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51 極悪非道エルフの食休み 1

ポキンッと地面に落ちていた枝を誰かが踏み折った音によって、ルナリアは一気に現実に引き戻された。


「ラグザール、弓を寄越せ」


ラグザールに鋭く命令を飛ばすと、ルナリアは恋人の如く首にぶら下がっている弟子を引き剥がしてスッと席を立つ。


「少々お時間を頂きますが?」


「構わん、早く持ってこい」


「畏まりました」


そう言ってラグザールは恭しく一礼し、指を鳴らして魔界へと転移する。

その直後、三人を狙って四方から大量の矢が飛来した。


「お嬢様、危ない!」


アリスは咄嗟にルナリアとカインを伏せさせ、翼を広げて二人を覆うと、全ての矢を自身の翼で受け止める。


「くぅ…………!」


翼から伝わる苦痛に、思わずアリスは顔を歪ませた。

しかし、そうしている間にも矢はドスッドスッと音を立てて彼女の翼を貫いていく。


やがて矢の雨が落ち着きを見せると、アリスはユラリと立ち上がって翼を羽ばたかせ、突き刺さった矢を全て吹き飛ばした。

立ち上がって申し訳程度に剣を構えると、ルナリアは穴だらけになったアリスの翼を見て苦々しい顔をする。


「大丈夫か?アリス」


「うん……なんとかね」


笑顔でそう答えるアリス。

心配させまいと思って笑っているのだろうが、逆に心配になる。


「無理するな、最悪私が始末できる」


ヨロヨロしているアリスを椅子に座らせ、周囲の気配を探ると、ルナリアは忌々しいと言いたげに歯噛みした。


「チッ、枝を飛び回ってるのか気配が安定しない……!」


いくら悪態を吐いても現状は変わらない。

嫌々ながらもルナリアは現状にあった戦術を組み立てていく。

やがて戦術を思い付いたルナリアは邪悪な笑みを浮かべるのだった。



$$$



「二人とも今すぐ目を閉じろ」


「「なんで?」」


「いいから閉じろ。目が潰れるぞ?」


そこまで言うとルナリアはニィッと笑って魔力を集中させる。

慌てて目を閉じる二人を横目に、ルナリアは目を閉じて集めた魔力を頭上に掲げた。


「【光よ、暗き道の道標となり、我が行く先に輝きをもたらせ】!」


刹那、太陽と見紛うような光が辺りを照らし上げる。


「ギャッ!」

「グワァ!!」

「フグァ…………!!」


ドサッという音と共に樹上から落ちてきた者達の位置を正確に把握すると、ルナリアは再び魔力を集中させた。


「目が、目がぁ……!」

「見えない、見えない…………!」

「どうなってる!?何が起きた!?」


混乱する三人を楽しそうに眺めながら、ルナリアは次の魔法を唱える。


「【縛鎖展開オルドラ・エリュ】」


詠唱と共にルナリアの右手から赤く光る三本の鎖が放たれ、三人に絡み付いた。

そして悲鳴を上げる間もなく三人は骨と化し、戦闘は終わりを告げる。


緊張を解いてホッと胸を撫で下ろすと、ルナリアは二人の方を振り返った。


「無事か?二人と―――」


「【医神帰来レピオス・オーライル】!」


振り返ったルナリアの目に映ったのは、魔力切れで戦力外だと思っていたカインがアリスに対して最上級の回復魔法を使う姿だった。


目を剥いてツカツカとカインに歩み寄り、ルナリアはペシッと彼の頭を叩く。


「いたいよ!おねーさん!」


苦情を上げながらカインは頭を押さえてルナリアを見上げる。

だがルナリアは烈火の如く目を光らせて説教を始めた。


「我慢しろっ!馬鹿弟子!お前が魔法が使えないと思って必死に戦ってたんだぞ!?」


「おねーさん、かくにんしなかったよね?」


カインからの鋭い指摘にルナリアは言葉を詰まらせる。

やがて反論する気が失せたと言わんばかりに溜め息を吐くと、ルナリアはその場に座り込んだ。


「クソッ、真面目に考えて損した」


「さんこーにはなったよ!」


「そうかよ」


至って元気な弟子の頭を撫でながら、ルナリアは改めて溜め息を吐く。


これからの予定を考えようとルナリアが頭を切り替えた時だった。

カインの背後に魔法陣が現れ、時空が歪められる。


「下がれっ!!」


中から漏れるただならぬ殺気に危機感を覚え、ルナリアは思わずそう叫び、素早く立ち上がって剣を構えた。

彼女の緊迫した面持ちにアリスは事の重大さを悟り、翼を広げて戦闘態勢に入る。

因みにカインは欠伸をして呑気に昼寝の場所を探している。


「さて、一体何が来るんだ…………?」


ルナリアの頬を冷や汗がツーッと流れていく。


やがて張り詰めた雰囲気の中、魔法陣から現れたのは―――。


「嘘、だろ…………?」


―――弓と矢筒を持ったラグザールだった。

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