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45 極悪非道エルフの国滅ぼし ~セレナディア皇国編~ 7

それはまるで嵐のようだった。

二本の剣を器用に振るい、ルナリアは襲い掛かってくるハイエルフ達を切り裂いていく。

敵が剣を振り上げれば胴を、鋭い突きを繰り出せば首筋を正確に捉えるルナリアの剣。

動きから一切の無駄を削ぎ落とし、命を刈り取る姿は紛う事なき殺人鬼だ。


ルナリアが十二人目を切り伏せたところで、ハイエルフ達は円を描くように陣を組み、彼女の様子をうかがう。


「クソッ、流石に強い……!」


「一旦退くしかないか?」


「いや無理だ、後ろを見てみろ」


仲間に促されるままエルフは背後を振り返る。

そして彼の視界に映ったのは、今にも襲ってきそうな虫達の姿だった。


「嘘だろ……?」


何故襲ってこないのかは分からない。

だが逃げ出そうとすれば、虫達が嬉々として喰らい付いてくるのはハイエルフにも簡単に予想できた。


「くっ……!これでは挟撃されている様なものではないか!」


悔しそうに歯噛みするエルフ一同。

そんな彼等の様子を見て、ルナリアは嗜虐的な笑みを浮かべる。


「脳筋共、随分と杜撰ずさんな戦略だな?」


「貴様!我等を侮辱したな!」


怒りに任せて一人のエルフが突きを放つ。


「遅い!」


そう叫びながら突きを軽々と避け、ルナリアは彼の背中を蹴り飛ばし、仲間を剣で突き刺すように仕向けた。


「ぐっ……あ……!」


ルナリアの狙い通り彼の剣は仲間の腹を貫き、意図も簡単に命を奪い去る。


「と、友よ!済まない…………!」


慌てて仲間を抱き抱えるハイエルフ。

そんな友情に溢れる行動を嘲笑うかのように、ルナリアは彼の背中に剣を突き刺して心臓を貫き、引き抜き様に別のエルフの首筋を切り裂いた。


「なんと、卑劣な……!」


迷いの感じられない殺戮に恐れおののくエルフを一瞥いちべつすると、ルナリアはフンッと鼻を鳴らす。


「詰まらん芝居なら他所でやれ」


「「貴様ァァァァア!!」」


ルナリアの挑発に触発され、今度は三人のエルフが剣を振り上げてルナリアに突進してくる。


「間抜け、胴がガラ空きだ」


呆れたと言いたげに溜め息を吐くと、ルナリアは両手の剣を投げてエルフ二人の心臓を貫いた。

だがルナリアが丸腰になったのを、残った一人が見逃す訳もなく、彼は渾身の力を籠めて剣を降り下ろす。


「これで終わりだっ!!」


「おい、隙しかないぞ?」


ルナリアは慌てること無く、生き残ったエルフの真横にスルリと入り込み、肩を殴って彼の骨を折った。


「グアッ……!」


思わず呻き声を上げるエルフ。

だが、その程度でルナリアの攻撃は終わらない。

エルフの剣を持つ力が弱まった瞬間を狙って、ルナリアは彼から剣を奪い取り、そのまま首を落とした。


「嘘、だろ……?」


「攻撃を当てることすら叶わないのか……?」


呆然とするエルフ達を他所に、ルナリアは悠々と二本ある自分の剣を回収する。


「さて、もうそろそろ皆殺しにしても良いか?正直な話、お前らの相手をするのに飽きてきたんでな」


そう言うとルナリアは魔力を身に纏い、炎のように揺らめかせる。

その姿は伝承に残る悪魔の王の姿と瓜二つだった。



$$$



「ふぅむ……」


ハイエルフ達が敗北の気配に身を震わせる中、リンドールはまだ諦めていなかった。

残る手駒ハイエルフはたった十三人。

たとえ彼等全てを犠牲にしても契約者ルナリアに傷を負わせることすら出来ないだろう。


だが契約者と言えども、所詮はエルフ。

つまり隙さえあればどうとでもなる……!


「契約者よ、そなたは私を裁きに来たのだろう?」


そう言いながらリンドールはルナリアへと一歩近付く。


「あぁ、そうだ」


当たり前だと言いたげに答えると、ルナリアは魔力を収め、リンドールの方に向き直った。

その様子を見てリンドールは内心ほくそ笑む。


この女は律儀なのだ。

特に決闘に対しては有り得ないほど律儀だ。

敵が魔法を使うまで決して魔法を使わない、敵が左手を怪我をしていれば左手を使わないなど基本的に平等であろうとする。

そこに付け入れば幾らでも隙はできる筈だ。


「ならば皆殺しにせずとも、私と決闘すれば良いだろう?」


大袈裟なジェスチャーを交えながらリンドールはルナリアに語りかける。

対するルナリアは片方の剣を鞘に納め、邪悪な笑みを浮かべた。


「…………ほぉ、お前に私の相手が務まるのか?」


掛かった……!

こうなればこっちの物だ、とリンドールは心の中でガッツポーズをする。

後は決闘の最中にハイエルフが不意討ちをすれば完璧だ。


「ふん、嘗めて貰っては困る。これでもエルフの王だ!」


そう言うとリンドールは勇敢に見えるように堂々と剣を構え、ルナリアの背後にいるハイエルフに目配せする。

一方のハイエルフは軽く首を縦に振って答えると剣の柄に手を掛けた。


「…………馬鹿な奴め」


彼等に聞こえない程、小さな声でルナリアはそう呟く。

ルナリアが全てを見透かした上で勝負を受けたことを、リンドールは知るよしも無かった。

前回の分の用語解説


【リンオルティ】

エルフが信仰する豊穣を司る女神。

フェルディーアと仲が良い。

その為ルナリアとは必然的に仲が悪い。

ロリ巨乳なのでルナリアに会う度に胸を削ぎ落とされそうになる。

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