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65 極悪非道エルフと神話の大戦 2

門が開いた途端、中から光の矢が飛び出して来た。

唐突の攻撃に悪魔と精霊は驚き、悲鳴を上げる。

しかしアルテミスとアポロの魔力は光の矢を吸収し、二人の後方にいた者達を守り抜いた。


だが前方にいた彼は例外だ。

数多の光の矢は彼の体に数え切れない程の風穴を空けていった。

蜂の巣となりながらも、彼は門の奥にいる兄とその尖兵である天使達を睨み付ける。


「その程度で私を殺せるとお思いですか?」


そう言うと彼は黒い魔力を展開し、自分の体を覆った。


「この姿になるのは第二の世界で反乱を起こして以来ですかね?…………雪辱は晴らさせてもらいます」


「「うぉぉぉぉおっ!!」」


黒い繭の様なを姿を前に悪魔達は歓喜の声を轟かせる。

しばらくの後、魔力の中から姿を現した彼は白銀の剣を携え、鹿の頭蓋骨で出来た仮面を被り、真っ黒なマントを羽織っていた。



$$$



開かれた門を境に、兄と弟は自らの軍を背に対峙する。


「愚弟よ、引導を渡してやろう」


「愚兄よ、断罪の時は訪れました」


睨み合いながら二人は剣を掲げ合図を出す。


「全軍突撃ッ!!」


天使の隊長はそう叫ぶと自ら率先して突撃した。

対してアルテミスとアポロはこう叫ぶ。


「「一人残らずブッ殺せっ!!」」


「「ウォォォォオ!!」」


二人の叫び声を起点に、悪魔と精霊は理性をかなぐり捨て、天使達へと突っ込んでいった。

かくして第一次神界戦争はその幕を切って落としたのである。



$$$



戦場は敵味方の区別なく虐殺する悪魔により混沌を極めていた。

同盟を組んだ筈の精霊をも巻き込んで天使を葬る姿は正に狂戦士だ。


しかし精霊達も負けてはいない、悪魔達の事など眼中に無いと言うように上級魔法を所構わず撃ち続けている。


さながら嵐のような敵軍に気圧されながらも、天使達は必死に前線を維持し続ける。


そんな中、アルテミスとアポロは彼の所へと向かっていた。

絶えず放たれる光の矢を防ぎ、天使達を葬りながら二人は前線で戦う彼の元へと一直線に駆け抜ける。


「アポロ、遅れないで下さい!」


剣を振るって三人の天使の首を撥ね飛ばしながら、アルテミスは後方にいるアポロを振り替えった。


「無茶言うな、魔法をそんなに連発できるか!」


そう言いつつアポロは周囲の天使を炎で焼き付くす。


「流石です、アポロ」


「お前こそ相変わらず恐ろしい剣技だな、アルテミス」


互いに誉め合いながら二人は敵を薙ぎ倒し、笑い合った。

この三年間で二人の間には深い信頼関係が出来ていたらしい。


遠方から二人の様子を見ていた彼は笑いながら手近にいた数人の天使を撫で切る。


「その程度でしたか。張り合いの無い者を相手にしたくありません、退いてください」


彼は優しく語りかけるが、天使達はそれが気に食わないらしい。


「ふざけるなっ!!」

「数で殺せ!」

「我らが王の為に奮戦せよ!」


口々に叫ぶと天使達は武器を構え、彼に向かって突進し始めた。


「野暮な方々ですね」


そんな天使達を前に彼は深々と溜め息を吐き、やがて目から黒い光を迸らせる。

途端に天使達は苦悶の表情を浮かべ、次々と倒れていった。


その様子を見た兄―――輪廻の魔神(カランノムル)は苦々しい顔で弟を見る。


「死の目か…………やってくれたな?」


「不敬で愚かな者達には丁度良い仕打ちでしょう?それよりも……覚悟はできましたか?」


スッと目の光を収めると、彼は兄を睨み付けた。

しかし当の兄は弟の事を鼻で笑い、取り合わない。


「弟よ、お前がこの私に勝ったことはある?今回も無様に負けて貰う」


「それはどうでしょう?」


普段の彼なら逆上するところだが、今回は違う。

皮肉めいた笑みを浮かべると、彼は剣先を兄に向けた。


「何だと……?」


呻くように呟いた次の瞬間、風を切る音と共に四本の矢が飛来し、輪廻の魔神(カランノムル)の四肢を貫く。


「グッ!?」


久々に感じた痛みに、輪廻の魔神(カランノムル)は思わず膝をついた。


「【空を吊り下げし天の鎖よ、彼の者を縛り地に伏せよ】」


その隙に乗じて今度は矢を中心に拘束魔法が展開される。

計四本の鎖に絡めとられ、輪廻の魔神(カランノムル)は地面に転がされた。


「遅かったですね。アルテミス、アポロ」


ニコニコと微笑みながら彼は追い付いてきた二人を振り替える。


「加勢致します導師ザイン!」

「無理すんな!」


弓を構えるアルテミスと、魔法陣を手中に展開しているアポロ。

比翼連理という言葉が似合う二人に、彼は心底満足していた。


だが感傷に満足している場合ではない。

彼は顔を引き締めると縛られている兄を指差す。


「無理はしていません。ほら気を抜いている暇はありませんよ?」


彼の指差した先には黄金の気を纏い、鎖をブチブチと引きちぎる男の姿があった。

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