神―――つまりカランノムルの魔力を凝縮したものだ」


「だからおいしくなかったんだね!」


「あの林檎味したか?ってそんなことはどうでもいいんだよ、問題は誰が神界に籠って外世界の屑共と殺り合うかだ」


「アテハ有ルダロウ?」


そう言って椅子に座り直しながら、ナイはルナリアに笑いかける。


「……まぁな、死んでも任せたくは無いが」


カインを見たまま目線を動かさずにそう言うと、ルナリアは苦々しい顔をした。


「ナラ、他ニ選択肢ハ有ルノカ?」


そう言いながらナイは首を傾げ、珍しく劣勢なルナリアを見て目を細める。

そんな彼を恨めしそうに見やると、ルナリアは深々と溜め息を吐き、血を吐くように口を開いた。


「お前の意見を採用するのは癪だがそうしよう。ナイ、真紅の悪魔(レッド・フード)を呼んでこい」


「分カッタ、待ッテロ」


意気揚々と異扉ゲートを開き、魔界へと向かうナイを睨み付けると、ルナリアはピザを頬張る。


「ねーねー、おねーさん。れっどふーどってなに?」


水を飲み干して退屈そうに欠伸をすると、カインはそう尋ねた。

対してルナリアはピザを飲み込むと、カインに淡々と語り始める。


「私の魔力から作った悪魔だ。負け知らずの強さなんだが、堪え性がなくてな。基本的に魔界で拷問の仕事をさせてる」


「へー、おもしろそうなひとだね!」


「お前の事を知ったらあいつも同じことを言うだろうよ」


どこか遠い目でそう話すと、ルナリアは徐に立ち上がり、拳を握り締めた。

何をするのかと首を捻るカインに背を向け、握り締めた拳を構えると、ルナリアは邪悪な笑みを浮かべる。


それから一分もしない内に異扉ゲートは再び現れた。

せっせと配膳を進めるマシュリとホルトを横目に、ルナリアは中から人が出てくるのを今か今かと待ち続ける。



やがてその時はやって来た。

死体をズルズルと引きずりながら現れたのは、足先まで届くほど長い赤髪とルビーの様に赤い目を持つ少女だ。


「お嬢様久しぶりー!肝臓にする?心臓にする?それとも、あ・た・ま?」


死体を掲げて少女はニコリと笑った。

死体さえなければ全世界を虜にするであろう笑顔に深々と溜め息を吐くと、ルナリアは握った拳を少女の顔面に叩き付ける。


「イビュベッ!?!?」


奇妙な悲鳴を上げ、少女は壁へと吹っ飛んでいく。

その数秒後、ドゴォンッという低い騒音と同時に彼女は動きを止めた。


そんな少女の近くに歩み寄ると、ルナリアは彼女の胸ぐらを掴んで体を無理矢理引き起こす。


「仕事だ、スタリア。今すぐ神界に職場を移せ、ついでに殴り込みに来た馬鹿がいたら殺せ」


「ふへー、分かった。所でお嬢様、その子誰?血の臭いが凄くするんだけど?」


ルナリアの手を振り払って自由になると、スタリアは目を爛々と光らせてカインに近付こうとした。

刹那、ルナリアの踵落としがスタリアの背中にヒットする。


「いったーい!お嬢様何すんの!」


背中を押さえながら抗議の視線を送るスタリア。

そんな彼女の顔面を蹴り飛ばして床に倒すと、ルナリアはスタリアの頭を踏みつけ、冷たい目で見下ろす。


「黙れ、血みどろサイコ女。お前がその目になったら次にやることは解体だろ?人の弟子に何しようとしてんだ?」


最早慈悲の欠片もない声色でそう語りかけると、ルナリアはグッと足に力を込めた。


「いーでしょ別に?私の物は減るわけじゃないし」


全く悪びれることなく、スタリアは笑顔でそう返す。


「よし、お前がその気なら私にも考えがある」


そう言うとルナリアは魔力を手のひらに集中させる。

やがて現れた魔法陣は見るからに凶悪な代物だった。

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