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54 極悪非道エルフと決戦の狼煙

「クソッ、殺し甲斐が無い!」


そう叫びながら、ルナリアは手近に居た敵を剣で切り裂く。

しかし敵は血を流すこともなく、すぐに煙のように消えてしまった。


先程からずっとこの調子だ。

もう軽く百人は始末していると言うのに、辺りにはただ一つの死体もない。


「同感ダ、シカモ相手ハ無限ニ出テクルゾ?」


イラついているのか、ナイは斬り掛かってきたハイエルフの頭をステッキで叩き割ると、小さく舌打ちする。


剣を振るって三人程斬り伏せて時間を稼ぎ、ルナリアはナイの背後に迫る敵に矢を射掛けて援護すると、深々と溜め息を吐いた。


「そんなことは大したこと無い。問題は馬鹿弟子あいつだ」


そう言ってルナリアが指差した先に居たのは―――。


「いっけー!みなごろしだよ!」


「グゴゴゴ!」


―――災厄級のゴーレムの背に乗ってはしゃいでいるカインだった。


3mはあるであろう巨体に、巨大な鉈を持った四本の腕。

鎧を着込み暴れまわる姿にはルナリアも見覚えがあった。


最強の失敗作(ルドル・フォルノーゼ)…………あれは師の造ったゴーレムだ」


「ソルリアノ!?何テモノヲ呼ビ出シテクレテルンダ!」


「そう思うよな?私もそう思う」


そう言いながら敵を突き刺し、ルナリアは深々と溜め息を吐く。

そんな彼女の様子を見て、ナイは呆れたように肩をすくめ、首を傾げた。


「ナァ、ルナリア。アノ子ハ一体何者ダ?」


「真性の忌子で私の弟子だ。名はカイン。将来有望なんだが、やり過ぎるのが悪い癖だ」


「悪イ癖ニシテハ、ヤリ過ギダ。伏セロ、ルナリア!」


ナイがそう叫んだ直後、ゴーレムから光線が放たれ、ルナリアとナイの周囲に居たハイエルフ達が焼き払われた。

一歩間違えば自分達も焼かれていた事実に身震いする二人を他所に、カインは上機嫌に笑い声を上げる。


「ほらほら、まだおわりじゃないよー!」


「グゴッ!」


カインの合図と同時にゴーレムは四本の腕を振るい、押し寄せるハイエルフ達を薙ぎ払っていった。


「あれを制御しきれるのか…………!」


そう言いながらルナリアは体を起こし、さながら魔王のような立ち振舞いをする弟子を見つめ、嬉しそうに微笑む。


「みてみて、すごいでしょ!」


嬉しそうに手を振ってくるカインに声を掛けようとしたその時―――。


「あっ…………!」


―――何処からか飛んできた矢がカインの腹部を貫いた。



$$$



「カインッ!!」


瞬時に敵を切り捨ててカインの下まで走ると、ルナリアは地上へと転落するカインを受け止める。


「あはは、やられちゃった…………」


「黙ってろっ!」


カインを地面に寝かせ、弓を構えて矢をつがえると、ルナリアは赤く染まったドームから全ての魔力をかき集め、矢に籠めた。


「【禁弓忌技 仇桜あだざくら】!!」


簡易詠唱と共に放たれた矢は、カインを射抜いたハイエルフの心臓を一瞬で貫く。

だがその程度で禁弓による虐殺は終わらない。

心臓を貫いた後も矢は勢いを保ち続け、空中で方向転換したと思うと、次の獲物へと一直線に突進していく。


そうしてエルフ三人を葬った所で、今度は内に秘めた魔力を使って矢は自身の分身を大量に作り出し、数多の仲間を引き連れ次の獲物を求めて辺りを飛び回った。


付近の敵が一掃される中、ルナリアはカインの体を抱き起こし、頬を叩く。


「おねーさん……やさしくしてよ…………」


「喋るな馬鹿弟子」


弱々しく笑うカインの腹から容赦なく矢を引き抜くと、ルナリアは自らの魔力を掌に集中させた。


「【医神帰来レピオス・オーライル】」


途端に赤い魔力がカインの体を包み、彼の体を再生する。

魔力が霧散すると、ルナリアはカインの服を捲って傷が残っていないか確認し、深々と溜め息を吐いた。


「ったく、油断しすぎだ馬鹿弟子……」


「ご、ごめんなさい」


「説教は後だ。おい、ナイ!ボーッとしてないでこっちに来い!」


顔を真っ青にして謝る弟子の頭を優しく撫でると、ルナリアはナイに手招きする。


「ナンダ?」


ステッキを黒い煙に変え、ナイは首を傾げた。


「カインを連れて地下街モルガルに行け。後は私一人でやる」


「おねーさん!?」


ルナリアに詰め寄ろうとするカイン。


「フム、分カッタ。無理シ過ギルナヨ?」


それを見越していたのか、ナイはカインの襟を掴んで引き戻すと、異扉ゲートを開き、その中にカインを放り込んだ。


その様子を見てルナリアは苦笑いを浮かべ、ナイの肩を叩く。


「善処する。大変だろうがカインの御守りを頼んだぞ?」


「了解ダ」


笑って頷くと、ナイは手を振りながら異扉ゲートに入って行った。

やがて異扉ゲートが消えるのを確認すると、ルナリアは街の中心にある城を睨み付ける。


「さーて、三回目の弔い合戦だ。覚悟しろよ?忌子狩りの(リュクセリ)王」


弓を肩にかけ直してナイフを構えると、ルナリアはそう呟いて魔力を展開した。

彼女の静かな怒りに答えるようにして、カインの残していったゴーレムは叫び声を上げる。


計らずも師のゴーレムとの共闘となった事に、ルナリアは因縁を感じるのだった。

最強の失敗作(ルドル・フォルノーゼ)

かつてルナリアの師が家政婦用として造ったゴーレム。

召還魔法陣をルナリアが勝手に弄った為、戦闘力が飛躍的に上昇した。

因みに家事をやらせると、どじっ子属性を前面に押し出してくる。

野菜を切ろうとすればうっかり調理台を切り裂く。


【禁弓忌技 仇桜あだざくら

禁弓全てを組み合わせた奥義。

いままで使われた回数はたったの三回。

しかし使われる度に伝承に残る程の被害を出していた。

黒い風、悪魔の魚群等、地方によって呼ばれ方が変わる。

すぐに勝負が決まってしまう為、ルナリア曰く「味気ない技」らしい。




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