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59 極悪非道エルフと砂漠の怪物 2

「じゃ、頼んだぞ?」


作戦を伝え終えたルナリアはニヤリと笑ってアルドルの頭をポンポンと叩く。


『この上なく不本意だが、やってやろう』


最早犬と大差ない扱いに顔をしかめながらそう言うと、アルドルは翼を広げ、空へと戻って行った。

そんな彼を笑顔で見送ると、ルナリアはおもむろに樹海へと手を伸ばす。


途端に樹海から一振りの剣が飛来し、ルナリアの手中に飛び込んだ。

そう、アリスの折檻をしているときに置いてきた軍神の剣である。

刀身に傷一つ付いていない事を確認して安堵の笑みを浮かべると、ルナリアは鞘からもう一振りの剣を抜き払い、両腕を体の横にダランと垂らした。


数分後―――。


アルドルが雷を落として合図をすると、ルナリアはニッと笑って剣を持つ手に力を籠めた。


「さて、始めるか」


カァンッ!


ルナリアが両手に持った剣を打ち合わせて合図を出すと、十数頭のドラゴン達が群れから離れ、砂のドラゴンを囲むようにホバリングし始める。


「グアァァァァラァァァァアッッ!!」


すると砂のドラゴンは咆哮を上げ、目障りだと言うように大量の魔法を放った。

だがドラゴン達が二度も攻撃を喰らうことなど無く、彼等は防壁で身を守り、次の合図に備える。

ここまではルナリアの予想通りだ。


「よし、これなら何とかなるな」


そう言うとルナリアはニヤリと笑って指をパチンッと鳴らした。

すると何処からか水が現れ、空中で球体を作りはじめる。

たった数分で、水は城と同等の大きさになり、ドラゴン達はルナリアの底知れない実力に肝を冷やした。

当のルナリアは顔色一つ変えずに水を見守るばかりだ。


「さて、これで十分だろ」


満足気に頷くと、ルナリアは砂のドラゴンを水で包み込む。

すると彼の意思とは関係無く、砂は水を吸い取り始め、体の中へと浸透させていった。

やがて全ての水が吸い込まれたのを確認すると、ルナリアは再び剣を打ち合わせ、カァンと甲高い金属音を響かせる。


「キュラァァァァア!!」

「グラァァァァア!!」


それを合図にホバリングしていたドラゴン達は一斉に急降下すると、砂のドラゴンに向けて氷のブレスを浴びせた。

途端に砂に吸収されていた水が凍りつき、砂のドラゴンは完全に動かなくなる。

それと同時に内部で動き回っていた魔法核《頭》もまた動きを止めた。


「後は任せろ、羽蜥蜴共」


そう言ってルナリアは素早く魔力を探り、魔法核の位置を割り出す。


「右足、か」


そう呟いて地面を蹴り、砂のドラゴンに急接近すると、ルナリアは勢いを保ったまま剣を振り抜いた。


ドンッ!


軽い地響きと共に砂のドラゴンの右足は地面に転がり落ちる。

続けざまに剣を振るい、魔法核を掘り出して地面に転がすと、ルナリアは左手に持った剣を仇の顔に突き刺した。


「【大樹に絡む宿り木の如く、彼の者に虚失の呪いあれ】!」


ルナリアの詠唱と同時に魔法核から魔力が吹き出し、空を貫くような巨大な光の柱が現れた。

空を旋回していたドラゴン達は蜘蛛の子を散らすように魔力から離れ、事の行く末をじっと見守る。


「フンッ、苦しまずに死にやがって。地獄では覚悟しておけよ?」


吐き捨てるようにそう言うとルナリアは空へと手招きしてアルドルを呼びつけた。


『エルフの女王よ、如何なる用件か……』


すぐに地面に降り立ってそう言うと、アルドルは翼を広げ頭を垂れる。


エルフの王を殺したからといって女王になるのは御免だと内心苛立ちながら、ルナリアは顔をしかめた。


「それ、最高位の相手にしかしない筈だろ?不愉快だから止めろ。あと次女王呼ばわりしたら泣かす」


ドスのきいた低い声でそう脅しつけるルナリア。

困ったアルドルは姿勢そのままに唸り声を上げる。


『し、しかし女王よ…………』


「煩い、黙れ」


短くそう言うと、ルナリアは足元を蹴り上げ、アルドルの鼻と目に砂を放り込む。


『ブガッ!?貴様!やって……ゴフッ!……くれ、ゴフッ!……たな!』


地味な痛みに涙を流しながら、アルドルは地面をのたうち回る。


「よーし、その口調を保っておけ。さて今回起きた騒動だが、人間側こっちの問題で、解決したのも人間側こっちってことで良いな?」


悶絶して思わず元の口調に戻るアルドル。

そんな彼を見て高笑いを上げると、ルナリアは意地悪く言った。


『構わん!……ゴフッ!…………あ、今ので砂が出ていった』


大事そうに鼻を撫でながら、アルドルはフゥと安堵の息を漏らす。


「なら、さっさと同族共々家に帰れ。はっきり言って邪魔だ羽蜥蜴」


先程とは打って変わって不機嫌そうな声色でそう言うと、ルナリアは蝿を追い払うように手をヒラつかせた。


『フンッ、言われずともそうさせて貰う。さらばだ、ルナリア』


そう言うとアルドルは翼を広げ、空に戻っていった。


「ルガァァァァア!!」


辺りに勝ち誇ったような咆哮が轟くと同時に、ドラゴン達は各々の住処へと戻っていく。

その様子を満足気に眺めながら、ルナリアは魔法陣を二つ展開して従者を呼び寄せるのだった。

【魔力抜きの魔法】

使うと魔力を吸い出せる。

普通は人魂みたいのが出てくるだけ。

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