表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/74

47 極悪非道エルフの国滅ぼし ~セレナディア皇国編~ 9

たにどおり様からレビューを頂きました!

本当にありがとうございます。

世の中には越えてはならない一線というものが存在する。

平民ならば、盗みや人殺し、それに王族や貴族への反乱など。

貴族ならば王族への反乱のみ。

そして王族にとって唯一の禁忌は、神への冒涜だ。


エルフの王、リンドールは目の前に神がいるとは露知らず、散々無礼な事を繰り返した。

いくら心の広い神と言えど我慢の限界、故にこれからリンドールに降り掛かる災厄は天罰と言えるだろう。


怒り狂った神(ルナリア)は目を真っ赤に光らせ、地面に剣を突き立てると目を閉じて詠唱を始めた。


「【あまねく修羅よ、こうべを垂れよ。第二神位サルスウォーグ、解封アブリル】」


途端にルナリアの身体中に真っ赤な紋様が浮かび上がる。

だが紋様は、すぐにガギャンッという鎖が引き千切られたような音をたてて粉々に砕けた。


「フッ、どうした?失敗したか?」


小馬鹿にするようにリンドールは鼻で笑う。

対してルナリアは表情を崩す事無く、彼を見据えた。


「黙れ、クズ。【神界の刻み針よ、眠れ。汝が役は我が背に預けよ】」


間髪入れずにルナリアが二つ目の詠唱を終えると、今度はルナリアとリンドールを除いた全ての者の動きがピタリと止まる。


「なっ!?禁術だと……!」


ルナリアが取った予想外の行動にリンドールが狼狽した瞬間、リンドールの視線がルナリアから外れた。


「どこを見てるんだ?」


その隙をルナリアが逃すわけもなく、彼女の剣はしっかりとリンドールの右腕を捉える。

結果として、リンドールの右腕は呆気なく胴を離れ、宙を舞った。


後は此方の独壇場だ、とルナリアが安堵した次の瞬間―――。


「油断しタな!契約者ァァァァア!!」


―――リンドールは右手の痛みを物ともせず、左手で宙を舞っている剣を掴むと、そのままルナリアに斬り掛かった。


「悪くない。だが、甘いな」


しかしその程度の奇襲に慌てる程、ルナリアは経験が浅くはない。

上体を反らしてリンドールの剣を避けると、ルナリアは彼の左手を切り落とす。


「だマレェェェェエ!!」


だが両手を失ってなおリンドールは諦めず、ルナリアを殺そうと蹴りを放った。

最早その目に理性は一片も残されておらず、リンドールは完全に神の傀儡となってしまっている。


「…………馬鹿な男だ」


ルナリアは静かにそう呟くと軽々と蹴りを避け、そのままリンドールの足を切り落とす。

片足を失った状態でバランスを保っていられる訳もなく、彼は地面に倒れ伏した。


「悪魔の娘ゴときに、負けテたまルカ……!」


「少し黙れ」


不機嫌そうに呟くとルナリアは唯一残った左足を切り落とし、胸を踏みつけてリンドールの動きを止める。


「まだダ、マだ負けテはいナイ……!」


しかしリンドールは痛がる様子を一切見せない。

それどころか彼は闘志を剥き出しにして、手足があったであろう部分の筋肉をウネウネと動かしている。


「…………救われない奴だ」


どこか悲しげな目でリンドールを見下ろし、ルナリアは彼の胸に手をかざすと、光のベールと紋様から魔力を吸い上げ始めた。

吸い上げれた魔力は空中で集まり、糸玉のように球体を形成していく。


西瓜すいかくらいの大きさになった魔力の糸玉を眺めながら、ルナリアは己の見解の甘さに歯噛みした。


「…………この規模だと身体強化の魔法じゃないな。一体何なんだ……?」


残念ながら答えを与えてくれる者はこの場にはいない。

寂しさを噛み締めながらも、ルナリアは黙々と魔力の吸い上げを続ける。



三十秒程魔力を吸い上げ続けると、リンドールを覆っていた紋様が消え去り、光のベールは霧散した。

途端にリンドールの目は見開かれ、口をパクパクさせて何かを訴えようとする。

だが次の瞬間―――。


「…………ぇ、ぁああああ!!」


―――今まで魔法によって塞き止められていた痛覚が一気に神経を駆け上がり、リンドールの脳を引っ掻き回した。


「痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイィィィィィィイ!!」


精神を破壊するほどの痛みに抵抗する手段は何一つ残されておらず、リンドールは声を枯らして痛いと叫び続ける。


「ハッハッハ!傀儡の禁術を使うなんて、リンオルティも中々良い趣味をしてるな」


そんなリンドールの様子を楽しそうに見ながら、ルナリアは少しだけリンオルティに感謝していた。

中々楽しい余興を用意したな、と。



しかしいつまでも余興を楽しんでいる訳にもいかない。

時を止めているから良いものの、いまだに馬鹿弟子カインは危険に晒されている。

ルナリアは腰に下げた剣を鞘から引き抜くと、逆手に構えてリンドールの心臓に狙いを定めた。


「契約違反の咎により、貴様を冥府へ送還する」


文言を言い終えると、ルナリアはリンドールの心臓に剣を突き刺す。

リンドールに残っていた魔力を剣が全て吸収したのを確認し、ルナリアは剣を引き抜いて鞘に戻した。


「さて、馬鹿弟子を助けに行くか」


ルナリアは楽しげにそう言うと魔法を解除して、壁へと歩いていく。

虫達がリンドールの死体に群がるのを横目で見ながら、ルナリアは空いた左手を振り上げ、渾身の力を籠めて降り下ろした。


ドゴォォォォン!!


轟音と共に壁に大穴が出来ると、ルナリアは満足そうに頷く。


「よし、行くか!」


ルナリアは壊れない程度に力を籠めて床を蹴ると、カインの所へ一直線に飛んでいく。


第二の標的がこの先に居るなど、彼女は思いもしなかった。

【神位解放】

神は地上に降臨する際、基本的に力を封印している。

その封印を解除するための魔法。

本来ならば自身以外の神にしか解除できないようになっている。


【時止めの禁術】

時空神が管理する『時の刻み針』に干渉し、一時的に時間を止める禁術。

人間が使用することは出来ない。


【傀儡の禁術】

対象に命令を欲として植え付け、一時的に痛覚を遮断する複合魔法。

「食べ続けろ」という命令を植え付ければ、対象は胃が破裂しようとも食事を止めなくなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ