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68 極悪非道エルフと神話の大戦 5

黄金郷の門(ヨールレイシス)が消えたことによって、悪魔と精霊は再び勢いを取り戻していた。

逆に天使は散り散りになって逃げ惑っている。


そんな中を一人悠々と歩きながら、彼は知る限り最も有能な者達の名前を叫ぶ。


「サルスウォーグ、フェルディーア、リンオルティ、トルテナコルト、マライノール、オーナスカレア、来なさい」


彼の言葉が響いた瞬間、ドォォォォンッ!という轟音が戦場に轟いた。

それも六ヶ所同時に。


血飛沫を上げながら向かってくる六人に苦笑いを浮かべながら、彼は林檎を抱え直すのだった。



$$$



導師ザイン、求めに応じ馳せ参じた」


浅黒い肌に白髪というアンバランスな組み合わせの男は、手に持った巨槍を振り回して血を落とすと、その巨駆を折り曲げて恭しく頭を下げる。


「精霊一の猛者なだけありますね、サルスウォーグ。一番槍は貴方です」


仮面の奥からサルスウォーグを見上げ、彼は楽し気に目を細める。


と、その直後―――。


「ヤッホー、導師ザイン来て上げたよー!」

「王様、マライノールを御呼びでしょうか?」


―――天使を魔法でメタメタにしながら、二人の少女が現れた。


一人は翡翠のような綺麗な緑色の髪と空のような青い目を持ち、おっとりとした雰囲気を漂わせている樹精霊ドリアードの少女。


もう一人は足先まで届く長い黒髪と血のように赤い目、そして可愛らしい翼と尻尾を持つ悪魔の少女だ。


「リンオルティ、マライノール、お疲れ様です。他の三人もすぐに来ますよ」


両手で二人の頭を撫でながら、彼は遠くへと目を向ける。

その視線に勘づいたのか、一人の精霊が大魔法で地面ごと天使を吹き飛ばし、凄まじい勢いで彼の所へ飛んできた。


導師ザイン、来ましたわよ」


金色の髪と紫色の目を持つ精霊は不遜な笑みを浮かべ、両手に魔力を集中させる。


「よく来てくれました、フェルディーア。これで精霊三人は揃いましたね」


撫でる手を止めながら目を細めると、彼は悪魔二人へ早く来るように視線を送る。


その数秒後、突如現れた炎の龍によって戦場は焦土と化した。

残っていた天使が焼き尽くされると同時に、辺りには可愛らしい高笑いが響き渡る。


「ニハハハハー!実験は成功みたいだよ、トルテナコルト!あ、王様!見ていてくれたか?」


服に付いた煤を払い落としながら、紫髪赤目の少女は嬉しそうに駆け寄ってきた。


「ちゃんと見ていましたよ、オーナスカレア。この分だと研究は順調みたいですね」


肩位まであるオーナスカレアの髪を手ですきながら、彼はニコリと笑う。

その様子を見ていたもう一人の悪魔は、長い髭を手で触りながら、真剣な顔でふーむと唸っていた。


「定義を炎とするのではなく、風と炎にすることによって一瞬で戦場を駆け巡らせたのか……流石はカレアじゃな」


「考えるのは良い事ですが、考えすぎは毒ですよ。トルテナコルト、分かっていますか?」


そう言うと彼はトルテナコルトに苦笑した顔を向ける。


「心配は無用じゃ、この程度なら毒にも薬もなりわせん」


胸を張ってそう答えるトルテナコルト。

対して彼は目尻を吊り下げ、困ったように笑う。


「そう言って五百年飲まず食わずでいた挙げ句、使い魔レベルまで魔力を落としたのは誰でしたか?そしてそれを元に戻したのは誰だと思います?」


「ウグッ…………」


流石に反論できないのかトルテナコルトは言葉を詰まらせた。


「お爺さんでも導師ザインには敵わないようね。それで?私達を集めた理由をお聞かせ願います?」


その様子を楽しそうに眺めながら、フェルディーアは指をパチンッと鳴らして椅子を七脚作り出す。


「お話をする前に渡す物があります。座ってください」


六人が椅子に座ると、彼は林檎を一つ一つ丁寧に手渡しで配っていった。

金色に輝くそれを受け取った六人はそれぞれ反応を示す。


何も思わず、ただ受け取る者が一人。

興味深いと言いたげに、じっくりと観察する者が三人。

何も考えずに食した者が二人。


説明をしようとしていた彼は既に林檎を食べている二人に歩み寄ると、たしなめるように頭を突っついた。


「リンオルティ、マライノール。説明する前に食べないで下さい」


「え、ダメなの!?」

「ダメなのです?」


既に芯だけになった林檎をプラプラさせながら、二人は驚いたように彼を見詰める。


「本当なら駄目ですが、二人なら大丈夫でしょう。その林檎は創造神であった輪廻の魔神(カランノムル)の魔力の集合体のようなものです。全て食べれば神と同等な力を手に入れることになります」


その話を聞いた途端、リンオルティとマライノールは手に持っていた芯をムシャムシャと食べ尽くした。

そんな彼女達を他所に、サルスウォーグは目をギロリと動かすと、彼を真っ正面から見据える。


「成る程、この林檎の正体は分かった。だが、何故これを我等に渡したのかお聞かせ願いたい」


サルスウォーグの問いに彼は顔を綻ばせた。


「珍しく察しが悪いですね、サルスウォーグ。貴殿方に神として地上を見守って貰う為です」

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